第三十八話 専属受付嬢
本日は二話更新です。
その一話目です。
「ミーニアよ。ここに座らされている理由はわかるな?」
「はい……」
ダラスの咎める言葉に、ミーニアはしょげた顔で答える。
ミーニアの前に座るダラスは真剣な表情でミーニアを見ていた。その格好は二本の三つ編みのカツラに、筋肉によって伸び切った受付嬢の制服を着ている。奇天烈な姿だが、ダラスが優秀なギルド長であることは、その仕事ぶりから数日一緒にいたミーニアでもわかった。元ギルド長とは雲泥の差である。
そのダラスがこのように咎めるのは、ミーニアの最近の態度だろう。
ダラスは顎に手を置き、考える仕草をして、
「……何か悩み事でもあるのか?」
「…………」
ミーニアは下を向き、何も言えなかった。その悩みが、『好きな人が街を出るから、自分はどうしよう』というものだったからだ。上司に相談する内容ではない。
ダラスはミーニアを射抜くような視線を送り、
「男だな?」
「えっ!?」
ダラスに言い当てられたミーニアは、驚愕する。どうしてわかったのだろう。
ミーニアの反応を見たダラスは、自分の話したことが正解だったことを理解したのか、納得した様子だった。
誰にも好きな男性がいることを言っていないのに、なぜ赴任して間もないダラスが知っているのかミーニアには不思議である。
ただ、ダラスに咎められたことでミーニアは決心した。
おそらく、このような出来事はずっと続くだろう。この想いがなくならない限り、リラクがいなくなったとしたら永遠に。
ならば、自分の気持ちに嘘をついてはいけない。
顔を上げたミーニアは意志の籠った瞳で、ギルド長を見る。
「あの、ギルド長。わたし、受付嬢辞めますっ!」
ダラスは眉を上げた。
「理由は……、聞くまでもないな」
「はい!」
ダラスはミーニアの瞳をじっと見つめた。無言の時間が続き、フッと笑った。
「だが断る!」
「えぇっ!?」
まさか断られるとは思わず、驚く。まさかハンターギルドもブラックなのではと疑ってしまう。
驚いているミーニアに、ダラスは続けた。
「だが、お前にもうひとつの選択肢をやろう」
ダラスは一枚の用紙を摘まみ上げ、テーブルの上に置く。
ミーニアは用紙を見て、首を傾げた。
「……専属受付嬢?」
「新しくできた制度だ」
ミーニアは用紙の内容を読み進めた。専属受付嬢とはハンターと共に行動する受付嬢のことで、ハンターが街を移動したら受付嬢も一緒に異動する制度らしい。
「どうしてこんな制度が……?」
ミーニアにとっては渡りに船であるが、あまりに都合がよすぎる。
ダラスは渋い顔をした。
「お前のように辞めるものが多いからだ」
「あはは……、そういうことですか……」
と、苦笑いする。ミーニアのようなケースは特別ではないようだ。確かによくある話かもしれない。ハンターを好きになった受付嬢がついていくというのは。
そういえば、ちょっと前にハンターと結婚して辞めた同僚がいたっけ……。
「で? どうする?」
ダラスの問いに、ミーニアは満面の笑みで答えた。返事などひとつしかない。
「リラクの専属受付嬢になりたいです! お願いします!」
ミーニアの心は羽のように軽かった。
お読み頂きありがとうございます。
ダラスのキャラクターで長話は変だと思って、一度書き直しました……。
次が最終回です!




