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未来の星での物語  作者: 凡人(ぼんど)
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アリの女王編 21話 グンタイアリの行進

グンタイアリの集結の波がどこまで迫っているのか、この瞬間に知ることはできない。


今はタウ達と合流して相談をしたかった、

少女も同胞と話し合う必要があるだろう、まずは急ごう。


少女の家まで戻ってみると、タウ達はいなかった。

入れ違いにトキトの救出に向かったのだろう。


「お仲間の方達の後を追いかけますか?」


「オレが行っても邪魔になるだろうし、ここで待たせてもらってもいいかな」


「もちろんかまいません、私は、いまから同胞達と話してきます」


そう言って、少女は家から出て集落の中央へと歩いて行った。


それにしても、マクスとオペラクラリスが無茶しなけりゃいいけど・・・

でも、タウが一緒だから大丈夫かな、


タウにはいつも冷静な印象があった、こんなときは、やはり頼りになる。



「ちょっとタウ、ダメだって、頭ひっこめて、オペラクラリス手伝って」


「ほんと しかたないわね、ほら隠れなさいよ、見つかるでしょ、」


「だっ、だって、あいつらーー!」


「タウ、あんまり無茶すんなって、様子見ながら隙見てかっさらえばいいんだからさ、」


「おや、今日はマクス、ずいぶん冷静ねー」


「なんだよ、あたしはいつも冷静なんだよ、」


3体は砦の南にある石切り場にいた。

そこは丘を上がった場所にあり、石と砂利をとるために削り取られ、

ポッカリとすり鉢状の大穴があいている。

そこで、砦のアリ達よりも先回りして待ち伏せする作戦を立てたのだ。


ハスと少女が砦に向けて出発した直後、暗闇のなかで行動開始し、

この場所までやってきて、ひそんでいたのだ。

そのすり鉢状の穴の中心、一番低い場所で過酷な重労働をさせられるトキトを見つけたタウが

それに激怒し、そのまま突入しようとしたのだ。


「ふう、あぶねえ、なんとか見つからずに済んだな、 

 ほんとたのむよ、お前ら2体足遅いんだからさ、見つかると面倒なんだよ、」


「そ、そうね、ふう・・・ごめんなさい」


「むっ、、わたしまで言われた、」


「それにしても、でっかい穴掘ったな、一番下の奴なんて、ちっちゃくて顔分かんねんよ」


「マクスはあんまり遠くは見えないみたいね、わたしもタウも、このくらいは普通に見えるのよ」


「あたしはさ、どっちかっていうとさ、動いてる物見る方が得意なんだよ」


「ふう、それじゃマクスの言う通り様子を見ましょう、

 すこし遠いけど私とオペラクラリスで見張りましょう」


タウの声は少し落ち着きを取り戻していた。




同胞と話すといって家を出た少女が、それほど時間をおかず戻ってきた。

その表情から何か問題が起きたであろうことが伝わった。


「おかしい、集落に誰もいません」


「いない?、この集落に誰も?」


「誰もいません、もぬけの殻なのです」


状況を整理するため必死に考えた。


「まさか、照応消失により種族招集がもうここでも?」


「そんな、もしそうなら集結の大行進がすぐ近くまで来ていることになります」


事態はこちらが思うより遥かに早く大きく動いているようだ。


「それにしても、誰も残っていないっていうのは・・・他種族の者はどうしたんだろう」


「ここに他種族はいないのです」


少女はこちらを見て言った


「この集落を含め、町の周辺の集落は、ほとんどがグンタイアリの集落なのです。

 町には他種族もいますが、それも一部です。この平原で暮らすグンタイアリの数は

 実はそれほどまでに多いのです」


想像を遥かに超えていた、その数が集結しようと大移動が始まっているのだ。


少しでも手がかりを探そうと集落の周辺を確認してみたところ、

ここから北北東へ向けての足跡が多数見つかった。


「行進の本流はきっと町の向こう側を通過しているのでしょう」


「それはいったい、どこを目指して?」


