アリの女王編 22話 軍団化
すさまじい羽音をたてて突然、現れた。
「またせたね、とっとと逃げるよ、」
マクスはボクを軽々と片手で脇にかかえた、
自分よりも小柄な相手に抱えられるというのも何だか妙な気分だが、
その細い腕からは人間では想像もできないほどの恐ろしい力が感じられた。
「いくよ、おっりゃーー!」
足元の石が砕けるかと思うほどの蹴りだしで飛び上がり、羽音と共にさらに加速した、
そして・・・
「はは、ただいま」
「ちょっ、ちょっと、どうしたの!?」
「あらー、気を失ってる、白目むいてるよ、
マクスあんたトキト抱えたまま本気で飛んだんでしょ」
「あ、いや、本気じゃないけど、加減まちがえた、タウごめん」
ボクは気を失ったまま安全な場所へ運ばれていた。
切り立った岩場の上の茂みの中に、そこにタウとオペラクラリスもいた。
「それにしても、作戦もへったくれもないわね、単なる強奪じゃない、
これじゃ、わたしもタウもいる意味ないでしょ」
「はは、まあそう言うなって、やってみるまで何があるか分かんないだろ」
「でも、おかげで助け出せたわ、マクスありがとう、オペラクラリスも、」
「おう、」
「わたしは何にもしてないわよ、でもまあ ひと安心ね」
そのとき、マクスが何かに気が付いた。
「ありゃなんだ?」
「どうしたのよ?」
「あれ、見えるか?」
「うわーー、ぞろぞろとすごい数が来るわね」
「見て、こっちからも来たわ、行進のようね」
「これ、どんだけいるんだ?」
「両方からどんどん近づいて来るわよ、どうするの?」
「ちょっとまずいわね、迂闊に動かない方がいいわ」
双方から接近した行列はそのまま衝突した、
それは砕けず混ざり合った、石切り場のわずかに北で、そしてさらに大きな行列になった。
その大きさは幅数百体、全長に至ってはまだ合流を終えていないそれぞれの最後尾を
目で見ることもできない。
そのとき、列の先頭のグンタイアリに変化が現れた。
肌の色が褐色へと変わり、身を守るための硬い外皮へと変化したのだ。
そしてその手足には鋭い突起があり、それが武装した兵士であることは明らかだった。
その変化は後方へと次々に伝わり、行列の色を変えていった。
「これが、軍団化・・・」
バーチェルは呆然とした。
無理もない、自分達の中に残された力とは、
仲間と協力するためのもの、そして静かに平和に生きるためのもの、
そう信じてきたのだろう。
「バーチェル、しっかりするんだ!、死の行軍を止めるんだろ!」
しかし今、目の前で変貌と遂げる同胞達は紛れもなく
武力行使を目的とした軍団の兵士なのだ。
突如、軍団が向きを変えた。
石切り場へ向けて進みはじめた、侵攻を開始するつもりだ。
「まずい、石切り場には捕らえられた他種族が大勢いるんだ」
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