出会い編 13話 あたしもそうする
「なんだよマクス、成虫になったからって」
「はっはっ、心配かけたね、体が軽い、すっきりした気分だ」
もともとマクスの方がハスよりも少し大きかったのだが、
羽化して成虫となり、今でははっきりと体格差がある、まるで姉と弟である。
「それにしても、あぶなかったね、あたし夕べの内に羽化したんだけど、
羽がなかなか伸びきらなくてね、日が昇ってあったかくなったら
やっと羽も伸びきって硬くなったんで急いで来てみたんだよ」
マクスは屈託のない笑顔でボクにそう言った。
「それと、タウとオペラクラリスもこっちに向かってるよ、あの子たちに
荷車押させちゃかわいそうだから、戻ってやるか」
ボク達は歩いて戻り、荷車を押すタウとオペラクラリスに合流した。
ボクとハスを残してマクスだけ一足早く戻ることもできたのだが、
また襲われたら困るだろうと、一緒に歩いて戻ったのだ。
皆と合流し、再び歩きだすと、マクスがボクの代わりに荷車を引くと言った。
マクスとハスで荷車担当になるというのだ、
たしかにマクスはボクよりも遥かに筋力に優れているだろう、
だからこそマクスには周りへの警戒と護衛の役目を果たしてほしいのだ。
それを伝え、荷車は今までどおりボクとハスで担当することにした。
「マクスは成虫になったらホントに羽が生えたね、2枚羽の種族の末裔っていってたよね」
軽い足どりで歩くマクスにハスが話しかけた
「ああ、たしかムシヒキアブの末裔って聞いたよ、そういえばあんた、
ハエトリグモだったね、あたしのこと食ったりしないでね」
「食べないよ、オレ、バッタのほうがいいよ」
ハスはふてくされたように、そう言った。
「でも、背中に羽があったらどこに行っても昆虫だと知られて大変だし
何かの用事があるときは、オレが・・・」
やはりハスはマクスの心配をしていた、今まで昆虫だと知られて辛い思いをした、
それがこれからは、いっそう隠しずらくなる。
「大丈夫さ、オペラクラリスなんて、ずっとそうしてきたんだろうし、
あたしもそうする、おんなじよ」
「気にしなけりゃいいの、そうすればそのうち、気にならなくなるから」
「ああ、そうするよ」
何故か、マクスもオペラクラリスも、うれしそうに見えた。
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