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少し短めです。
「えーと成瀬君だったかね。教室内で不純異性……同性交遊をしていたとあるのだが、そこのところどうなのかね。あと両頬が腫れてるけど大丈夫かい?」
「はい、頬の方は勲章だと思ってるので大丈夫です。」
「そ、そうかね……。」
職員室かと思ったら校長室だったよ。
いきなり学校のトップと対面なんて僕の学生生活はどうなってるんだ?
ロードし直そう。
イベントCGならもう取れたでしょ。
「校長。まどろっこしいのは抜きにして早急に罰を与えてください。学生には一番それが堪えます。」
「い、いやさすがに入学初日にそれは可哀想ですよ、天草先生。」
「で、ですが、教室であんな破廉恥なことを!」
「その破廉恥なこととは一体どういうことかね。具体的に?」
「くっ。」
お、リアルくっころの前段を頂きましたよ。
そう考えるとロードはここで行うべきだな。
それじゃ、私はこれで。ありがとうございましたー。
「何か弁明はあるかね、成瀬君。」
「少し行き過ぎたスキンシップだったかもしれませんが、あれは昔からのノリでして。」
「あ、あれがノリだと!? まるで新婚ホヤホヤの夫婦のようであったぞ!!」
過剰に反応している女教師、天草先生だっけか。
最初は先生としての責務がそうさせるのかと思ったけど、どうやら違うみたいだ。
このあからさまな拒否反応は彼女自身が嫌っている節がある。
「それに同性であれば尚更過度なスキンシップは有り得ます。それを咎めるのは一種の横暴ではないかと。」
「それが破廉恥だというのだ!」
「先ほどから破廉恥と連呼されていますが、破廉恥の定義とは?基準はあるのですか?手を繋ぐのは?キスは?先生はどこまでなら許容するのですか?」
「ぐっ、それは。て、手を繋ぐくらいなら。」
「それに天草先生は同性交遊を尚更ダメだと言われましたが、それは性差別では?LGBTに偏見を持つのは勝手ですが、それを声に出して排斥しようとするのは学校の職員としては如何なものかと。」
「ぐぐぐっ。」
僕の論破という弾丸が天草先生を襲う。
反射的に言った言葉の揚げ足を取っただけだから論破とは言えないけどね。
「それにこの頬は天草先生から受けたものだと言えば、私だけに罰を与えれば学校側にも不信感を募らせる結果になるかと思われますが。」
「そ、それは……確かなのかね、天草先生?」
「そ、それは、その……。」
「一つ、良い提案があります。」
僕はできるだけ満面の笑みを作って言った。
「何もなかった。それで良いじゃありませんか?」
二人は黙って頷くしかなかった。