表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ゆきあそび

作者: さくら双

Adventerというページで行われている、「聖夜にきっと雪が降る」という企画の為に書きました。


 一面に広がる銀世界。

 自然のキャンバスを無邪気に走り回る小さな男の子がいた。

 小豆色の半纏に紺のもんぺを身につけ、可愛いらしい赤の長靴を履いて、積もった雪をものともせずに走り続けている。

「おにいちゃん!はやくはやく!」

 男の子が、大きな声で叫ぶ。男の子が見つめる先には、コートからブーツに至るまで全てが黒い青年がいた。

「はいはい」

 男の子に呼ばれ、青年は雪原に足を踏み入れた。

 程よく固まった雪を踏む度、サクサクと心地良い感触がブーツ越しに感じられる。

 やがて男の子に追いつくと、

「ゆきがっせんしよ!」

 そう言って、青年に向かって雪玉を投げてきた。

  雪玉が、青年の右胸あたりに直撃した。

 青年も負けじと、男の子に優しく雪玉を投げる。

 やがて雪合戦に飽きたらしく、

「つぎはゆきだるま! どっちがおおきくつくれるかきょうそうね!」

 と言うと、男の子はその場で雪を丸め始め、転がしながら走り出した。

  青年もそれに続き、雪だるまを作り始めた。

 それから十分後、それぞれ雪だるまが完成した。

「ふっふーん、ぼくのほうがおおきいね!」

 結果は青年の負け。ちなみに青年が作ったのは、手のひらサイズの雪だるま。

「でも、おにいちゃんがつくったゆきだるまもちっちゃくてかわいい〜」

 青年が作った雪だるまを両手に乗せ、男の子は優しい笑みを浮かべた。

 それから男の子と青年は日が暮れる直前まで遊んだ。

  青年は、少年の頭を優しく撫でた。

「じゃあ、そろそろ」

「うん」

 男の子は寂しげな顔で、青年を見上げた。

「あっちでもゆきあそびできるかな?」

「出来るさ。きっとね」

 その言葉を最後に青年は、男の子から少し距離を取った。

 そして唱える。

「我、神に仕え、弱き魂を送る者。契約に従い、彼の魂を送る」

 青年がそう口にした瞬間、男の子の足元に六芒星を象った魔法陣が浮かび上がり、みるみる身体が透き通っていく。

「おにいちゃん」

「なに?」

「また、あそんでね」

 その言葉を最後に、男の子はこの世から消えた。

「もちろん。また会えたらね」

 青年は涙を一筋流し、雪原を後にする。

 青年の悲しみを埋めるように、雪が降り出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