血の渇望
筆者です。今日はこの子が5歳になる誕生日。だから私は贈り物をすることにしました。それは可能性です。
医者の家では、今日は特別に華やかな飾り付けがされていた。
遠方から取り寄せられた美しい花は、思わず顔をほころばせるような甘い香りをたたえて、身内だけのささやかな祝賀会のテーブルを彩っている。天井に届くほど大きいな若木を並べ、使っていない椅子には沢山のプレゼントが並べられていた。
その部屋の中心にちょこんと腰掛けるのが、今日の主役だ。
月明かりが灯ると、彼のブロンドの髪がより一層の輝きを見せて宝石のように光輝いた。
コバルトブルーの光彩を持った目が笑顔でわずかに細められ、歯並びの良い歯がちらりと覗く。
その周囲を固める3人のお気に入りメイド達は、一様に首元を白い包帯で覆い、見るでもなく彼の横顔を追っている。
彼女らが柔らかな動作で、しかし、素早く食器を並べる姿は、王家に仕えるメイドに見間違うほどだった。
しかしその動作が、一瞬止まる。
机の下から伸びた手が、一人のメイドの手を握ったのだ。
彼は机の下へとメイドの手を誘って、給仕の終わった彼女が席を離れることを拒んだ。
「特別な飲み物が欲しいんです」
「はい、坊ちゃん」
メイド達は笑って頷いた、もう慣れっこだった。手を握られた以外のメイドが部屋を離れる。
自分の後ろで音もなく扉が閉またことを確認して、彼女は自分の首をあらわにした。
白い乙女の首には、まるで蛇に噛まれた様な噛み跡がいくつも浮かんでいた。
彼女はその痛々しい噛み跡に指を置く。
「ん……」
糸を引くように零れ落ちた雫を、蒸留水に満たされたグラスに垂らす。
「ああ、私の血を、どうか飲んでください……」
熱っぽい表情で懇願する女は、ゆっくりと首をもたげグラスを運ぶ。
祝賀の席ではご両親が、嬉しそうに彼の失敗や、恥ずかしい思い出を話していた。そちらには見えぬように。
メイドはそっと自分のグラスを彼の左手の近くに置いた。
利き手ではなく左手のそばに置いたのは、右に出る者はいないという尊敬を示すため、そしてそれ以上に、最も心臓に近い左手薬指に血分の分身を捧げるため。
少年は嬉しそうにグラスを持ち上げると
「ありがとう」
と一言いった。そして天使のような笑顔を見せる。
音もなく持ち上げられたグラスに小さな唇が触れる。メイドは、赤く汚れた半透明の液体が、白いシルクのような喉で嚥下されるのを愛おしく見続けた。
1.化け物
2.吸血性
3.アルビノ
4.オッドアイ
5.女の子
6.男の子
結果は2の出目でした。この子は美しいながらも、吸血性を持って生れて来た、人ではない夜の生き物です。これは呪いかもしれません。もしくは祝福になるかもしれません。