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未来の星での物語  作者: 凡人(ぼんど)
31/31

アリの女王編 31話      追加

2体の話の様子から具体的なことはまだ何も決まっていないとボクは判断した。


「実は、そのことでボクも考えてみたのだけれど、意見を言わせてもらってもいいだろうか?」


「ええ、かまわないわ」


そう言ってタウは北の森の者を見た


「もちろん、私もかまわないわよ」


そしてタウは


「言ってみて」


ボクを見て言った


これから言おうとしていることが、でれほど現実的かつ実現可能なのか、分からない、

しかし、真剣に考えて、ボクにはこれしか案がうかばなかったのだ、


「ボクは、国を作ってはどうだろうかと、思うんだ。

 遥か西で強大な国が生まれ、軍事力でその領土を拡大するなら、

 くい止める手段はそれに並ぶ強大な国の存在が必要だと思うんだ」


「力で力を抑え込むの?」


タウが聞いた


「いや、そうじゃない、経済大国を作るんだ、貿易をして経済面で相手を抑えるんだ、

 知識を武器にするんだ」


「たしかに、それができるなら素晴らしいとは思うけど、どうやって・・・」


タウの顔に失望の色が浮かんだ、無理もない、普通に考えれば当たり前だろう、

まさに荒唐無稽だ、


でも、


「ここからの話は、バーチェル達グンタイアリにとっても重大な事柄が含まれる、よく聞いてほしい」


バーチェルは慌てることもなく、頷いた。


「グンタイアリ達で国を作り、バーチェルが女王に就任する、法治国家として教育機関を

 充実させ、その思想を世界に広めてはどうだろうか」


皆、真剣に聞いてくれている、ボクは続けた、


「まず経済発展の基本として技術が必要だ、そこでタウ達の知識を借りて国の経済力を強化していく、そして教育を受けて育った者達を世界に送り出す、

 そうやって国としての力をつけて、西の大国と経済で渡り合うことができれば、

 世界のバランスがとれるんじゃないだろうか、

 ただし、そこから先、国家として強大になったとき、

 グンタイアリの種族としての道の選び方が問われることになる。

 バーチェル、考えてほしい・・・

 そしてタウ、君の知識が扱い方しだいで危険なことも理解しているつもりだ、

 その上で頼みたい、もしその時は力を貸してほしい・・・どうだろうか、」


「私は・・・バーチェルの答えを待つわ」


タウはバーチェルに一瞬視線を送り、バーチェルもそれを理解した。


「素晴らしい考えです、でもたしかにそれだけではグンタイアリによる単一種族支配になってしまうでしょう、 ですが、 グンタイアリが種の絶滅を選び新蟲化を進めるなら、いずれは単一種族国家であることを、自ら崩壊させることになるでしょう、

