誕生
本性説は複数のシナリオ、選択肢を用意しサイコロが運命を決めるルールです。
凍てつくような寒い夜だった。
白雪のように白い一室で、一人の妊婦が分娩台の上で苦しそうな声を漏らしている。
額に浮かんだ大粒の汗は、夫であるこの町一番の医者によって拭き取らた。
彼は、冷たくなるほど力んだ妻の手を固く握り返して、気をしっかり持てと声をかける。
ふと、黄金に輝く燭台に乗せられた三本の蝋燭が揺らいだ。窓から吹き込んだ夜風が蝋火を煽り、僅かに細い煙を残してふっ、と消える。
真っ暗な暗闇の中で産み落とされた子は、産声を上げなかった。
すぐに夫は赤子の背中を叩き、肺に入った水を吐き出させた。
「あ、あなた……赤ん坊は」
未だ、産声は聞こえない。
赤ん坊の足を持ち、逆さまの状態にし、お尻を叩き、やっとその赤ん坊は産声を発した。
「ああ、良かった……やっと子を産めました。ありがとうございます、神様」
召使が産湯を持って現れたが、子を産み落としたばかりの母親は、赤ん坊を離そうとはしなかった。自らの手でそっとお湯の中に入れる。
産気づいてから、4時間が経過していた。
「さあ、良く来てくれました。私が、貴方の母ですよ」
赤ん坊は、まだ目も開いていない。その小さな手を広げ、産湯の中でその小さな手足を伸ばした。
「あなた……こんなに可愛らしい」
「この子は君に良く似ているね」
「いえ、まさか。私はこんなに可愛らしくはないわ。きっと……きっとこの子には素敵な人生が待っているわ」
母親はおでこに汗で貼りついた前髪も気にせず、愛おしそうな視線を赤子に注いでいた。
1.孤児院
2.処刑人の家
3.農民の家
4.上流階級の家
5.村長の家
6.医者の家
結果は6の出目、赤ん坊は医者の家に生まれることになった。
公正を期すためにサイコロは自作した。一辺4cmの6面体で、材質は段ボール。筆者の思惑やその他の要素が介入しないように、重心が偏らないよう注意し作成を行った。サイコロは目隠しをした状態で60×60cm四方のできるだけ水平な執筆机の上で投げられた。
今後も同じサイコロ、執筆机で出目を見る事とし、観測を続ける。