出会い編 12話 マクス
横一線に並んでいた5体は、ハスの左右へと回り込み
半円形に取り囲んだ
そこから数歩離れた距離までボクは下がっていた。
緊張が高まる、襲い掛かろうとする気配が伝わってきたその時、
何の音だろう・・・羽音?
砂まじりに風がふいた、
そう思ったときには、もうそこに立っていた。
ハスの後ろに立ったその1体は背中に一対の羽があり、
その体はハスよりも、ひとまわり以上大きかった。
「なに食おうとしてんのさ」
ハスの背中ごしに前方の5体を威嚇して言った。
あまりに突然のことにハスは前方から注意をそらして、振り返った。
「マクス・・・」
ハスはそう言った。
あれは、マクスなのか?
2日前と比べて、一回り大きくなったその体はスラリと細身で、
その背中には人間でいうところの肩甲骨のあたりから2枚の羽が生えていた。
「2枚羽の成虫・・・!?おまえー」
「ハエかぁ!きさま、ハエごときがぁ!」
5体が一瞬見せた戸惑いはすぐに怒りに変わった。
「ハエがああ!食われたいのかあ!」
背中の羽が一瞬はばたくのが見えた、
しかしマクスが右へ行ったのか左へ行ったのかすら分からなかった。
ムチの先端が空気を切り裂くときのような音が3回ほど聞こえた。
ハスの正面に立っていた1体が、その首をもぎ取られ、崩れ落ちた。
マクスの手にその首があった。誰も動けなかった。
「ハエじゃなくって、アブだよ、お前らの方こそ獲物なんだよ」
胸の前ほどで両手で持っていたその首から、スッと手をはなし下に落とした。
ゴトッと音をたてて地面にころがる、
それと同時にまた、空気を切り裂く音が響いた。
その炸裂音とともに、残りの4体も次々に首をもぎ取られ、崩れ落ちていった。
オペラクラリスのイバラのムチの先端のように、
マクスの羽も音速を超えるのだろう。
そして、その羽の驚異的な推進力と強靭な肉体とで、
目で追えないほどの移動速度で標的を仕留めたのだろう。
信じられないことに5体は、立っていた場所から1歩も動かず倒れていた。
「フンッ、そうは言っても、あたし、お前らみたいなの食わないけどね」
足元に落ちた首を、つま先で転がしながら、マクスはつぶやいている
そして、こちらを見て言った
「それにしても、うちのオスは弱いな、ハス、お前ももうちょっとガンバレ」
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