アリの女王編 27話 追加
翌日、一行はトキトとハス、
そしてタウ、マクス、オペラクラリス、バーチェルの二手に別れて町へ出た
いつもならバーチェルの護衛にはハスが付き視察に出かけるのだが、
今回は物資の調達も兼ねて自分達が護衛に付くと、マクスとオペラクラリスが言い出したのだ。
その結果、この組み合わせとなった。
「あなた達、バーチェルに便乗して町を見物して回りたいんでしょ」
タウにそう言われて2体は少しバツが悪そうに笑った。
「たまにはさ、羽を伸ばすのもいいかなーーって」
「何言ってるの、だいたい羽があるのは、あなただけでしょ、」
タウにそう言われ、オペラクラリスをチラッと見た。
「オペラクラリスも、棘伸ばしたいって言ってる、」
「言ってないわよ!、トゲ伸ばしてどうすんのよ、まあ、行きたいとは言ったけど・・・」
「ふふふ、でも皆さんとご一緒で私も心強いです」
「ふう、しかたないわね、でも目的も忘れないでね」
「ああ、買い物と護衛だ」
「承知よ、まかせて」
2体は張り切って答えた。
そして商店の立ち並ぶ区画へと向かった。
今回滞在している町の規模はかなり大きく、町の中央に宿泊している建物から見て、
西と東にそれぞれ商売で賑わう区画があった、
タウ達は西の区画へ、トキトとハスは東の区画へ向かったのだ。
「ところで、ハスから少しだけ教えてもらったのですが、
タウとトキトは同胞を探して旅をしていると・・・手がかりなどはあるのですか?」
町を歩きながら、バーチェルがタウに尋ねた。
同胞を尋ね旅をするという点においては共通するものを感じ関心があるのだろう。
「ええ、手がかりなら一応あるの、私の種族もね、あなた達ほどじゃないけど、
特有の情報網があるのよ」
「そうなのですか、それは素晴らしい」
「へえーー、そうなのか、」
「知らなかったわ」
3体は口々にそい言って驚いたが、
「でもね、情報が特殊すぎて旅の役に立つものは少ないのよ、ただ同じ種族の者が
長くどこを棲家にしているのかは、分かっているの」
「それが分かっていれば少なくとも目的のためには役立ちますね、
今もその情報は絶えず伝わってくるのですか?」
「いいえ、最後に情報を得たのは、もうずいぶん前のことだったわ」
「じゃあ、タウの同胞が別の場所に映ってたら、どうすんの?」
オペラクラリスが、すぐに疑問を問いかけた。
「それはたぶん大丈夫、私の種族は棲家を変えることはまずないの、
私のように棲家を留守にするのも稀ね」
「それならタウの留守中に誰かが尋ねてきたらどうすんの?」
「そうね、大事な用件なら、待ってるんじゃないかしら、」
おおざっぱね、意外と
「ところで、トキトも同胞の情報を持ってるの?」
「トキトはまったく当てがないそうよ」
「なにそれ、行き当たりばったりね」
「あはは、あたしはキライじゃないぜ、そういうの」
そうやって話すうち、随分賑やかな場所までやってきた。
「あらぁーー、姫様---!」
立ち並ぶ店の中から大きな声でそう呼びながら、こちらへ駆け寄る者がいた、
その声につられ、周りもこちらを見てバーチェルの存在に気付き、集まってきた。
「姫様ようこそ」
皆が歓迎の言葉を口にした。
「皆、ありがとう、歓迎を嬉しく思います、今日は皆の毎日の暮らしの様子を
見たくて来ました、話を聞かせて下さい」
バーチェルは女王らしく応えた。
「畏まりました姫様、どんな事でもお尋ねください」
「ありがとう、それから必要な物もあります、協力してくれると嬉しいのだけれど」
「もちろんでございます、こちらの方達の必要な物を
ご用意すればよろしいのですね、お任せください」
そう言ってその場を仕切っているらしい者が、タウ達から注文を聞き、数体の者が
それぞれの店へ急ぎ戻って行った。
「ありがとう、探す手間がはぶけて助かります」
タウがその場を仕切っている者に、礼を言うと、
「とんでもない、皆さんが姫様を守って下さったこと、種族の者皆が感謝しています
良い品をご用意させていただきますよ」
そう言って、次々に指示を出し、仕事をこなしていった。
バーチェルからの質問にも正確に答えていた。
