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未来の星での物語  作者: 凡人(ぼんど)
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アリの女王編 29話      追加

大広間で皆で朝食をとっていた、

昨日タウから聞いた話をまだ自分なりに整理できずにいた、

何の答えも持たず同胞を探すことに迷いが生まれていたのだ。

そして、皆もそれぞれに思うところがあるようで会話もなく時間が流れた。


メイドの1体が玄関へと歩いて行った、

誰かがノッカーを鳴らしたのだ

戻ってきたメイドによると、尋ねてきた者は2体で、

ここに滞在する者の中に知り合いがいるので会いに来たのだと、


当然それだけでは誰のことか分からず、食事も終わっていたので、

皆で玄関ホールに行ってみることにした。


そこには、母親と娘ほどに見える者達が立っていた。


「突然訪ねてきて、ごめんなさいね」


年上の者が微笑んで言った。


「棲家を何日も空けるなんて、私くらいのものかと思ってましたよ・・・はじめまして」


タウが静かな口調で言った。

しかし、その言葉からは緊張が伝わってきた。


「はじめまして、私ちょっとせっかちで、あなたが来るまで待てなかったの、だから会いに来ちゃったのよ」


「こんなところに突然、騒ぎになりますよ」


こまった様子でタウがため息をついた、年上の女性はにっこりと微笑んでいる。


「マスター、後ろの2体、わたしじゃ抑えられません」


横にいた少女がこちらを見たまま小さな声でその女性に告げた。


「大丈夫よ、話にきただけだから・・・でも、そう、分かったわ」


少女に優しく答え、そしてタウを見た。


「そっちの子たちは、あなたの守護者かしら?」


タウの後ろに立っているマクスとオペラクラリスのことを聞いたのだろう、

タウが答えようとしたとき、


「姫様ーー!!!」


悲鳴に近い声を発し、メイド達がタウの横に立つバーチェルの前に飛び出してきた。

バーチェルを守ろうと必死の形相だ、しかしその足は震え、立っていることすらやっとの様子だった


相手側の少女が1歩進み出る、

見ればその手と足のは金属製の籠手とスネ当てがはめてあり、籠手は小さな盾の形状をしている

そしてその背中には2枚の羽がある。


「やめなさい、さばえ!、 紹介がまだでしたね、この子は さばえ、私の守護者です、

 争うつもりはないのよ」


少女を制止して、そして皆に向かってそう言った。


「さがりなさい、さばえ」


「はい、」


少女は1歩さがり、もといた場所に立った


「私のことは、もう分かっているようね、話せるかしら?」


皆を見渡し、そしてタウに言った。


「ええ、もちろん、でも場所を変えたほうがいいかしら」


「いえ、ここで構いません、むしろこの建物の中でお話いただいた方が、混乱も避けられるでしょう」


メイド達の中から進み出て、バーチェルが言った。


「懸命ね、あなたがグンタイアリの女王ね?」


バーチェルに静かに微笑みかけ、そして大広間へと向かった。



「まず聞かせてちょうだい、北の森の私を訪ねて来たということは、知識を統合するためね?」


年上の女性・・・北の森の者は、タウに言った。


「ええ、そのつもりで来ました」


「それはつまり、あなたが引き継ぐと?」


「それは・・・共有する事はできないのでしょうか?」


「それは無理ね、自らの知識を放棄する必要はないけど、新たな知識を得る者は1体のみ、それは掟よ」


「何故ですか、それに拘る必要があるのですか?」


「それはね、つがいとなった場合でも、今の私達のように出会う場合でも、知識の拡散を防ぐことを優先するからなのよ、それほどに統合によって完成される新たな知識と技術は、この世界にとって危険なの」


「では、教えてください、あなたが引き継いだときは、どうするつもりですか?」


「分からないわ、私にはただ守ることしかできないかもしれないわ」


「北の森から棲家を移すつもりは?」


「それは、ないわね、どこに行っても同じだから」


「でも、少なくとも今の場所よりは争いを避けられるのでは、」


「前に私のところに攻めてきた連中のことを言ってるのね?」


タウはだまって頷いた。


「あれはね、ついでに私のところに来たわけじゃないの、初めから私のことが目的だったのよ」


「どういうことですか?」


「私達が持つ知識の存在とその価値に気付いた者達が現れたということよ」


「そんな・・・だって、そもそも不出のものなのに、何故?」


「私達の知識の元は何?」


「それは・・・旧世界の、人間の技術です」


「そう、それらを集めさらに独自の研究と研鑽を重ねた結果、今に至るわ、それに不出と言っても完璧じゃないわ、なら元の持ち主がそれに気付いてもおかしくはないでしょ」


「人間が!?・・・でも、攻めてきたのは、」


「遥か西の地で、人間を中心とした国家が誕生したわ、その国の力が及んだことは間違いないわね」


人間の国・・・ボクはその言葉を聞いたとき、嬉しさではなく不安を感じていた・・・


「でも、その国が関わっている証拠は?」


「何を言っているの、あなたがそれを質問してどうするの、生き残りを捕まえて聞き出すことなんて、造作もないでしょ」


タウに言った意味をボクでも理解できた、タウは人間に好感を持っている、だから違うと思いたかったのかもしれない。


「人間の国は今、その知識と技術で他種族を従え、この世界の覇権を得ようとしているわ、そして自らの失われた技術を求め、奪いにきたのよ」


「人間の、今の技術とはどの程度なのですか?」


「製鉄技術と蒸気機関の完成、それによっての農業と輸送の革命ってところかしら」


「もう、そんなところまで・・・」


「一度自分達が歩んだ道なのだから簡単なことでしょう、ここから先その進歩の速さは加速するばかりよ、すでに支配階級と労働者階級も生まれているわ」


「このままでは・・・この世界はいずれ、その国に完全に支配されてしまう・・・」


「そう、でも私には、残念ながら策がないの、だからあなたの考えを聞かせてちょうだい!そして、あなたの覚悟を見せてちょうだい!」


タウは、わずかな沈黙の後、静かに答えた


「分かりました、それなら掟に従います」


「・・・いい覚悟だわ、 皆さん少し離れていて下さいな・・・さばえ、あなたも」




タウと北の森の者は、互いに左手で相手の左手首をつかみ合い、向かい合って立った。


「何をするつもりだい?」


ボクは慌てて止めようとしたが、


「種族の習わしに従い決めるだけよ、倒れたらそこで終わり、 大丈夫よ致命傷にはならないから」


逆にタウにそう言われた。


でも致命傷にならない・・・?ほんとうに何をするつもりなんだ・・・


「いつでもどうぞ」


北の森の者がタウに言った。



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