出会い編 8話 夜営の場所で
ボク達はキリギリスと戦ったこの場所で・・・と言っても戦ったのは
エメラルドグリーンの髪の少女なのだが・・・
この場所で夜営をすることにした。
これほどの大きさのキリギリスであるから、きっとこのあたりは、
これの縄張りだろうと、そうであれば近くにはもう、これほどの
肉食原始昆虫はいないだろうと予想したのだ。
そして、せっかくの食料であるから解体して有効利用することとなったのだ。
解体は少年がほぼすべてこなしてくれた。
さすが狩りになれた者らしく、各部位を切り離し内蔵まで無駄なく取り出し
火を起こして鍋に入れ、全員分の食事を作ってくれた。
食べきれない分の肉は燻製と塩漬けにして保存するのだという。
今はその準備をもくもくとこなしている。
よく働いてくれる。
ツレの少女へは内蔵の中でも特に栄養価の高い部分を生のまま食べさせていた。
それが、いちばん良いのだそうだ。
少女はそれを食べ、少し落ち着いた様子だった。
「ありがとう、君がいなかったら どうなっていたか、あらためてお礼を言うよ」
ボクはそのエメラルドグリーンの髪の少女に言った。
「いいわ、それより約束守ってくれる?」
「ああ、もちろんだよ、一緒に・・・と言ってもどこまで行くつもりなんだい?」
「決めてない、どこでもいい、生きられる場所を見つけてそこで生きるだけ」
ああ、そうか、この少女もこの外見ですぐに昆虫だとわかってしまい
警戒されてしまうのだろう。
「ボク達が集落を出発したときから、ずっと後ろをついて来ていたようだけど」
「ええそうよ、あなた達が旅の準備をしていたから、だからついて来たの
声をかけそびれていたら、あんなのが出てきちゃったけど」
あんなの・・・キリギリスのことか、
そうまでして、何故ボク達に声をかけたのだろう。
「あれほどの身を守るすべを持っているのに、何故わざわざボクらと一緒に?」
「わたし、足が遅いの」
「狩りが苦手なんですね」
少年が言ったことで、ボクも理解した。
だとしたら普段の生活はどうしているのだろう、仲間は?
「わたしは狩りをする種族じゃないの、本来は同じ森に長く住み
その森の恵みで生きるの・・・
私の森はここよりもっと南にあったわ、でも大きな山火事でなくなってしまったの」
山火事で棲家と仲間を失い、別の土地へ流れ暮らす昆虫も
少なくないという。
ただやはり、どこに行っても昆虫は警戒される、
それが流れ者ならなおさらだろう。
「森の中で採れる薬草と交換してなんとか必要な物をまかなってきたけど、
それでも、誰もわたしと好んで取引なんてしてくれないしね、
それに、このあたりの森は食べ物が少ないのよ」
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