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第三十三話 二人は今夜ベッドの中で…

少し読みやすいように空白を足してみました。

どっちのほうがいいですかね?


さあ、二回目のベッドシーンです。

 月明かりが差す部屋の中、リラクの驚きの声を聞いたリスティはベットからスッと立ち上がった。潤む瞳でリラクを見て、抱き着く。

 リラクが対応に困っていると、リスティが弱々しい声で、


「今夜だけでいいの……」


「えっ?」


「今夜だけ……、一緒にいてほしいの……」


 リスティの上目遣いで言った言葉に、リラクはドギマギさせる。が、彼女の『今夜だけ』という言葉の真意を理解し、理性を失わなかった。

 リラクはリスティを気遣うように、


「俺でいいのか? 男は怖くないのか?」


 リスティを襲ったカーターによる暴挙は、リスティの心に対して決して小さい傷ではなかったはずだ。トラウマになり、男が嫌いになってもおかしくない。

 リスティは首を横に振った。


「リラクがいいの。リラクでないとダメなの」


「俺のせいで、お前は——」


「——リラクのせいではないわ。確かに責任がゼロではないかもしれない。でも、わたしはリラクを恨まない。だって……、リラクが助けてくれたんだもの」


 リラクの中にある心の重しが少し軽くなった気がした。リスティから伝わる肌の温もりが、さらにリラクの心を落ち着かせる。


 これではどちらが慰められているかわからないな……。


 と、心の中で自嘲した。


「なぁ、リスティ? もし、リスティが良かったら、その嫌な記憶を魔術で消そうか。ただ、調整が難しくてな。数日分の記憶が全部なくなるかもしれないけど……。どうする?」


 リスティがリラクをより強く抱きしめた。


「いらない……。だってそれって、リラクに助けられた記憶も全部なくなるってことだよね? あとそれまでの楽しい記憶もなくなるのは嫌だよ……」


「……そっか」


 リラクは優しく微笑みかけリスティを抱きしめた。

 しばらくの間、二人は抱きしめ合い、無言で見つめ合う。

 そして、二人はベッドに身体を沈めた。




 ◇




「あーあ、先を越されちゃったなあ……」


 暗い部屋の中、自分のベッドに寝転がり、ミーニアは隣の空いているベッドを眺めた。いつもはリスティが寝ている。が、今日はいない。今頃はリラクのベッドの中だろう。

 先に大人の階段を昇っているだろうリスティを思い浮かべる。

 リスティが「リラクと一緒に寝たい」と言ったのは、小鳩亭に戻ってきてからしばらくした後だった。ミーニアが不安そうにしているリスティを慰めている時に、マリアナが発した一言が事の始まりだった。


「そういう時は、好きな男と一緒に寝たら一発よ」


 そこからマリアナは、リスティに「好きな男はいないのかい?」と聞き、リスティは「いない」と返事した。が、「大切に想っている人はいる」と言って、名前を挙げたのがリラクだった。

 ミーニアはその話を聞いて、やっぱりと思っていたこともあり、驚きはしなかった。

 マリアナもニヤリと笑うだけで、驚いた様子もない。感情が顔に出やすいリスティはわかりやすい。リラクと話しているリスティの顔を見たら、女なら誰でも気づく。リラク本人は気づいていないのが、ミーニアにとっては幸いだった。

 だが、今夜の出来事で鈍感なリラクでも気づくだろう。

 ミーニアはため息をついた。


「今頃、二人は何をしているんだろうなあ」


 一人呟き、ベッドの上でのリスティとリラクの睦愛を想像し、顔を熱くした。

 ミーニアも年頃の女である。そういうことに興味もあったし、本も読んだこともある。経験のある友達に話も聞いて、自分ならどうするのだろうと夢想することもあった。相手は意中の男であることは言うまでもない。


「何か興奮してきちゃった……」


 ミーニアは悶々とベッドの中で転がるのであった。

 夜は更けていく……。




 ◇





 静寂とした部屋の中、息遣いの音だけがその部屋を支配する。窓から覗く月が狭いベッドで寝る二人の男女を優しく微笑みかけていた。


 どうしてこうなったっ!?


 鈍感なリラクでもあの雰囲気から、どのような展開になるかは想像できた。リスティには悪いとは思っていても、心の中の男は期待をしてしまった点は否めない。


「スーっ、スーっ……」


 リラクの隣で穏やかな寝息を立てて、眠るリスティがいた。ふくよかな胸をリラクに押し付け、幸せそうな顔をしていた。

 その感触にリラクの理性はゴリゴリと削っていく。が、手を出すことはできない。リスティは不安があって今夜ここに来たのだ。その眠りを妨げることはできない。今のリラクは完全な抱き枕であった。


 はあ……、寝よ……。


 このような経験は初めてではない。つい最近も似たようなことがあった。さすがに二度目となったら、少しは慣れる。

 リラクに睡魔が訪れた——その時。


「……んっ……あっ……だめだよ。そこは……」


 はっ!?


