出会い編 第3話 旅の準備
一億年の未来の地球
コールドスリープから目覚め僅かに生き延びた人類と
進化し人の姿になった昆虫類
やがて進化は他種族交配を可能とし、それは新たな種、
新蟲類しんちゅうるいとして世界に広がった
種族としての特徴を持ち続け他種族と交わらない純血種としての昆虫類と
新な種として生まれ増え続ける新蟲類
そして 目覚めては滅び、生きる道を探す人類の
未来の星での物語
ボク達は荷車の調達に集落まできていた。
旅をするのにそれほど沢山の荷物を持っていくつもりはなかったが、
それでも街道を使って移動するならやはり荷車があったほうが
何かと便利だと思ったからだ。
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現在 この世界の最大勢力である新蟲類の生活の中心は農耕だ。
その暮らしの拠点となる集落が各地に点在し
物資の輸送などの目的で街道が整備されていた。
そこで暮らす新蟲類は他種族交配によって
純血種の昆虫類が持つ固有の能力は失われていた。
結果として、狩猟を生きる手段とする者は少なくなっていた。
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旅をするにあたり所持したほうが良いと思われるものがいくつかあり、
それらの調達も必要だった。
タウの持つ知識は過去から近代までのものらしく、
今の世の中の暮らしなどには少し疎かった。
だから物資調達についてはある程度はボクが決めることになった。
タウ・・・そう、ボクは彼女をタウと呼ぶことにしたのだ。
彼女の書庫で名前を尋ねたとき、彼女が教えてくれたのは、
古くから受け継ぐ種族名らしきものだった。
個に対する呼び名というものは存在しないらしく、
名として呼ぶのなら種族名でよいとのことだった・・・
ただし、他の者の前ではその名を口にしないように、とのことだったので、
教えてもらった種族名の始めの2文字で呼ぶことにしたのだ。
「あの子、昆虫のようね」
そう言ったタウの目線の先には少女と少年がいた。
少女は体に不調をきたしているらしく、少年に支えられ
やっと立っている様子だった。
タウがどちらを指して昆虫と言ったのかはボクには分からかった。
彼らは何かを入手するために交渉をしている様子だった
そこで作業をしている者に銅の粒らしい物を手渡そうとしていた。
きっと、横にある芋のような物を求めているのだろう。
しかし、手渡した物は突き返され、何もなくその場を離れていった。
この小さな集落では、純粋に売買を目的として品物を扱う者は少ないのだろう。
お互い余った物を交換する程度だとすれば、
さきほどのような貴金属での交換交渉よりも単純な物々交換の方が
好まれるのだろう。
そういう意味では、ボクらは運が良かった。
入手が困難だと思っていた荷車をすぐに調達することができた。
たまたま手放してもよいという者が、すぐに見つかったのだ。
そして、なにより、タウが貴重な薬草を加工して粉末にしたものを
かなりの量、所持していたのだ。
その薬草の粉末を差し出すと相手は喜んで交換に応じてくれた。
夜営のためのテント用の布やロープなどのこまごました物すべて
薬草粉末との交換で入手できた。