アリの女王編 17話 さらわれた
一億年の未来の地球
美しい昆虫の女性に助けられた人間のボクは、彼女とともに旅することとなった
コールドスリープから目覚め僅かに生き延びた人類と
進化し人の姿になった昆虫類
やがて進化は他種族交配を可能とし、それは新たな種、
新蟲類として世界に広がった
種族としての特徴を持ち続け他種族と交わらない純血種としての昆虫類と
新な種として生まれ増え続ける新蟲類
そして 目覚めては滅び、生きる道を探す人類の
未来の星での物語
どうしてこんな事になったのか、
ボクは今、石を運んでいる、いや、運ばされている。
ハンミョウの幼虫が生息する平原を抜け、石切り場まで行き、
切り出した石を担いで戻ってくる。
ここは、積み上げられた石によって作られた巨大なアリ塚なのだ。
地上部は3階層ほどであり、地下部に至ってはその最下層がどれほどの
深さなのか分からないほどだ。
大きな町にたどり着いたのは一昨日の昼くらいだった。
タウとマクス、オペラクラリスは3体で町の中へと出かけていった。
ハスに脱皮の兆候が出て、思うように動けないようだったので、
ボクは町の入り口付近に荷車を停め、
その場でハスと一緒に皆の帰りを待つことにした。
そして、突然 さらわれたのだ。
何者か分からないが、突然現れた者たちにボクも、ハスも手足をつかまれ
身動きできない状態にされて、運ばれた。
いつものハスならば抵抗して逃げることなど簡単だろうが、
脱皮の準備に入った今は、それも無理なのだろう。
そして、連れてこられたのが、巨大なアリ塚だったのだ。
塚・・・いや、要塞、砦といった方がいいだろう、
その砦の地下に放り込まれ、ここで働けと命令された。
ボク達を連れ去った者たちは、他の種族をさらい、労働をさせるという
特殊な習性をいまだに持ち続けるアリの種族だった。
その日は地下で穴を掘らされた、ハスはほとんど動けなかったので、
目立たない場所に座らせて隠すようにして作業をした。
ハスはその夜に脱皮をした。
夜明け前には問題なく動けるまで回復した、
そして、このままここから脱出して町に戻り、皆と一緒に助けに来るからと、
そういって地下の部屋をあとにした。
ボク達が入れられた地下の部屋は、入り口部分に特に扉や格子のようなものはなく、
見張りもそれほど多くはない、
一見出入りが簡単そうではあったが、その構造は迷路のように入り組み、
絡み合って脱出を困難なものにしていた。
少ないとはいえ、その見張りの目をかいくぐりボクを連れて脱出することは、
さすがに無理だろう、
そのためハス1体でまずは助けを呼びに戻ったのだ。
そのハスはというと、
「あ、オレ、こういうの得意ですから、大丈夫です、ついでに中を
偵察してから行きます」
と、言っていた。
夜が明けると・・・といっても地下では日の光が届かず暗いままだが、
見張りの者に連れられて、ぞろぞろと地上に出された、
そこから南の方角にある丘の上まで行って、石を運べと命令され作業を始めた。
アリ塚の中の様子はひと通り確認して記憶した、
あとは、戻って知らせて・・・・
ああ、怒られるだろう、気が重い、
町まで戻ると、さらわれたときと同じ場所に荷車があり、
その周りにタウとマクスとオペラクラリスが立っていた。
近づいて声をかけるよりも、先にマクスがこちらに気が付いた。
「ハス!、あんた、」
皆のところまで、まずは帰ってきた・・・
「あんた、どこいってたのさ、 あんただけ?」
「さらわれたんだ、オレ達・・・ここから西の方角にあるアリ塚に連れていかれて、
助けを呼ぶためにオレだけ逃げてきたんだ」
「さらわれた・・・・さらった? トキトを?」
あ、タウが怒ってる、 皆そう思った
「アリンコどもが・・・」
あ、すごく怒ってる、 皆そう思った
「と、ところで、あんた、脱皮は?」
マクスが、ハスの様子を確認した
「夕べ、塚の地下の部屋で、それで動けるようになったんだよ」
「そうだったの、じゃああんたはもう、大丈夫だね」
「ああ、だからトキトを助けに行こう」
「と言ってもなぁ、あたし達全員で正面突破ってわけにもいかないしな」
「そうね、それこそ皆殺しって話になっちゃうでしょ、無理ね」
「そうね、そうよね、そうしていいなら簡単だけど、しちゃダメよね・・・・」
えっ?、 簡単なの? 皆そう思った。
新章 アリの女王編 スタートしました。
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