アリの女王編 24話 これから
武装した数十万の兵士に包囲され、石切り場と砦のアリ達は無条件降伏をした。
捕らえた者達の解放とこの地からの退去、そして以降他種族の奴隷化禁止を条件に
種族間での平和条約が結ばれた。
後日、彼らが去った後、連れ去られ命を落とした者達と共に
先代女王の亡骸が運び出され、集落の北にある小さな丘の斜面に埋葬された。
彼らの多くが眠るこの場所の、先代女王の墓の前で、バーチェルに尋ねた。
「今回のこと、君はあれで良かったの?」
報復も従属化もせず、彼らを解放したことについて、聞いてみたかったのだ。
「そうですね、たしかに恨みはあります。ですから仮に彼らをこの地にとどめた場合
笑顔を向けることは難しいでしょう、そうなれば必ず争いが起きるでしょう。
かといって彼らを滅ぼしてしまうのは勝手がすぎると思うのです」
「でも、他の場所で同じことをするかもしれない」
「そうかもしれません、他種族を使役するのも彼らの中にある本能でしょう、
いくら条約を交わし規則でしばっても、彼らの中からそれが消えることはないでしょう」
「だったら、何故?」
「内なる本能に従うのみでは生きていけないことを、今回彼らは学んだはずです。
変わっていく世界とどう向き合うか、生き延びるのも滅びるのも彼ら次第、
自然が決めることです」
そして、先代女王の墓に語りかけるように言った
「皆も納得してくれました」
「そう、君も皆も、それでいいなら、」
「はい、ハスには本当に助けてもらいました、お仲間の方達にも、
何とお礼を言えば良いか分かりません、ご恩に報いるには、どうすれば・・・」
「はは、もう十分にお礼はしてもらってるよ、
旅に必要な物資に新しい荷車まで用意してもらって、
皆よろこんでるよ、ありがとう」
「そんな、でも、喜んでもらえたのなら、なによりです、
・・・もう、近々出発してしまわれるのですか?」
「そうだね、トキトの体調しだいだろうけど、
ゆっくり休ませてもらったおかげで、だいぶ良さそうだよ、
もういつでも行けるんじゃないかな」
「そうですか、では準備をしなくてはいけませんね」
「ああ、・・・そうだね・・・さて、そろそろ戻ろう」
出発の準備をする・・・
いつもなら手早く済ませることも何故かその気になれなかった。
この地での出来事が、あっけなく昨日のことになっていく、そのことに、戸惑っていた。
「ハス、ほんとうにありがとう、我が種族はあなたと共にあります」
そして今日も終わろうとしていた。
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