出会い編 第5話 少年と少女
一億年の未来の地球
コールドスリープから目覚め僅かに生き延びた人類と
進化し人の姿になった昆虫類
やがて進化は他種族交配を可能とし、それは新たな種、
新蟲類しんちゅうるいとして世界に広がった
種族としての特徴を持ち続け他種族と交わらない純血種としての昆虫類と
新な種として生まれ増え続ける新蟲類
そして 目覚めては滅び、生きる道を探す人類の
未来の星での物語
その少年の話では、10日ほど前から少女の体調に変化が現れ
満足に歩くこともできなくなり、
そして、それが脱皮の兆候であると集落の者たちが気付いたことで
事態は悪化したという。
昆虫の中にはまだ原始昆虫以外の他種族を捕食する者もいる。
昆虫だと知られて新蟲達から警戒されてしまい、
食料の交換などに応じてもらえなくなったのだ。
当然少女を集落に残して狩りに行くこともできず、
同行しながらでは狙う獲物も限られた。
「ここの者は昆虫を嫌っているんです、こんな小さな集落ですから
それもしかたないのですが・・・だから、もっと別の、
大きな町に行けば、昆虫とも取引する新蟲達がいるって聞きました
そこでなら、オレ達も・・・」
少年は自分も昆虫なのだと言った。
普段の生活は小型のバッタなどを狩って食料とし、
余ったものは集落へ持ってきて必要なものと交換をする。
そうやって、この集落の近くの森の中で暮らしてきたのだというのだ。
「ツレを乗せてくれるなら、食料はオレが捕ってきます、
狩りの間、ツレを見ていてくれるなら、あなた達の分もオレが捕ってきます」
彼らの同行をボクは歓迎したが、タウは少し戸惑いをみせた。
彼らが近くにいると強い結界が張れないのだと・・・
そのことについては、今後の課題として良い方法を探そうと、
そういって、タウを説得した。
ボクは彼らが加わることで、見張りの目が増え、防衛力が上がると思ったのだ。
もちろん、荷車を押すなどの労働力としても期待があった。
少女を荷車の後ろ側に乗せて少年はその近くで荷車を押した。
ボクは前側で荷車を引き、タウはその横を歩いた。
タウの住む森には戻らず、そのまま出発することになったのだ。
必要なものが粗方そろったこともあるが、
彼らでは森の結界を越えられないのだと、だからこのまま出発しようと、
タウがそう言ったのだ。
出発は朝一番が理想なのだが、まだ日は高い。
ある程度の距離を進むことはできるだろう。
「後ろからずっとついてきてます」
少年はボクの横まで来て、後方へ注意を向けるように言った。
たしかに1体、ボク達の後方を歩く者がいた。
「集落を出発したときから、ずっとです」
そろそろ日が傾きかけている。
出発してからずっと一定の距離を保ったままついて来たらしい。
「小柄の・・・雌のようです、 たぶん昆虫です、 同じ集落で何度か見たことがあります」
この少年は目がいいようだ、
ボクでは確認できないこまかなことまで詳しく伝えてくれる。
「あんな髪の色、他では見たことがないです、たぶん希少種なんだと思います」
前を向いて歩きながら説明してくれた。
その少年の足が突然止まった、ボクにも止まるよう手で合図をしている。
「まずいです、あんなのがいるなんて」
街道横の森から突然、超大型のキリギリスが姿を現した。
そして、ゆっくり こちらに近づこうとしていた・・・
お読みいただきありがとうございました
もしよろしければ、ブックマーク 評価
よろしくお願い致します。