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「ここが文化系研究会が連なる校舎か!」


説明台詞から失礼します、秋です。

こういう台詞を一人で言ってるのを小説とかで良く見るけど実際にやってみるとただの不審者だな。

……ごめんなさい、周りの目が怖くて本当は言ってないのです。

心の「」で喋っとけ。

ちょっと名台詞っぽくない?


「えっとパンフにはっと……こんなにあるのかよ。」


研究会って万年部室が枯渇しているイメージだが、マンモス校だとそうもいかない。

きっと掃き溜めのような研究会もたくさんあるのだろう。

この木工ボンド部って研究会はなんだ?

全国大会もあるほど盛んな競技なんだなぁ……チェンジで。


「囲碁サッカー部にチェスボクシング部……これはスポーツじゃないのか。」


線引きが曖昧過ぎる。

全部回っていたら一日が終わってしまうな。

どうせ幽霊部員になるのだから、適当に入っても問題はないはず。


「おっ、声が聞こえるな。何の話をしてるんだ……。」


『まじ勃起もんだったでぇ。』

『光ちゃん、よだれよだれ。』

『じゅるり。すまない、取り乱した。』

『いや、仕方ないでござる。某も下半身のダムが決壊したでござる。替えのふんどしがなければ即死だったでござる。』

『あわあわ、ヘルメットがなければキスしていた名場面をそんな例えに。』


あ、うん。

これはダメなやつだわ。

彼女たちもそれを男子に聞かせたかったわけじゃない。

不幸な事故だったのだ。

僕は開いてないはずの扉をそっと閉じた。


「ここは無難に小説サークルにしておこう。」


今やっているバイトと近いところもあるからね。

もしかしたら研究会の時間を有効に使えるかもしれない。

そんな甘い期待が僕にもありましたとさ。


「声は……聞こえないな。」


思いの外闇が深そうなので慎重になっている。

扉を開けたら人間が合体している可能性もある。

そんなのを見せられてもこちらとしても反応に困ってしまうからな。

ってか鍵ぐらい閉めとけよ。

とツッコみかねない。

どっちがツッコみかは置いといて。


「頼もう~。」


道場破りよろしく扉を開けた。

そこには一人の少女が座っていた。

本を片手に物憂げな表情で。

眼鏡越しに見える切れ長な瞳はとても綺麗だった。

あっ、目じゃなくて瞳にしたところがポイントです。


「あの~入部希望なんですが。」


組んでいたおみ足を下ろす。

タイツのデニール数が高い。

女性は冷え性が多いのだ。


「座りなさい。」

「あっ、はい。」


黒髪ロングのメガネの文学美少女キタコレ。

と歓喜するが外には出さない。

僕は中の方が好きだ。


「入部希望と言ったわね。生憎と部員は募集してませんの。」

「あっ、そうなんですね。それじゃあ失礼します。」


慌てて出て行こうとする。


「ちょ、ちょっと待ってよ。どうせ私目当てで来たのでしょう?それなのにそんなに淡泊でいいの!?」

「えっ、別に僕はどの研究会でも良いので。」

「はぁ、これが最近の若者なのね。女なら誰でも良いと言う。」


ぶつくさと黒少女は言う。

若者と言っても一、二歳しか変わらんだろうに。


「美少女には慣れているので、先輩?に拘らなくても良いんです。」

「最低な男を見たわ。まだ下卑た笑みで見られる方が自然よ。そうか、あいつらが普通だったのだね。」


得心がいったような顔の黒少女。

僕を差し置いて普通だなんて。

普通代表としては面白くないぞ、ぷんぷん。


「それでこの研究会は部員を募集してるんですか?あと僕はただ名前が気になって来ただけですから。」

「小説に興味があるのね。なるほど、ではあなたは読む専? 書く専?」


新たな造語で質問される。

ここで書く専ですと言ったら『じゃあ、書いてみて。』と言われるのが関の山だ。

僕は先を読める人間なのさ。


「読む専ですね。」

「そう……しかし、読む専であっても入部テストで小説を書いて貰っていますの。」

「Oh…。」


不自由な二択ってやつですね。

それでも僕は書かない方を選ぶ。


「じゃあ結構です。」

「ま、待って。確かに初めては不安で怖いものかもしれない。でもそれで逃げるのは違うでしょ?困難に立ち向かうのがお約束ってやつじゃないの?!」

「いやぁ、別に幽霊部員になれればそれでいいので。」

「志が低過ぎよ。男なら美少女との濃密な時間の為に頑張るべきだわ。」

「自分で美少女とか言ってますよ、この娘。」


確かに美少女ですよ。

でもそれは僕が言うのが普通だ。

あっ、だから僕は普通じゃないのか。納得。


「濃密な時間について伺ってもよろしいですか。そっちは気になります。」

「そんな私気になります!って感じで言われても。というか、それは私に似合う台詞でしょ。あと忘れていたように下卑た笑みを作らないで!」


メガネを外せば確かに。

いや、目が切れ長だし可愛いってよりは綺麗系だな。

カチューシャを付けた先輩の方が似合うはずだ。

そうすれば甘んじて気だるげな主人公になろう。


「では僕はバイトがあるので。」

「待って!」


僕は止まらない。


「お願い。私を一人にしないで。」


僕は止まれない。

黒少女に向かって。

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