アリの女王編 19話 潜入
一億年の未来の地球
美しい昆虫の女性に助けられた人間のボクは、彼女とともに旅することとなった
コールドスリープから目覚め僅かに生き延びた人類と
進化し人の姿になった昆虫類
やがて進化は他種族交配を可能とし、それは新たな種、
新蟲類として世界に広がった
種族としての特徴を持ち続け他種族と交わらない純血種としての昆虫類と
新な種として生まれ増え続ける新蟲類
そして 目覚めては滅び、生きる道を探す人類の
未来の星での物語
「君の種族の女王様の居場所も、探してみるよ」
少女はその言葉におどろき、声をつまらせた、
手を貸してくれるなど思ってもみなかったのだろう
少女から、女王の特徴などをおおまかに聞いてハスは家を出て
闇の中を西の平原のアリ塚まで一気に走り、2時間もかからずたどり着いた。
地下の迷路に忍び込みトキトを探した、
無事を確認して明日救出することを伝えた。
トキトの明日の作業はここから南へ行った場所の石切り場での仕事らしかった
そこでの作業は数日は続くとのことだった。
しかし、かなりの重労働らしく、人間の筋力では長くはもたないだろう。
はやく助けないと、
次に地上の建物内に行った。
アリ達はすでに寝静まっていた、所々に見張りはいるが、
気配を消してすり抜けた。
1階部分から各部屋を確認し、すべてがアリ達の住居であることが分かった。
そのまま2階、3階と確認していくが、
それらしい部屋も、女王らしい者も見当たらなかった。
3階からさらに上に登ると屋上に出た。
その平らな屋上部の中央には円柱形の何かがあった、
近づいてみると、それはこの建物と同じ石を積み上げて作られたもので
大きさは直径にして10歩ほどのものだろうか、
その壁面に沿って反対側へ回り込むと、格子状の隙間が見えた
一定間隔で半周ほど設けられたその隙間は、
腕がやっと1本入るほどの狭さだったが、低い位置から差し込む月の光で
中の様子を見ることができた。
のぞき込むと、奥の壁まで10歩ほどもない広さのその中に誰かが座っていた。
「あなたは、捕らえられた女王ですか?」
「あなたは、誰ですか?」
すぐに言葉が返ってきた。
「オレは、あなたの孫に頼まれて探しにきました、あなたを助けたいと言っています」
「そうですか、あの子が、 ありがとう、たしかに私がグンタイアリの女王です、
ですが私をここから救出することは難しいでしょう」
「なぜですか?居場所さえ分かれば仲間を集めて助け出すことはできるのでは?」
「この牢には、入り口も出口もないのです、この石を砕くしか
ここから出る方法はないのです」
その意味に気付いた、たしかにそうだ、
この石を砕くのに、どれほど時間がかかるか、その間この場所で
ここのアリ達と戦いくいとめなければならない、
少数での救出作戦では無理だ、では、どれほどなら・・・
武力で完全制圧するしかない、それこそ無理なことだ、
「あの子の頼みを聞き、この場所まで来てくれた勇気ある方、
我ら種族の者すべてを代表してあなたに頼みがあります」
その言葉から女王の真剣さが伝わってきた
「あの子を、ここに連れてきてほしいのです」
「それは・・・!」
さすがに戸惑った
「それは、何故ですか?」
ここに連れてくるということは、ある程度の危険は覚悟しなければならない。
「大切なことを伝えなければならないのです、急がなくては
町も、周りの集落も、もちろんこの砦もすべてが滅びてしまいます
もう時間がないのです」
この砦が滅びるとは、ここのアリ達によって周辺が滅びるなら分かるが、
そうでは、ないのか、、
「こんな無理をいってごめんなさいね、でも、ここへ来てくれたあなたに、
頼むしか、もう方法がないのです、どうか、あの子をここに」
女王もそれが危険であることは承知だろう、しかし、その真剣さから
それが重大なことなのだと理解した。
「分かりました、待っていてください」
そしてすぐさまその場所を後にして、女王の言葉を伝えよう全力で走った。
少女の家まで戻ると、その少女と一緒にタウ達もそこにいた。
まずトキトと会ったこと、明日の作業のことなど伝えた。
そして次に、
石牢に幽閉された女王に会ったことを伝えた。
大切なことを伝えるため、自分の元まできてほしいと、
その女王の真剣さも含め伝えた
「分かりました、それが女王の意思なら、私は行きます」
少女は小さく息をした後、こちらを向いて言った
「あなたには何度も危険なお願いをして、ほんとうにごめんなさい、
でも、もう一度、お願いします私を連れてってください」
「ああ、いいよ、行こう」
迷いはなかった。
タウもマクスもオペラクラリスも、トキト救出作戦は3体の戦力で十分だから
少女に協力してやれと言ってくれた。
「でも、その子を連れて、うまく忍び込める?気をつけなさいよ」
「無理はすんなよ」
皆、心配してくれていた。
「大丈夫、オレがおぶって見つからないように行ってくるから」
「おっ、おぶっ、私を?」
なぜか少女の顔が赤くなったように見えた。
「さあ行こう、夜が明ける前に」
オレは、この少女の助けになりたいと思った。
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