表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/50

元魔王は不愉快になる。

 微妙な反応のまま、その理由を二人は話してくれなかった。

 翌日――朝から教室内が騒がしい。


「ルイン! フィリアちゃんと同郷なんだろ? 紹介してくれよっ」

「あ、俺も俺も」

「ぼ、僕もお願いしたいのね」

「面倒くさい」

「「えぇ!?」」


 そんな感じでぼくは学友たちをあしらう。


「マリアロゼさまはいらっしゃらないんだろうなぁ」

「あの方はオレらのような庶民とは、別次元に生きておられる方だからな」

「おい、俺一応子爵家の三男なんですけど?」


 ぼく以外にも貴族階級の親を持つ者もいる。男爵家、子爵家の子供たちだ。

 大地の女神ローリエの大神殿で学ぶ為の入学金は、他よりも安い。

 だから下級貴族しかここには居ない。


 そんな中で、あのマリアロゼというのは侯爵家のご令嬢だ。

 住む世界が違うと言われれば、納得するしかないのだろう。


「ふんっ。聖女候補だってだけで、みんな浮かれすぎ」

「歴代聖女さまにはさ、性格の悪い女も居たって話じゃない」


 あー、それ、ぼく知ってる。

 うん。何人か性格の悪いの居たよ。

 なんか勇者を女賢者と取り合ってたのか、ぼくの前で罵り合ってたり、自分可愛さに勇者を後ろから撲殺したり。

 聖女って怖いねーって、その時は思った。


 程なくして司祭がやって来て、聖女候補三人の紹介を行うという。


 そう……三人・・だ。

 昨日「踏まれたい」とか言っていた変態をチラリと見ると、案の定、顔真っ赤で身震いしていた。


「全員静かに――今日一日、君たちと共に授業を受ける聖女候補のお三方です。それでは紹介しましょう。まずは――」


 教壇に立つ司祭がそこまで言うと、銀髪の女が司祭を塞ぐようにして前へ出た。

 この女がマリアロゼだろう。ぼくが知らない顔だから。


 長くウェーブした黒髪。そして瞳も同じく黒。

 フィリアやラフィは白い法衣を着ているのに対して、この女は真っ赤なドレスを身に纏っている。

 ぼくたち学徒もまた、白い法衣だ。女子のそれはフィリアたちのとは少しデザインが違うが、気のせいレベルのものだ。

 そんな白装束軍団の中で真っ赤なドレスとは。

 凄く浮いているが、本人は気づいていないのだろうか?


 その女は腕を組み、ぼくたちをぐるりと見渡す。


「マ、マリアロゼさま……」

「お黙りなさい。発言は私が許可を出してからですわ」

「うぐ……」


 司祭の年齢は五十半ば。それが十数歳の小娘に言いくるめられるとは。


「ふんっ。そうですわね……んふふ。噂通り、なかなか良いお顔だこと」


 マリアロゼはそう言って、ぼくをじっと見つめた。

 いや後ろか?

 振り向くと女子と目が合う。そして首を振られる。


「ルイン・アルファートですわね。デリントンから聞いていますわ」

「デリントン?」


 最近すっかり耳にしなくなった名前。それを聞かされ、ちょっと不快になる。

 ぼくを裏切った元学友……くく。くははははは。


「きゃっ!?」

「な、なんですかこの地震は!? みなさん、机の下に!!」


 おっと。魔力を駄々洩れさせてしまった。


「お、収まった?」

「な、なんだったのだいったい」


 ぼくですごめんなさい。

 

 デリントンの名を聞いて不快に思い、思わずふつふつと怒りを沸かせて地面を揺らしてしまった。

 幸いけが人は居ないようで一安心。


「ぐぅ……ちょっとルイン・アルファート!」

「なんだ?」


 教壇に掴まり揺れに耐えていたマリアロゼが声を上げる。

 何故かお怒りのようだ。


「私を助けなさいよ!」


 は? 何を言っているのだこの女は。

 そもそもぼくが不快な思いをしたのはお前のせいだろう。

 いや、そもそも何故デリントンの名前がこの女から出る?


 デリントンはこの国の有力貴族の一声で――有力貴族――

 こいつかー!


「私に従いなさいっ。そうすればあなたも司祭に抜擢してあげてよ。なんだったら高司祭にだって……。ふふ。なんたって私は、次期聖女ですもの!」

「あの、マリアロゼさま――」

「お黙りなさい! 私の聖属性レベルは4ですわ! つまり私が聖女決定したも同然!」


 マリアロゼの言葉に学友たちがざわめく。

 聖属性4……確かに凄い。クリフドー師匠ほどではないが。


 しかしぼくには信じられなかった。

 何故なら、この女からはぼくに似た性質を感じるから。


 つまり闇――


 こっそり鑑定を行うと、ぼくの読みは正しかった。

 それと同時にこの女は嘘を付いてると分かるし、同時に決して聖女になれないことも――。



********************************************

【マリアロゼ・アルカーマイン】

 種族:人間

 属性:火(1) 氷(1) 闇(2)

********************************************

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


新作の異世界転移物を投稿しております。
そちらもぜび、お読みいただけるとありがたいです。
ゴミスキル『空気清浄』で異世界浄化の旅~捨てられたけど、とてもおいしいです(意味深)~
― 新着の感想 ―
[気になる点] マリアロゼさんは黒髪なの?銀髪なの?
[一言] おお?家の力で聖女入りしたのでしょうか? 続きがとても気になります 次回も楽しみにしております
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