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第二十九話 這いよる魔の手

この話は不快にするダークな描写が多分に含みます。

苦手な方はブラウザバックをお願いします。

次回に、軽くあらすじを載せる予定です。読まない方は、そちらをご覧ください。

 リスティーが目を覚ましたのは、記憶にない部屋だった。窓ひとつなく、あるのは金属製のドアだけ。周囲は石材で作った石壁だ。

 リスティーぼんやりとした頭で、意識を失う前の出来事を思い出す。


 確かカーターさんに、何か吹き付けられて……。そのまま眠くなって……。


「——ッ!?」


 逃げなくては! と思い、上体を起こそうとするができない。リスティーの両手両足は自身が横たわるベッドに縄できつく結びつけてられており、身動きをとれなかった。

 ならばと、身体強化をするために体内の魔力を巡らせようと意識を集中させる。が、その時になって気づく、部屋中に充満する甘ったるい匂い。そして身体の芯から発する熱。集中する余裕は一切なかった。


「……あっ」


 思わず声が漏れてしまう。火照った身体は冷めることはなく、肌から流れ出る汗が服をしっとりと湿らせる。無意識に太腿を擦り合わせ、芋虫のようにくねくねと悶えた。


 どうしたんだろう……わたし……?


 ぼーっとする頭で、逃げなくてはと思う気持ちに反目し、身体は気にせずに何かを求め続けている。

 その時、金属製の扉がキーっと蝶番を擦る音を響かせて開いた。

 リスティーはその開いた扉を見つめた。そこにはカーターが立っていた。大きく見開いた眼は血走っており、口元は醜悪に歪みきっているその表情は、嫌悪感を抱かずにいられなかった。

 カーターは唇を舐め、


「どうだい? 快楽草の香りは? 興奮するだろう? 君のためにたくさん使ったんだ」

「かい……ら……くそう……?」


 リスティーは苦しげに声を出す。

 快楽草という名前は、リラクから聞いていた。ホワイトファングのリーダーであるホリックが売人の元締めとして、カロウセの街にばら撒いた魔薬。女性に対して、強い催淫効果をもたらす媚薬だ。

 カーターはリスティーが寝ているベッドに腰掛け、


「そうだよ。君のために大金を払って買ったんだ。おかげで稼いだお金がみんなパーだ」


 そう言いながらも、カーターは楽しそうだった。


「すべては君のためにやったことだよ? もっと喜んでほしいな」

「そん……なこと、たのんで……ない。はやく……ここから出して……っ」


 リスティーはカーターを涙を浮かべた瞳で睨みつけた。媚薬によって身体がいうことを利かず、魔力を練ることもできないリスティのせめてもの抵抗だ。

 そのことにおそらく気づいているカーターは満足げに笑った。彼にとって今のリスティーは、籠の中の鳥と大差ないのだろう。


「ダメだよ。ここが君と僕との愛の巣さ。君を探すのに苦労したんだよ?」

「だれが……あなたなんかを……」


 カーターは困った顔をした。


「つれないなあ……。でも確かにそうか……。僕が君を見つけるのに一ヶ月もかけてしまったからね。しかもリスティーに謝らないといけないし」

「な……にを……」


「僕が浮気したことだよ。君を探している時に魔が差してね。ついつい君に似た女の子とヤッちゃったんだよ。もちろん君のことを想ってね」

「あなたが……犯人……だったのね……っ?」


 カロウセで発生している連続強姦事件の犯人が、リスティの目の前にいるカーターだと知り、驚愕と同時に嫌悪した。

 カーターはベッドに上がり、リスティーに跨った。四つん這いの姿勢となる。ハァハァと荒い息がリスティにかかり、嫌悪感は跳ね上がる。


「そうさ。僕が犯人だよ。でもね、ヤッてみたけどやっぱり満足できなかったんだあ。その辺の女じゃダメだ。君じゃないとね。僕にとって君は特別なんだ。だから僕とできることを、もっと喜んでほしいなあ?」

「そんなの……嬉しくないっ!」


 カーターはリスティーの首筋に自分の顔を近づけ、大きく鼻で呼吸した。

 リスティは必死に離れようとする。が、縛られているためできない。顔を背けるだけで精一杯だった。


「ああ……、いい香りだ……。何て芳しい……。いつまでも吸っていたいよ……」

「……やめて……っ」

「でも君の身体はそうではないよね? 僕は知っているんだ。僕の雄の匂いに反応して気持ちよくなっているんでしょ? 本当のことを言ってごらん? もっと僕の匂いを嗅ぎたいって」

「ち、ちがう……っ」


 カーターの言っていることは正しかった。リスティーの心は嫌悪感でいっぱいであるにも関わらず、身体は雄を求めてしまっていた。そのことがリスティーを苦しませる。

 リスティの頬に涙が伝う。その涙をカーターは舐めとる。


「うん、しょっぱくて美味しい……。君から出るものは、何でも美味しいなぁ。他はどんな味がするのだろうね」


 カーターは舌舐めずりする。おもむろに上着を全て脱いだ。


「——っ」


 リスティはカーターの身体を見ないように、必死になって視線を反らす。


「さぁ、始めようか? もう身体は限界だろう?」


 カーターの言った通り、リスティの頭は全身を巡る快楽で、どうにかなりそうだった。その時、頭に浮かんだのはやる気のない青年の姿。自然と口が動いた。


「……リラク……助けて……っ」


 その言葉を聞いたカーターが豹変した。余裕のある笑みから、鬼ような形相に代わり、リスティーの顔を手で払った。


「——ッ」


 リスティーは口を切り、口端から血を垂らす。


「僕の前で他の男の名前を出すなッ! 特にその男の名前はッ! わかったよ……。君が誰の物か教えてあげるさッ!」


 そう言って、カーターはリスティの着ているシャツの襟を両手で掴み、力づくで開く。留めてあるボタンが空を舞った。強引に開いたブラウスからは、白い下着と豊満な胸が露わになる。


「——ッ」


 リスティーは耐えるように目を瞑る。

 カーターは無防備となったリスティの白く滑らかな肌に興奮し、顔を埋める。が、すぐに離してしまった。顰め面になり、リスティの身に着けているペンダントを右手で掴む。


「これは邪魔だな」


 カーターはそのペンダントの鎖を思いっきり引きちぎった。

 リスティが気づき、目を開くと、空を舞った翠の石のペンダントが目に入った。


「あっ……」


 心の中で何かが砕ける音を感じた。

 ——その瞬間、ペンダントが強い光を放つ。


「なッ!?」


 カーターが驚愕する中、部屋はペンダントから発する翠の光に飲まれた。

お読み頂きありがとうございます。


どこまで変態的に書けるかを試してみました。

思った以上に変態的でした。

推敲中、あまりの気持ち悪さに笑ってました。

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