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元魔王は正義の名の下に。

「おぅおぅ坊主。こんな森ん中でひとりとは、どうしたってんだ?」

「兄貴ぃ、このガキ、正真正銘の坊主・・みたいですぜ」

「おほぉ。ってことは、どっかの金持ちぼんぼんの息子か」

「いや、辺境領主の貧乏貴族の次男だが?」


 初の神聖魔法を習得してから一週間。

 週末はさすがに授業も休みなため、こっそり転送魔法で森へとやって来た。

 大神殿に来るとき通ったが、魔物の気配がしたので新しい魔法の試し打ちをしたかったのだが……。


 森を通る一本道。

 それを外れ一歩森へと分け入った所で、五人の男たちに囲まれた。


「おいおい、自分からお貴族さまだって、自己紹介しやがったぞ」

「はっはー。これだから世間知らずのお坊ちゃまは」

「俺らみたいな悪党に利用されんだぜ」

「実家と神殿と、両方で金をせびれるな」

「生け捕りか? それとも――」


 男たちがじりじりとぼくを取り囲む。

 どうやら話の流れによると、ぼくを拉致して身代金の要求をしよう――という事らしい。

 生憎ぼくの実家は貧乏だ。まぁ畑の収穫量も増えているだろうし、少しは潤って来ている事だろう。

 あぁそうだ。帰ったら苺の栽培をしてみたい。

 ポッソが言うには、品種の違う苺同士を交配させて、新しい品種を作るなんてことも出来るらしい。

 そうして糖度の高い苺が誕生すれば、それはブランドとなり、大儲けを出来る――と。


「おいっクソガキ! 人の話聞いてるか?」

「いや、苺栽培の事を考えていたから聞いていない」

「苺!? クッソ、澄ました顔しやがって!」

「おい。苺ってあれだろ? 超が付くほどの高級フルーツっていう」

「聞いたことあるぜ。ドが付くほど貧乏だった村が、苺の栽培に成功した途端、超が付くセレブ村になったってよ」


 なんと!?

 それほどまでに儲かるのか。

 くくく。これは良い事を聞いた。この者たち、悪党のようだが見逃してやろう。


「へっ。だったら坊主の実家から、大金をたんまり頂くとするか」

「それはダメだ」

「「は?」」


 は? ではない。

 苺栽培で一儲けしようと思っているのに、今家にあるお金をこ奴らに渡せば、苺用の畑の用意も出来やしない。

 苗だってきっと高価だろう。

 小銅貨一枚、人様に恵んでやれる余裕などない。


 それにだ――ゆくゆくはあの村に、ぼくがスローライフを送るための家を建てたいんだ。

 大神殿の風呂に入って思った。

 風呂は大きい方がいい!

 噂によると、肩こり腰痛冷え性、さまざまな効能のある温泉なるものがあるんだとか。

 ぜひ温泉にしたい!

 それらを実現するためには、それなりのお金を要するとポッソが教えてくれた。


「つまり貴様らはぼくの考えた最強のスローライフを邪魔する輩――と考えていいのか?」

「「は?」」

「は? ではない。ぼくの邪魔をしようとしているのかと聞いている」


 男らは顔を見合わせ、それから笑い始めた。


「ぎゃははははは。何をしようとしてんのか知らねーが」

「お前はここで俺たちに捕まるんだよ!」

「実家と神殿から金を受け取ったら、その後は奴隷商人に売り捌く。綺麗な顔してっからな、高く売れるだろう」

「ひーはー! つまり俺たちは坊主の邪魔をしてるってことだな。ははははは――は?」

「了解した。では貴様らはぼくの邪魔をする輩として――"正義の鉄槌"を下す」


 新しく習得した魔法がここで試せる!

 相手は人間だが、さて、効果はあるだろうか?


 ぼくの右手には光り輝く鉄槌が握られている。もちろん魔法だ。物理武器ではない。

 聖なる拳に比べて、練り込む魔力の量も多い。まぁ誤差程度ではあるが。

 一番の特徴は拳よりもリーチが長い事。

 今手にしているのは柄の長さ五十センチ程度だが、魔力を流せば――


「ひっ!? あ、あの鉄槌、伸びたぞ!?」

「な、なんてデカさだ……それにどこから出した!?」


 うん。今回は上手く短くまとめられたな。だいたい二メートルか。

 初めての時は加減し忘れ、地下墓地のずーっと奥まで伸びてしまった。

 クリフドー師匠の話だと、あそこは五百メートルほどあるとかなんとか。


 ま、それはともかくとして――


「地獄に落ちろ」

「「へ?」」


 振りかざした聖なる鉄槌を、奴らの頭上へと叩き落とした。

 ぼくの鉄槌が大きく(・・・)なるのは、何も柄の部分だけではない。

 叩きつけるその部分もまた、巨大化させることができる。

 

 五人全員を叩きつけられるサイズにまで膨らんだ鉄槌は、予想通りの結果を生み出してくれた。


 光に触れた瞬間、奴らは地面にひれ伏し、そしてめり込んだ。


「ぐえっ」「げごぉっ」「ぎひっ」「んがっ」「へぶっ」


 それぞれ短い悲鳴を上げ、そのままピクリとも動かなくなった。


「ふむ。人相手にも有効か。ただ一発使い切り魔法だからなぁ。よぉーし、じゃあ次は『聖光波動シャイニング・バースト』試すぞー!」


 あと師匠から教えてもらった『聖なる加護』という、身体強化スキルも使ってみよう!

 それからそれから――


『ギャオオォォォォンッ』

『グルオオォォォォ……』

『ギッ――」


 やはり敵を倒すなら、一撃に限る!


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新作の異世界転移物を投稿しております。
そちらもぜび、お読みいただけるとありがたいです。
ゴミスキル『空気清浄』で異世界浄化の旅~捨てられたけど、とてもおいしいです(意味深)~
― 新着の感想 ―
[一言] よりにもよって最悪な方にかかわりましたね 因果応報観念してください 苺美味しいですよね 子供の頃は練乳か砂糖をかけたものが好きでした 次回も楽しみにしております
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