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入学式はつつがなく終わった。
あのイケメン美少女は生徒会長だったらしい。
名前は龍崎 薫というようだ。
初見だとイケメンにしか見えない。
僕は彼が彼女だと知っているので、下卑た笑みで見守ってましたよ、ええ。
「しかし、俺達が同じクラスになるなんてな。」
「何かしらの陰謀があるのやもしれません。」
「おい、この淫棒をどう思う?」
「す、すごく大きいです…///」
バカ二人はほっといてクラスを見回す。
まだクラスに来て間もないが、既にグループが出来つつある。
誠に遺憾ではあるが、この二人以外に話す相手がいない。
しかも、このバカ達は無駄に外見は良いので距離を置かれている。
中身を知っても距離は置かれるだろうけど。
「時間だ。着席しろ。」
不愛想に言い放たれた言葉に生徒達は従う。
キャリアウーマンみたいなポニーテールの女教師。
美人なのだが眼光が鋭く、今にも食いかかってきそうだ。
僕は顔を一瞥した後はタイツを凝視していたのでプレッシャーからは逃れた。
「アナルだな。」
「アナルですね。」
バカ二人は何か通じ合っている。
スカトロとSMの共通項らしい。
僕は落とし甲斐はありそうだけど、極力は耐えて、睨み返してくる展開が胸熱です。
安易に薬を使うのはダメだと思います。
あっ、でも実際はビタミン剤だぜ! みたいな展開ならよろし。
「さっそく出欠を取るぞ。ん? 一つ席が空いてるな。」
女教師の目線に視線を向けると確かに席が一つ空いている。
入学初日に遅刻とかやるな。
今日のMVPはお前だ。
「あきー!」
ガラッと教室の扉が開いた。
遅刻なら後ろの扉からそっと入るだろ常考。
ほら見ろ、女教師も驚いているじゃないか。
ん? 今、僕の名前を叫んでなかったか?
前の扉から足を踏み入れてきたのは美少女だった。
見た目はかなり幼いがそこは重要じゃないし、僕はロリコンじゃない。
だが、その美少女の姿を見た瞬間に全てを察してしまった。
「あーき❤」
いつの間にか僕に跨っている美少女。
そして、まるで愛しい者を抱き締めるように僕を抱き締める。
「あーん❤」
僕の左の耳たぶに甘噛みしてきた。
はむはむと感触を楽しんでいるところ悪いが、ここは教室で、衆人環視の中でやることじゃない。
こういうのはバレるかバレないかの瀬戸際を楽しむものだろうが。
僕は美少女の両脇に手を入れ、引き剥がす。
名残惜しそうに離れた美少女の口からいやらしい橋ができる。
僕はいつもやっていたように美少女のおでこと自分のおでこを合わせる。
「ダメだよ。みんなが見てる。」
「は、はひ❤」
御稚児 星太
中学の頃につるんでいた三魔将(黒歴史)の一人。
ロリコンが喚起する見た目をしているが、正真正銘の男である。
いや、男の娘と言った方が良いのかな?
後ろの処女はあきに取っておくね❤と公言したせいで僕の中学生時代は終わった。
女子の制服に身を包んでいるのはいつものことなので良いとして。
「星太、どうしてお前がここにいる?」
「あきがいるところにボクはいるんだよ❤」
あれ、会話が成立してないぞ。
もしかしてバカ二人よりも厄介なんじゃないか。
「とりあえず自分の席に着け。」
「はーい❤」
とてとてと席に着く星太、悔しいが可愛い。
ほんと、なんで男なんだろ。
「すいません、先生。続けてください。」
「……。」
「先生?」
「おい、秋。気を失ってるみたいだぞ。」
「弁慶の立往生ですか。意味は違いますが。」
「へんじがない。ただのしかばねようだ。が適切ですよー。」
バカ三人はほっといて、先生に駆け寄る。
顔の前で手を振ってみるが反応はない。
猫騙し、これも反応がない。
肩を揺すってみる、これもダメだ。
僕は女教師の頬を軽く叩く。
すると、目の焦点が合いだした。
「先生、良かった続きを(ry」
「離れろぉ!」
「ごぼぉっ!」
生徒会長から叩かれた方とは逆の頬に紅葉を貰う。
ありがとうございます!
じゃなくて、僕がクラスで目立ってるってばよ!!
鞭が「良いスナップ加減、彼女には鞭が似合う。」と批評してる、てめぇ!
糞太が「アナルだ、アナルを攻めろ。」とセコンドよろしく言ってくる。
この状況で一体どうしろと!?
「教室のど真ん中でふ、不純異性交遊とは良い度胸だ。」
「いや、星太は男だから異性では。」
「それなら尚いかんわぁ!」
確かにそれが普通の反応だ。
僕はイレギュラーに慣れ過ぎていたようだ。
「ボクとあきはど・う・いの上だから問題ないですよー。」
「星太……。」
星太が助け舟を。
でも、その船は泥船だぞ。星太。
「こ、こんな状況じゃ授業などできん! 自習だ! 自習していろ!」
女教師が叫んで教室を後にする。
何にせよ、危機は去った!
やったぜ!
ガラッと扉が開く。
「成瀬はあとで職員室に来い。」
で、ですよねー。