それらのことが、ひと通り終わると、
「それにしても、みんな凄いんだね、あたし達とそんなに違うようには見えないのにね」
「あら、でもこちらの方は羽持ちだよ」
「あら、まあほんとだね、」
マクスの背中の羽に気付き驚いている、
昆虫のすべてが羽を持つわけではなく、飛行可能な種族自体が希少なうえ、羽があることは
一部の例外を除き、成虫の証でもある、グンタイアリ達にとっては珍しいのだろう
「すごいねえ、飛べるのかい?」
「あ、いや、あたしはそんなに高くは飛べないから・・・」
マクスは皆に囲まれて、その勢いに押されぎみだ
「あら??」
オペラクラリスが、ビクッ!とした
「こっちの可愛らしいお嬢さんは誰だい?」
「あんたも、お連れさんかい?」
オペラクラリスはマクスの後ろに隠れて、いつの間にか頭に布まで被っている。
しかし、その勢いに押され、しぶしぶ被っていた布をとると、
周りにいた若い雌達が、それに気付いた。
「キャーーーかわいい」
「ほんとだ、かわいい」
「あなたも姫様と旅をしているの?」
「姫様とは仲良しなの?」
「お歳も近そうだし、きっとそうよ」
「すてき!」
囲まれて、質問攻めにあって、オペラクラリスはタジタジだ、
「っぷ、お歳も近いってさ」
「っぷ、可愛らしいお嬢さん」
マクスとタウは思わずふき出した。
「そこ!、笑うんじゃないわよ、ちょっと、あなた達、歳近くないわよ、
わたしの方がずっとお姉さんなのよ!」
「きゃーー、かわいい」
反論の声もかき消されてしまっていた。
「すてきな髪・・・」
「綺麗・・・」
オペラクラリスの髪に1体が手を伸ばした。
「あっ!」
マクスが慌てて止めようとしたが間に合わず、オペラクラリスの髪を軽くとかすように
その指を滑らせた。
「大丈夫よ、普段は刺さらないようになってるから」
心配するマクスとタウに目だけを向けて、ふてくされて言った。
「あら?何かしら」
髪に手を触れた1体が不思議そうに見た。
他の者も皆、目を向けて見るとその長い髪の中から
鋭利さを封印した2本のイバラの枝状のものが、スッと持ち上がった。
「あら!、まあ!」
「何かしら、かわいい」
かわいいって・・・どうなってんのよ、ほんと、
「綺麗な髪に、かわいい角、あなたはどんな種族の方なの?」
オペラクラリスの髪を眺めながら、1体が聞いた。
「キャタピラー・・・それと、これ角じゃなくて、トゲ」
グンタイアリ達の協力で目的の物も調達できた、品質も申し分ない。
バーチェルの視察も十分にできたようだ。
順調に予定をこなして、日がまだ高いうちに宿に帰ってくることができたのだが、
オペラクラリスだけはヘトヘトになっていた。
「お帰りなさいませ」
メイド達が出迎えてくれる。
「うーー、もう外に行きたくない」
大広間の椅子に腰を下ろし天井を見上げた。
「オペラクラリス、もてもてだったな」
「気楽なこと言わないでちょうだい」
天井を見上げたまま答えた
「でもほんとうに素敵な色の髪ですね、皆が関心を示すのも分かります、
エメラルドグリーンの髪なんて、今まで見たこともありませんでした」
「オペラクラリスのその髪は、種族特融のものだったわよね」
「ええ、かつては繁栄もしていたらしいけど、今ではすっかり希少種よ、
たしかに珍しいかもね」
やはり天井を見上げたまま、バーチェルとタウに答えた。
「希少種といえば、タウの種族もそうなのですか?それとも大勢の同胞がいらっしゃるのですか?」
この子、意外とずばっと聞くわね、さすが女王ね、
前に種族については話せないって言ってたから、こっちもあまり
詳しくは聞いてないのよね、
オペラクラリスはそう思いながら、タウを見た。
「んーーー、そうね、あまり詳しく言ってなかったわね」
タウはそう言って少し考えてから言葉を続けた。
「北の森って、聞いたことはあるかしら」
その言葉に皆がうなずいた、メイド達も同様に、そしてバーチェルが言った。
「悪魔の住む北の森を知らぬ者などいません」
「私の同胞なの、私はその者に会いに行くのです」
恐怖のあまり、メイド達がガタガタと音をたてて後ずさった。




