表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/39

第三話 ノルマ

ノルマという言葉は嫌いです。切羽詰まりますよね。

※追記9/28

書き直してみました。ストーリーに変更はありません。ただ、こちらも短くなりました……。

「ノルマ?」


 リラクがリスティに訊く。


「うん……。そのノルマが厳しくてね……。達成できないと、給料が半分以下になるの」

「それは厳しいな……」


 ユニオンがノルマを指定することは珍しくはない。給料制であるので、働かないハンターを出さないためだ。が、ノルマ不達成で給料が半分以下になるのは厳しい。

 リラクは訊いた。


「で、そのノルマはどのくらいなんだ?」

「一ヶ月で五等級魔石一〇〇個」

「ひゃくっ! 多すぎないか……?」


 驚きのあまり、リラクの声が裏返った。

 ハンターの熟練度によるが、一ヶ月に五〇個も稼げば十分だ。なのに、その二倍は明らかに多い。


「うん。でも、所属しているみんなは必死でやってるよ。わたしも毎日森に行って魔獣を倒しに行ってるし」

「毎日か……。俺は二日に一回くらいなのに……。すごいな……」


 普段から働かないリラクではあるが、魔獣討伐に出かける回数は他の一般ハンターと大差はない。リスティの毎日というのが異常なのである。


「怪我とか大丈夫なのか?」

「うん……。今のところはね。ユニオンのメンバーの中には亡くなった人もいるけど」

「だよなぁ……。でも、人数が良く減らないな。普通なら解散していないか?」

「人気のユニオンだから希望者が後を絶たないらしいの。だから解散はないかな」

「駒の補充はいくらでもできるってことか。リスティには悪いけど酷いユニオンだな。な。……そういえば、他の村の奴らはどうした?」


 リスティが目を伏せる。声色もより暗くなった。


「……みんな逃げちゃった」

「逃げた?」

「……うん。みんなノルマがきつくて、達成できないこともあったりして……。嫌になって逃げちゃった……」


 リラクは呆れたように、


「薄情な奴らだなあ……。しかもリスティを置いて……。ひでぇな。逃げるなら普通に脱退すればいいじゃん」


 だが、リラクの言葉にリスティは首を振った。


「ダメなのよ。所属員の管理は副リーダーのヴェレーノさんがやってるけど、脱退を認めてくれないの」

「え? そんなことあるのか?」

 ユニオンは会社とは異なり、雇用関係はない。リーダー、副リーダーに許し乞う必要もないのだ。

「うん。わからないけど、そういうルールなんだってさ。だから自由に辞められないの」

「そうなのか……」


 リラクは自分の持っている知識との食い違いに首を傾げた。リラクの知識では、ハンターギルドに申請を出せば問題なく脱退できるはず。

 リスティが悲しげな顔をして、


「わたしどうしたらいいのかな? ヴェレーノさんに『辞めたい』と言ったら、『誰か代わりを探してこい』って言われたわ。こんなユニオンに誰も誘えないよ……」

「リスティ……」


 リラクは何か元気づけたいと思った。そこであることを思いつく。


「あっ、そうだ。ちょっと手を出してほしいな」

「ん?」


 リスティは瞳を潤ませ、不思議そうな顔をしながら右手を出し、そこへリラクは鞄から取り出した物を置いた。


「……ペンダント?」


 リスティの手の平に置いてあるのは、翠色の石のペンダントだった。一瞬、淡い輝きを放つ。

 リスティがペンダントを見つめる。


「綺麗……」

「このペンダントは昔ルーティアの婆から貰ったものだ。俺にはもう必要ないからあげるよ」

「えっ? ルーティア様の? 高いんじゃ……?」

「大したもんじゃないよ。ちょっとしたお守りだ。肌身離さず持ってもらえると嬉しいな」

「うん、ありがとう。ちょっとつけてみるね」


 と、リスティはペンダントを身に着け、ハニカミながら笑った。


「どうかな……? 似合うかな?」

「うん、似合ってる」


 リスティの笑顔を見て、リラクも微笑む。


「——あら、リスティさん。あなたこんなところで何をしてるの?」


 女の高圧的な声がした。

 リスティが怯えた顔で、ヴェレーノの顔を見上げる。


「ヴェレーノさん……」


 二人の前には、両腕を組む一人の中年の女が立っていた。

お読み頂きありがとうございます。

引き続きお読み頂けましたら幸いです。

以下のブックマーク、総合評価、感想を頂けますと、執筆の励みになります。

どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