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第三十四話 カロウセ衛兵隊討ち入り

ゴードンが山賊の親玉にしか見えない件について。

「野郎どもッ! 準備はできてるなッ!?」


「「「オウッ!」」」


 カロウセ西の森の中、ゴードンの激に衛兵達が大声を響かせる。


「ところで、あの騎士様はどこ行った?」


 ゴードンは辺りを見渡す。が、リラクの姿はどこにもない。朝、衛兵の詰め所を出発する時にはいたはずだ。


「リラクさんなら先程、別行動すると言ってどこかへ行きましたよ」


 カイルがゴードンの問いに答える。

 ゴードンは顰め面を作り、


「勝手なことをしおって……。作戦行動中だぞ……」


 売人からアジトの場所を聞き出したゴードン達は、リラクと一緒にアジトである洞窟の前まで来た。衛兵全員は剣や槍で武装しており、いつでも乗り込める状態だ。

 カイルが苦笑いし、


「まぁ、リラクさんは協力者ですし、今回に限って言ったら、僕らが彼をサポートする立場ですからね。何も文句は言えません」


「……そうだな。なら、こちらも勝手にやらせてもらおうか。——オイッ! 野郎ども行くぞッ! 俺についてこいッ!」


 ゴードンの号令に従い、衛兵達は鬨の声をあげてアジトへ突撃していく。重装備した数十人の衛兵隊達が走り出すことで、大きな地響きが鳴った。

 その突撃に最初に気づいたのはアジトである洞窟前に立っていた見張りである。


 「……地震か?」


彼は小さく呟いた。が、目の前から現れた衛兵達を見て、地響きの意味を理解したのか、大きく目を見張る。


「お、おいッ! 敵襲だッ! 街の衛兵達が攻め込んできたぞッ!」


 洞窟にいるだろう仲間に向かって声を張り上げ、剣を抜く。

 ——だが、


「邪魔だッ!」


 ゴードンの一刀により、見張りの男は一瞬で物言わぬ死体になった。


「野郎どもッ! 反抗する奴らは全員殺せッ! 降参した奴らは捕縛だッ! 迷ったら——殺せッ!」


「「「オウッ!」」」


 衛兵達は洞窟に駆け込み、刃向かう犯罪者を斬り殺し、泣いて降参する男を捕縛していった。

 ゴードンが犯罪者を袈裟斬りにした後カイルを睨みつけ、


「オイッ! カイルッ! 親玉は見つかったかッ!?」


「いいえ、まだです!」


「チッ! 逃げたか……。 オイッ! 野郎どもッ! 親玉を見つけ出せッ! 奴を絶対に野放しにするなッ!」


 ゴードンを含む衛兵達は、次々に斬り殺し、捕縛しながら、アジト内を捜索を続けた。




 ◇




 衛兵達がアジトに乗り込んできたのを知った快楽草の元締めであり、元ホワイトファングのリーダーであるホリックは、快楽草を栽培する賊のリーダーの男と一緒にアジトを抜け出していた。


「くそッ! あいつ……しくじりやがったなッ!」


 ホリックはここにはいない売人の男に対して悪態をつき、カロウセの森を駆ける。アジトの場所を知るものは少ない。知っている者でアジトの外で活動しているのは、売人の男だけだ。

 売人の男は、ホワイトファングを結成した初期からいた幹部であり、忠実な部下だ。元ハンターである彼が捕まるとは思ってもいなかった。


「まさか、アジトの場所まで吐くとはな……。おそらく拷問を受けただろうが、簡単に場所を教えるとは情けない……」


 ホリックは十分アジトから離れたと判断し、足を止め、息を整える。周囲を確認し、追いかけている人間がいないことを知り、安堵した。

 賊のリーダーも足を止め、同じように小休止している。


「まあいい……。また最初からやり直せばいい話だ」


 賊のリーダーはホリックの話を聞き、頷く。


「そうだな。今まで何度もやったんだ。今度は簡単に栽培できるはずだ」


「ああ、それだけじゃない。今度はこの薬を国に売って大儲けだ。もしかしたら、貴族も夢ではないぞ?」


 ホリックは紫色の液体が入った小瓶を賊のリーダーに見せて、ニヤリと笑った。


「俺達が貴族? ははっ、そりゃあいいな」


 賊のリーダーも笑い声をあげる。

 ホリックは小瓶を懐にしまい、


「では、早く次のアジトを見つけようか。カロウセで少し騒ぎすぎた。場所を変えよう。他国に渡るというのもいいな」


 ホリックは再び走り始めようとするが、賊のリーダーが全く動こうする気配がないことにイライラし始める。彼は賊のリーダーの方へ振り向き、


「おいもう疲れたのか? いくら何でも早すぎない——おい、お前の後ろにいる奴は誰だ?」


 ホリックの視線の先には、賊のリーダーの肩に手を置く、男がいた。

 賊のリーダーは怯えた顔で声を震わせ、


「なあ……? 俺の後ろに誰かいるのか? 何か身体の感覚なくってよ……。しかも動かねぇんだ……。どうなってるんだ?」


 ホリックは警戒心を高め、賊のリーダーの背後にいる男を注視する。


「お前……、さっきまでいなかったはずだ……。いつの間に……」


 男は笑みを浮かべ、


「師匠の婆さんがな。人使いが荒いやつでね。何でもやらせようとするんだよ。その時に覚えたんだよ。まさか、こんなところで役に立つとは思わなかったけど」


「お前は……何者だッ!?」


 黒い外套を纏い、黒い皮手袋をはめた黒髪の男は不敵な笑みを浮かべた。


「ただの回復魔術師だよ」

お読み頂きありがとうございます。

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