出会い編 11話 5体の昆虫
人間と新蟲とで筋力を比べた場合、それは男女の違いほどの差だという。
もちろん非力なのは人間だ
その新蟲と昆虫を比べた場合は、さらにその差は大きく
大人と子供以上の差がある。
しかも、昆虫は種族ごとに、筋力に大きな差があり、
場合によってはその身体能力の違いは比べようもないほどになるらしい。
だとすると、ハスだけじゃなく、一緒に旅をする仲間達と比べて
ボクは圧倒的に貧弱だ。
すまないと思いながらボクは自分の担いできた荷物をさらに軽くするため
そのいくつかをハスに手渡した。
お互いに紐でくくりなおし、背負おうとしたそのとき、
「荷物を背負わないで、逃げられるようにしておいて下さい」
ハスの緊張が伝わってきた。
しかし、周りには肉食原始昆虫の姿はない、
森の中にいるのか?
後ろから5体の新蟲が近づいてきているだけだ。
「やつら昆虫です、捕食体制に入ってます、オレたちを食うつもりです」
どういうことだ? 戸惑いながらも、その5体を見ると
その口から牙のようなものが突き出ていることに気が付いた。
たしかに昆虫であることを隠さず、
こちらに攻撃を加える準備もしているようだ。
しかし、ボク達の荷物が目的じゃないのか?
「あいつらはたぶん、オレと近い種族です、牙から毒を入れられたら終わりです
オレが時間をかせぎますから街道をひたすら走って逃げて、森の中に入ってはダメです」
「ボクも一緒に戦えば、少しでも生き残れる可能性があるんじゃないのかい?」
「人間じゃ噛まれたら終わりです、オレは噛まれても即死にはならない、
なんとか逃げることくらいは、できます。
ギリギリまで足止めします、だからその間にできるだけ遠くに逃げて
隠れてください」
「お前らの荷物には用はない」
近づいた5体のうち、1体が言った。
他の4体はだまったまま、牙を突き出して、その先端から毒のしずくを滴らせている、
そして、一定間隔をあけて横に並び、さらに近づき
こちらを取り囲もうとしている。
「ゆっくり下がって・・・オレが合図したら逃げて下さい」
ハスは小さな声でボクに指示した。
ボクはそれが聞こえたことを伝えるように、ゆっくり小さく頷いた。
「あんた達、襲うのは新蟲だけじゃないのか?」
ハスはその5体に話しかけ、注意を自分に向けさせ
ボクを逃がそうとしてくれているのだろう。
「なんでバッタじゃ、ダメなんだ?」
「人間も昆虫も新蟲もない! 獲物を狩るだけだ」
1体が答えた
「バッタじゃつまらねえ!」
別の1体が言った。
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