ゆきあそび
Adventerというページで行われている、「聖夜にきっと雪が降る」という企画の為に書きました。
一面に広がる銀世界。
自然のキャンバスを無邪気に走り回る小さな男の子がいた。
小豆色の半纏に紺のもんぺを身につけ、可愛いらしい赤の長靴を履いて、積もった雪をものともせずに走り続けている。
「おにいちゃん!はやくはやく!」
男の子が、大きな声で叫ぶ。男の子が見つめる先には、コートからブーツに至るまで全てが黒い青年がいた。
「はいはい」
男の子に呼ばれ、青年は雪原に足を踏み入れた。
程よく固まった雪を踏む度、サクサクと心地良い感触がブーツ越しに感じられる。
やがて男の子に追いつくと、
「ゆきがっせんしよ!」
そう言って、青年に向かって雪玉を投げてきた。
雪玉が、青年の右胸あたりに直撃した。
青年も負けじと、男の子に優しく雪玉を投げる。
やがて雪合戦に飽きたらしく、
「つぎはゆきだるま! どっちがおおきくつくれるかきょうそうね!」
と言うと、男の子はその場で雪を丸め始め、転がしながら走り出した。
青年もそれに続き、雪だるまを作り始めた。
それから十分後、それぞれ雪だるまが完成した。
「ふっふーん、ぼくのほうがおおきいね!」
結果は青年の負け。ちなみに青年が作ったのは、手のひらサイズの雪だるま。
「でも、おにいちゃんがつくったゆきだるまもちっちゃくてかわいい〜」
青年が作った雪だるまを両手に乗せ、男の子は優しい笑みを浮かべた。
それから男の子と青年は日が暮れる直前まで遊んだ。
青年は、少年の頭を優しく撫でた。
「じゃあ、そろそろ」
「うん」
男の子は寂しげな顔で、青年を見上げた。
「あっちでもゆきあそびできるかな?」
「出来るさ。きっとね」
その言葉を最後に青年は、男の子から少し距離を取った。
そして唱える。
「我、神に仕え、弱き魂を送る者。契約に従い、彼の魂を送る」
青年がそう口にした瞬間、男の子の足元に六芒星を象った魔法陣が浮かび上がり、みるみる身体が透き通っていく。
「おにいちゃん」
「なに?」
「また、あそんでね」
その言葉を最後に、男の子はこの世から消えた。
「もちろん。また会えたらね」
青年は涙を一筋流し、雪原を後にする。
青年の悲しみを埋めるように、雪が降り出した。