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未来の星での物語  作者: 凡人(ぼんど)
14/31

出会い編 14話 仲間になった

うれしかった・・・


かつては少ないながらも仲間も親もいた。

同じ森で長く暮らし、平和だった、

ある時、自分達の森も、となりの森も、さらにそのとなりの森も、なくなってしまった。


数日間燃え続けた巨大な炎は住む場所も、家族も、そして平和までも

奪っていった。


焼け野原をさまよい、見つけた森でわずかな木の実を見つけ飢えをしのいだ。

森づたいに移動し、森の中で眠り、いくつかの小さな集落を見つけて訪れた。


そこでまっていたのは、

自身の証明であり、失われた家族、仲間とのつながりを示す

エメラルドグリーンの髪への嫌悪と迫害だった。


それは自分達と違う者、異質な者への恐れが根元となり、集団から排除しようとする意識だった。


元々、森で生きる種族であったため、流れ着いた場所で森の中を探し

わずかだが恵みを得ることができた。

薬草を見つけそれを集落へ持っていき、必要な物と交換した。

貴重な薬草との交換でなければ話にもならなかったが、

それですらも、足元を見られ、必死に集めた薬草でもたいした物は手に入らなかった。


そうやって手に入れた布を頭からかぶり、髪を隠した。


それでも集落の中で暮らすことはできず、

近くの森の中を棲家とし、木の実を食べ、薬草を集め、

数日に一度、集落へ行き芋などの食べ物と交換した。


冬が来るまでに保存のできる食料をたくわえておかなくては、ならなかった。


秋の終わり、森からの恵みと集落で手に入れた食べ物とで、冬の準備ができた。

徐々に森から色がなくなっていった。


単独で迎える初めての冬が来た。

山の斜面に穴を掘り、その中ですごした。芋も木の実も草も木の根も、生で食べた、

心の奥に刻まれた恐怖心が火を受けつけなかった、

自分の棲家で火を起こせなかった、飢えと寒さとの闘いだった。


こたえたのは、エサが不足してさまよう大型の原始昆虫に襲われることだ、

それを撃退するために体力を消耗しても、仕留めた獲物をさばけなかった。

狩猟を生業とする肉食の種族ではなかったため、

解体の知識も道具もなかったのだ。


棲家の近くで襲われた場合、その死体を放置すると

新たな肉食昆虫を呼び寄せてしまうため、

離れた場所まで運んで捨てなければならなかった。



この森の冬は、氷が張ることや雪が降ることはなかった。

暖かい場所ではなかったが、

なんとか春まで命をつなぐことができた。


小さな池のほとりに新しく生えた草たちを見つけた。


近づいてのぞき込むと、そこに映った美しいエメラルドグリーンの髪のその姿は

失った懐かしい同胞達を思い出させた。


涙があふれ、水面に落ちた。



冬が終わり春の薬草がとれるようになり、それを持って集落を訪れた何度目かのとき、

狩った獲物を持って交換交渉をしている少女と少年を見た。

それからも、何度か同じ集落で見かけることがあった。


あるとき、少女の様子がおかしいことに気が付いた、

脱皮の兆候があらわれていた。

事情は分からないが、彼らも昆虫であるがゆえに、彼らだけで生きようとしているのだろう。



その日は朝から集落を訪れた。

あの少女と少年もいた、少女の脱皮はまだ終わっていない様子だった。


持ってきた薬草を手に、家々をまわる、

僅かばかりの食料と、あまり物の布の切れ端を手に入れた。


途中、同じように薬草で品物との交換交渉をしている者を見た。

その薬草はこちらが持っている物とは比べ物にならないほどの貴重なもので

しかも、粉末に加工済みの物だった。

当然、交換も思い通りの様子だった。


用事を済ませ、森へ帰ろうと集落のはずれに来たとき、

さっきの貴重な薬草を持っていた者たちが荷車を手に入れ

調達した品物をそれに積み込んで集落を出ようとしていた。


そこへあの少女と少年が近づき、話しかけていたのだ。

少年は自分達をつれて行くよう頼んでいた。

交渉はまとまり、すぐにでも出発するという。


話したこともない彼らが、この場所から去ろうとしている。

ちがう町へ、ちがう場所へ、ここではないどこかへ・・・


取り残される気がした、

今までどこか安心してしまっていたのだ、

境遇の似た少女と少年の存在によって、自分の今に、


別の場所に幸福があるとは限らない、

森づたいにさまよい、いくつかの集落を訪れ、今の場所に流れ着いた、


変わらない・・・でも・・


少女を荷車に乗せ、彼らは集落から遠ざかっていく、

視界から消えそうになるその姿に、思わず足が動いた。


いやだ、おいていかれたくない、

一緒に行ってどうする・・・


遠くに見える彼らを、追いかけては立ち止まり、また追いかけては立ち止まって・・・


どれほど歩いたか、ふと気が付くと荷車が止まっている。


ゆっくりそのまま近づくと、彼らの前から近づく巨大な物があった。

それが何なのか、すぐに分かった、

彼らは殺されてしまうだろう。


またわたしから奪わないで、


夢中で近づき、声にした、


わたしも一緒につれてって、


匂いでわかった、人間だと、その人は言ってくれた、



ーーーボクらと一緒に行こうーーー



どこまで行くか分からない、いつまで一緒なのかもわからない、


でも、仲間になった。



ーーーあたしもそうする、おんなじよーーー



うれしかった。







お読みいただきありがとうございました


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よろしくお願い致します。

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