出会い編 9話 皆の名前
はじめに声をかけてきた少年とツレの少女、彼らが別の土地へ
移ることを望む理由も同じだった、もしかしたら彼らも同じように
山火事で棲家と仲間を失ったのかもしれない。
「ところで、話はかわるのだけど、君たちのことを、何と呼べばいいだろう、
急に仲間が増えて、ややこしくてね」
それにたいしては、やはりそれぞれに個体名はないのだと
答えが返ってきた。
ボクは種族名を聞いてタウの名を決めたことを話した。
そして、彼らにも同じように呼び名を決めようと提案した。
まず、保存食の作業をしながら少年が答えた
「もうずいぶん前に聞かされたオレの種族名ですが、
たしか、ハスリウス・アダンソニーでした」
「じゃあ、ハスでどうだい?」
ボクはタウのときと同じに最初の2文字で呼んだ
「はい、それでいいです」
「あたしは・・・」
苦しそうに口を開いたのはハスのツレの少女だった
「自分の個体名を決めるなんて、おもしろいね、
あたしはプロマクス・ヤーソニック・・・マクスにする」
彼女は自分自身で呼び名をマクスに決めた。
しかしマクスは息苦しそうにうずくまってしまった、
口をきくだけでも辛いのだろう、ハスが慌ててそばにより肩を支えた。
「すこし見せて」
タウが近づき声をかけた
「脱皮は種族によっての差が激しいけど、それにしても辛そうね」
そういってマクスの首に手を触れた
するとすぐにマクスの体から痛みが抜けるのがわかった。
荒かった呼吸もおだやかになった。
「ありがとう、なにをしたんですか」
ハスは驚きを隠さなかった
「少しだけよ、完全に痛みを消してしまうと脱皮を阻害してしまうから」
「あなた、わたしと近い種族なのね」
タウのマクスに対する処置を見て少女はそう言った、そして
「あなたがいたのなら、わたしが出る幕じゃなかったかしら」
「そんなことはないわ、私の力では皆を傷つけずにキリギリスを倒すことは
できなかったでしょうから・・・私はタウ、彼がそう名付けてくれたわ」
「そう、わかったわ、わたしは・・・オペラクラリスよ、
メガロピギア・オペラクラリス」
エメラルドグリーンの髪の少女も、自分の名を決めた。
「最後に、ボクの名は トキト、ボクは人間だ、ボクの名は種族名に由来したものではないんだ、
旧世界の極東の国では時間を意味し、西の国では話し合いを意味するらしい、
父と母がつけてくれた名前なんだ、
さあ、これからは皆 一緒に旅する仲間だ!」
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