 リラクの眠気が一気に飛び、リスティを凝視する。が、リスティは穏やかに眠ったままだ。


 ね、寝言?


「そ、そこっ……あっ……、ダメっ。リラク……まだ早いよ」


 リスティが再び喘ぎ声を出す。


「あの……、もしかして起きてる……?」


 リラクが小さな声で訊くも、リスティから反応はない。どうやら彼女は夢を見ているらしい。登場人物にはリラクがいるようだ。

 リスティが艶めかしい声で、


「あっ……、ダメだって……。まだ明るいよ? あっ、そこ触っちゃ……」


「いったい夢の中の俺は何をしているんだっ!?」


 思わず大きな声を出す。リスティは一向に起きる気配がなかった。


 もう我慢するしかないのか……。


 リラクは生殺しの中、拷問にも似た状況を苦しむのだった。

 夜は更けていく……。




 翌朝、黄色い太陽の日差しが窓を通して降り注ぐ。

 リスティは目を覚まし、大きく両手を上に伸ばした。


「ん~っ、よく寝た……。おはよう、リラク。何かゲッソリしてるけど大丈夫?」


「べ、別に……。大丈夫だよ……」


 覇気のない声で、リラクは返事する。結局、あのリスティの寝言は夜が明けても続き、気がついたら朝になっていた。

 リスティは不思議そうな表情で首を傾げる。


「そう? なら、早く朝ご飯を食べに行きましょ?」


 リラクは頷き、二人は食堂へ向かった。

 食堂にはすでにミーニアが座っていた。ミーニアはリラク達を隈のある目で見つけると、リスティに声をかける。


「おはよう、リスティさん! 大丈夫でしたっ!? 痛くなかったですかっ!?」


「えっ……、何が?」


 キョトンとした表情で、リスティはミーニアを見る。

 ミーニアはリスティの反応に気づかずに、


「何がって、リラクと一緒に寝たんですよね?」


「うん、一緒に寝たよ。同じベッドで」


 そこでミーニアは何かがおかしいと気づく。


「ん? 一緒に寝たんですよね? 裸で?」


「え? 何で裸なの? もちろん、寝間着だよ。わたしはいつも寝間着で寝てるのはミーニアも知ってるよね?」


「……へっ? リラクさんどういうことですか!?」


 ミーニアはリラクの襟首を掴み、ブンブン揺さぶる。

 リラクは寝不足状態で、なすがまま揺られ続けた。


「なんだ? リスティは案外お子ちゃまだったのか?」


 そこへ、マリアナが朝食の皿を持って、キッチンから現れる。口にはキセル。どうやら話は聞いていたらしい。


「お子ちゃまって、どういうことですか?」


 リスティはマリアナが訊く。


「昨日、リラクと一緒に寝たんだろう? てっきりヤッたのかと思ったが……、まさか本当に寝るだけとは思わなかったな」


 マリアナが笑った。

 リスティはマリアナの言葉で、ミーニアがしていた質問の意味気づき、ボッと音が出るではという勢いで顔を真っ赤に上気させる。


「な、ななな何をいってるんですかっ!? そんな恥ずかしいこと……、自分から言うわけないじゃないですかぁ……」


 恥ずかしそうに言いながら、リラクをチラチラと見てくる。

 マリアナはリラクに視線を向けながら、


「だがリラクはそうは思っていなかったと思うけどな。こいつも一応男だぞ?」


「えっ? そうなの?」


 リスティも驚きながらリラクの方を見る。


「…………」


 リラクは反応に困り、あさっての方向を向き、無言を通す。ただ顔は真っ赤である。


「わわわ……」


 その反応にリスティは肯定であると理解し、再び顔を赤く染める。

 場には微妙な空気が流れた。

 その状況に終止符を打ったのは、マリアナである。


「あー……、甘酸っぱく青春するのは構わないが。朝飯食ってからにしてくれないか? 片付かないからな」


「そ、そうだなっ! 早く朝飯食おう。冷めたらマリアナに悪いからな。旨そうだな!」


 便乗するようにリラクがテーブルに座り、料理を食べ始めた。

 リスティもミーニアも、同じテーブルの椅子に座り、同じように料理を食べ始める。終始無言の中、視線だけはリラクに向けていた。一人は熱っぽく、一人は冷めた表情で。

 そのことをリラクは必死で気づかないフリをし続けたのだ。

お読み頂きありがとうございます。


リスティはどんな夢を見たのでしょうかね?

ミーニアの妄想は、どこまで行ったのでしょうかね?

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