16?
?は彼女達。
陽の光が落ち、暗くなった教室。
しかし、元から暗幕で覆っているため、少女達は気付かない。
「あぅ、お腹すきました。」
「某も空腹でござるが、武士は食わねど高楊枝と言うでござる。」
「武士か忍者かはっきりしなさいよ。」
そう、三人のふ女子、光と忍と楓である。
光の介抱の末、二人は息を吹き返したのだ。
「あなたたちの話を聞く為に介抱してあげたんだから、しっかりと恩を返しなさいよ。」
「御恩と奉公。やはり歴史物から腐るものは多いでござるな。」
「あぁ、なんとなくわかりますぅ。森蘭丸とか上杉謙信とかですよねぇ。」
「確かに入口としては入りやすいわね。歴史が衆道を容認しているということかしら。」
彼女達はただの衆道好きなだけであり、歴女というわけではない。
だが、一般的に見ると大差ないと思われるのが現状である。
「っと、そんなことはどうでもよかったわ、楓。」
「はいですぅ!」
「返事なんてどうでもいいわ。成瀬君と生徒会長の蜜月について話しなさい。」
「既に既婚者扱いでござるか……いや、だがそれも納得せざるを得ないでござる。」
「では、私が見た全てを教えますですぅ!」
こほん、と可愛らしく息を整える。
だが、残念。
彼女の脳は足が早い。
「それは二人だけの秘密の部屋。密室の中でならと安心し油断したのでしょう。ですが、それは私という異分子がそれを壊す。」
「なに? この語り口調。」
「楓嬢は夢女子でもござったな。」
「扉を開けるとそこには片膝をテーブルに乗せ、顎クイをしている成瀬君の姿。そして、それを物欲しそうな顔で受け止めようとする会長の姿がありました。本来であれば、それは許されざる行為。他人の逢瀬の邪魔など許されはしない。だが、それも全ては後世に残す為に許された特権。そう、私が邪魔をしなければ、その先があったのかもしれない。でも、その光景を見なければ、全てを理解することは適わない。だからこそ、私は許されるべきなのです!」
「自己弁明乙。」
「一理ありそうでござるが、着崩れを直す会長の方が某は好みでござる。」
楓がしゅんと項垂れる。
彼女自身、もっと待つべきだったと後悔しているのだ。
「成瀬君の右手が会長の頬を撫で、成瀬君の親指が会長の下唇に軽く触れていました。」
「事情が変わったでござる。」
「流れ変わったな。やったぜ。」
「しかし、それを見続けることは出来ません。二人は私の存在に気付いてしまったのですから。」
「ぐっ、某なら気配を消せたでござるが。」
「おい空気そこ代われ。」
「私は動揺のあまり副会長を呼んでしまいました。」
「悪手ね。」
「家族会議ものでござるな。」
南無南無と手を合わせる二人。
「私が副会長を呼んでいる一瞬の隙に、成瀬君は会長のモノを咥えていました。」
「ガタッ。」
「納まるところに納まったということでござるな。」
合掌する二人。
「悶えながら成瀬君の頭を両手で拒む会長。生娘の如きでした。」
「やはり成瀬×会長が至高。」
「そこに加わる御稚児殿。夢がひろがりんぐでござる。」
未来は明るい。
「これが私が見た全てですぅ。」
「ありがとう。そして、ありがとう。」
「して、これからの展望は如何するでござる?」
三人だけでは四六時中の監視は不可能である。
クラスメイトであるため、教室内で事が起これば目視可能である。
だが、男子更衣室や男子トイレまではさすがにカバーしきれない。
「男子の協力者が必要不可欠ね。」
「しかし、拙者達は喪女でござる。」
「ハードルが高過ぎですぅ。」
ならば物量に任せるしかない。
「ひとまず同志達で連盟を作るわ。」
「現実的なところから攻めるのが常道。」
「そのためには一体何をするですぅ?」
腐を普及する。
そんなものは太古の昔から決まっている。
「本を作るわよ。絵は私が書くわ。」
「拙者は販売ルートの確保でござるな。裏ルートで流通させるでござる。」
「えっ、わっ、私は……。」
「ふっ、知れたことを。」
「夢女子は夢を広げるだけでござる。」
光の眼鏡がキラリと光る。
「楓は話を書くのよ! 普段書いてるでしょ。」
「若干ポエミーでも受けるでござろう。」
「ふぇええええええ! ど、ど、どうしてそれを!!??」
「それをネットに投稿していることも。シェアドリームと呼ばれていることも承知しているでござる。」
「プリ○ュアか!」
「あぅあぅ。」
ぱくぱくと口を開き、虚空を見つめる楓。
だが、しばらくして目の焦点が合うと彼女は不敵な笑みを浮かべた。
「ふ、ふふふ、ふふふふふ……ヤッテヤルデス。」
「どうやら、心は決まったようね。」
「キマッたようでござるな。」
彼女達はまだ知らない。
これが後に伝説となるサークルの誕生秘話であることを。
勿論、火付け役となった男子生徒も預かり知らないことであった。
「君たち、下校時間はとっくに過ぎるよ。」
騒ぎを聞きつけた用務員さんに強制的に帰らせられてしまった。