「わかりません、いえ、決まっていないのです。女王消失の地を、複数の行進の列が目指します

 それが互いに引き合い合流するのです。集結の場所そのものは、流動的なのです。

 とにかく、私は足取りを追ってみます」


「行こう、手伝うよ」


「一緒に行ってくれるのですか?・・・ありがとう・・・」


一国も早く見つけなければ、

すぐに少女を背負って足跡をたどった。


それは町の東側を通り北へ抜け、そこで行進の本流と合流したようだった。

そして、その大行進の足跡を追った。


「行進に近づいたとき、君はそれにのみ込まれたりはしないの?」


気がかりだったことを聞いてみた。


「私は大丈夫です、王位を継承する者は、その本能にのみ込まれない存在なのです

 先代女王からその意思を受け継いだとき、わずかですがその知識も得たのです」


女王の存在だけが、唯一種族の本能と対等でいられるのだろう。


「それより救出に向かわれたお仲間の方達が心配です。巻き込まれずにすめば良いのですが」


少女は申し訳なさそうに言ったが、

あの3体ならばトキトを救出してさらに身を守ることも難しくはないだろう。


「マクス達なら、たぶん大丈夫だよ」


「なら、良いのですが」


「ところで皆さん、お互いを呼ぶときに・・・」


「ああ、オレ達お互いを個体名で呼んでるんだよ、」


「個体名・・・?」


すこし驚いた様子だった


「たしか・・・ハス、と・・・」


名乗ったわけではないが、覚えていてくれたようだ。


「そう、オレはハスと呼ばれているよ、」


「そうですか・・・私もそう呼んでもいいですか?」


「ああ、もちろん、かまわないよ」


「個に名があるなんて、素敵ですね」


その声には初めての物への憧れが感じられた。


「君にも受け継いだ種族の名があるの?」


なぜそう思ったのか、ふとこの少女のことを、少女という個体として名を呼びたいと思った。


「私が祖母から聞いた名は、エシトン・バーチェルといいます」


「だったら君のこと、バーチェルと呼ぶよ」



そして足跡を追って走り続けた。

バーチェルも背負われることになれたようで、こちらに身を預けている。

そうするうち、それほど時間がかからず行進の最後尾が見えた。

その列に追いつき、並走して背でバーチェルが叫ぶ。


「皆! 聞いて! 王位継承は行われたのです、皆、止まって!!」


バーチェルを乗せたまま加速し、列の先頭を目指した。

どれだけいるんだ、先頭が見えない・・・幅だけでも2~300体くらいはいそうだ。


「ハス、列に近づいて私をおろしてください、直接意思を伝えます」


言われたとおりに列に近づいた、背からおりたバーチェルは行進する同胞達の腕をつかみ

そして訴えた、しかし誰もバーチェルを見ることすらせず、逆に引きずられ、

とうとう倒れてしまった。


「集結完了前に止めることはできないの?」


悔しそうに、その手が乾いた土を握りしめていた。


「とにかく、列の先頭まで行ってみよう」


「分かりました・・・お願いします」


バーチェルを背負い、再び走った。

遥か先にあった列の先頭にようやく追いついたとき、その遥か前方に砦が見えるほどの場所まで

来ていた。しかし列の進行方向は砦からは、ずれている


「そっちは、石切り場の方角だ、」


「あの方角から別の行進の列が来るのでしょう、見てください行列がさらに向きを変えます」


行進の列は方向修正をしながら隊列を整え、石切り場のある方向へ進む


「別の行進の列も近くまで来ています、引きあっています」


「じゃあ、この近くで合流を?」


「はい、たぶんそこが集結の地となるでしょう、私をそこへ連れていってください」


「何をするつもりだい?」


「今、この行進を止められないのなら、集結完了後に軍団を止めます」


「分かった、急ごう、このまま進めばこの先には切り立った岩の壁があるんだ、

 きっと迂回するだろう、オレ達はまっすぐ超えて先回りしよう」


なにが起こるか分からない、とにかく急ごう、







お読みいただきありがとうございます


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