 この計画は最後、それをもって目的の達成となるのでしょう・・・」


そこまで話すとバーチェルは、いったん言葉を切り、そしてあらためて何かを決意するようにして

再び語りはじめた


「私はずっと考えていました、私達の滅びる意味を、

 私達種族の絶滅へ向かう道の果てに世界の希望があるなら、

 私達の滅びが無意味なものでないと思えるのなら、

 ・・・わ、私は・・・救われた思いがいたします・・・

 すぐに皆を集め、話をしましょう、それまで待っていただけますか、」


バーチェルは泣いていた、

その心に詰め込んだ途方もない物の行き先が見えて、あふれたのだろう、

そしてボクは心の中でバーチェルに詫びた、

バーチェルに辛い言葉を言わせてしまったことを、


そばで聞いていたメイド達は初め、バーチェルの口から出た種の滅びの言葉に驚きの表情を見せたが

すぐにその驚きはバーチェルの流す涙をみて、変わった。

自分達がこの少女に背負わせてしまっている事柄の重さに気付いてしまったからだ。


バーチェルはまず、この町の同胞を集め意見交換をした、そして後日各地区の代表者がそれぞれ意見をまとめ、この町に集まることとなった。

当初の予定では各地の視察をしてもっと時間をかけて意見を集めるはずだったが

事態が急を要したため、バーチェルは緊急招集をかけたのだ。


数日後、各地区から代表者が集まった、

遠い場所で直接来ることができない者達は、その意見を意思伝達の能力により

他の者に託した。


そして、グンタイアリの種族会議が開かれた。



現在 グンタイアリ達は、立憲君主制国家の建国宣言をするために

憲法の制定準備を進めていた。

政治統制は、議院内閣制とし、初代女王にはバーチェルが就任する予定だ、

まずは初代女王のもとで、暫定政府を作り国は動きだすだろう。


千里の道も一歩から、だ。



町をふらふら歩いていたマクスとオペラクラリスがその者に気が付いた、


「あれ?こないだの・・・さばえだ」


「あらほんと、何してんのかしら」


2体はすぐにそばに行き、声をかけた。


「よう、何してんだ?」


「あなた今日は、ご主人様と一緒じゃないの?」


突然声をかけられ、さばえは少し驚いたようすだ


「あ・・・ああ、買い物、マスターはそっち」


さばえは少し離れた場所の日陰を指した、そこに北の森の者はいた。


「あ、いたいた、おーーい、北のも・・・おっと、」


マクスは言いかけて止めた、

さすがにその名をここで口にすればパニックが起きてしまうだろう

近くまで歩いていき、あらためて話しかけた、


「さばえ連れて買い物かい?、タウに用があるなら宿にいるよ、」


「あら、あなた達、この間の・・・そうですかありがとう、買い物がすんだら行こうと

 思ってたのよ、ところでいろいろ話は進んでいる様子かしら?」


「ああ、グンタイアリの連中、毎日わーわー騒いでるよ」


「それじゃ意味が分からないでしょ、わたしも詳しい話は聞いてないけど、

 近く建国宣言をするみたいね」


「そう・・・あの小さな女王様が大きな決断をしたのね」


「マスター終わりました」


予定の買い物をすませた さばえが戻ってきた


「ごくろうさま、では今から我が同胞の元までまいりましょうか」



ボクらが滞在するこの宿でバーチェルは連日、種族の者達と話し合いをしていた。

技術協力のためタウも参加している、

そしてある程度の目処はついてきたようだ。


「少し休憩しましょう」


バーチェルの言葉で皆が緊張から一時解放された。


「はぁーー、さすがに疲れますなーー」

「いやーほんと、それにしても姫様の集中力には、感服します」

「まったくですな、我々の方が先にまいってしまいそうですな」


会議室の中で10体いる各地区代表の者は口々にそう言って、バーチェルを褒めそやす


「でも、この短い期間の内にここまで話を進められたのも、タウの技術協力があったからこそです

 我々だけでは、これだけの国家運営のシステムなどとても作ることはできなかったでしょう」


「おーーい、お客さん連れてきたぞーー」


玄関の扉が開き、マクスの声がした、

変わった取り合わせで、オペラクラリスと一緒に帰ってきた、


「あ、おかえり」


玄関ホールにいたボクが、まず出迎えることになった


「こんにちは、守護者の人、私の同胞に会いに来たのだけど、いるかしら?」


「はい、今は会議室で皆と話しています、呼んできますから座ってお待ちください」


ボクがそう言って奥へいこうとすると、


「お待ちください、あ、あの、私達が行ってまいります」


そばにいたメイド達が慌てて奥の会議室へ行き、北の森の者が訪ねてきたことを告げた

会議室の中で各地区代表の10体はパニックになったが、

バーチェルに一喝され、おさまった。

タウとバーチェルは会議室を出て、玄関ホールに向かった。


北の森の者とその守護者は案内され大広間に移動していた。


玄関ホールから大広間へ歩くタウとバーチェルの後ろを各地区代表の者達とメイド達が

ぞろぞろとついて行く。皆、腰がひけている。


「体の方は、もうすっかり良さそうね安心したわ」


歩いてきたタウを見て、微笑んで言った


「ええ、私は大丈夫です、あなたも問題なさそうですね」


タウは近くまで歩いていき、そして足を止めて言った。


北の森の者は、椅子から立ち上がって


「小さな女王様も、お元気そうで何より」


「はい、ようこそいらっしゃいました」


そしてバーチェルは自分の後ろにぞろぞろと付いてきた者達に目を向けた


「この者達は我が種族の者です、新しく国を作るにあたり、その中枢を担う者達です

 どうぞお見知りおきを」


バーチェルの北の森の者に対しての態度は、国賓に対する扱いに等しいものと言える

あえて皆の前でそれを示すことで、友好関係を築く狙いもあるのだろう。


「ひ、姫様、その者が、ほんとにあの・・・北の森のあく・・・」


「その呼び名は、北の森の主に失礼でしょう!、皆も今後、心するように」


その言葉に皆従った。


「ところで、私の知識の引き継ぎだけど、受け取りはどうするの?」


なんとも のんきな言い回しでタウに尋ねる


「んーー、どうしましょう、私も初めてで・・・」


「必要なとき、いつでも取りに来ていいわよ、なんだったら さばえに届けさせるから」


「それは助かります、ゆっくり引き継ぐための時間は当分とれそうにないから」


「まだ旅を続けるのね?」


「そのつもりです、人の国にも行く必要がありますから」


ボクはタウが人間の国へ行こうと思っていることを、このとき知った。


「そう、分かったわ、ではそれまで私が守っておくわね、でも必要な知識があるときは言ってね

 私の書庫に役立つ物があれば、さばえに届けさせるから」


「分かりました、ありがとう、そのときはお願いします」


時々は守護者のさばえを使いに出すことで、お互いに連絡を取り合えるようにすると、

北の森の主は、そう言って帰っていった。


「ねえマクス、そういえばハスが見えないようだけど」


オペラクラリスが周りを見渡して言った。


「ああ、あいつさ、バーチェルと別れるのが寂しくて、すねてんだよ」


建国にたずさわる者として、そして何より女王として、

今この国を離れることはできない。

ハスが旅を続けるなら一緒に行くことはできないのだ。

国の中枢、首都にあたる場所は、北の森そして西の大国との位置関係でこの町になるだろう。

当然、女王であるバーチェルもこの町に住むことになる。

それはバーチェルも分かっている。

自分の旅はここで終わりだと、

それでも、ハスのことが気にかかっていた、

そのハスが自分との別れを寂しがり、すねていると、

思いがけず皆の前で言われてバーチェルは顔を赤くした。



それから 1か月後

建国宣言とともに、この地に新たな国が誕生した。


国の名は「グラスランド」 初代女王はバーチェルだ。

就任式も盛大に執り行われた


生まれたばかりのこの国が、これからどう成長し、何処へ向かって行くのか、

すべてはこれからだ、

この国の憲法の条文の一つに

ーーー時の女王の権限によってのみ王制の廃止を認めるーーー

とのものがある、

いつかきっと、バーチェルに連なる者の手によって

それは成され、グンタイアリの歴史に終止符が打たれるだろう。


そのときこの国は君主制を捨て、共和国への道を歩み出すのかもしれない。


いずれにしろ、困難を極めるだろう未来への道の、その果てに、

幸あらんことを祈るばかりだ。







  




ここまでお読みいただきありがとうございます。


これにて、第一部 終了とさせていただきます。


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