第二十六話 恋文
読みにくいかなと思って、手紙部分に改行を加えてみました。
リラクとリスティは、先に帰ってしまったミーニアを追うように、小鳩亭へ向かった。
小鳩亭の入口前にはマリアナがいた。椅子に腰かけて足を組み、キセルから煙を吹かせている。その姿は盗賊の女頭目という言葉がよく似合っていた。
マリアナがリラク達に気づくと、視線を受けて、
「よう、おかえり。ちょうど今ミーニアが怒って帰ってきたけど、何かあったのかい?」
「ただいま。帰り道でちょっとな……」
リラクは苦い笑いを浮かべる。
リラクの表情を見たマリアナは目を細めた。
「……そうかい。ほらっ、お前に手紙だよ」
マリアナは一通の手紙をリラクに投げる。リラクは反射的に右手で受け取った。リラクに手紙が届くのは、ここに来てから初めてのことだ。不思議に思い、首を傾げる。
「手紙? 誰からだろう? ……げっ」
手紙には蝋で封印がしてあった。その印を見て、口端を引きつらせる。
リラクの様子を見ていたリスティが訊いた。
「誰からの手紙だったの?」
リラクは慌てた様子で手紙を隠し、
「な、なんでもないよ? 知り合いからの手紙だ」
「あやしい……」
リスティはじとーっとした視線をリラクに送る。
マリアナはニヤリと笑った。
「別に教えてやったらいいのに。恋文だって」
「なっ!? 違うだろっ!? 勝手なこと言いやがってっ!」
「こ、恋文……!?」
リスティがショックを受けているようだった。
そのことに気づいて、リラクは慌てて否定する。
「違うからな! マリアナの冗談だから!」
「いやぁ……、若いっていいねぇ……」
その二人の様子をニンマリした表情で、マリアナが見ていた。
リスティの誤解を解いたリラクは、自分の個室に戻った。机に置いてあったペーパーナイフで封筒を開け、中の手紙を読み始める。文字はとても流麗で、気品があった。
親愛なるリラク=クーリア様。
このようなお手紙が届き、大変驚いたかと思います。ですがカロウセでのリラク様のご活躍をお聞きし、いてもたってもいられなくなり、筆をとってしまいました。落ち着きのないわたくしをお許しください。
リラク様がこの城を発って、もう一年になるのですね。ですが、わたくしはあの時のことを昨日のことのように思い出せます。わたくしの命を救ってくださったあの日のことを……。
あの日からわたくしにとってリラク様は特別な人になりました。もし、今の立場がないのでしたら、今すぐにでもリラク様のお側に行きたいと思っています。
さて、カロウセでの事件は伺っております。同じ女性として痛ましい限りです。リラク様は大変お忙しい方だと存じ上げております。ですので無理にとは申し上げることはできません。
ただできることでしたら、この事件を解決して頂けますようにお願いいたします。
カロウセの領主様には、リラク様からの申し出があった時には、全面的に協力するようにお願いしてあります。お役立てください。
またお会いできることを心よりお待ちしております。
追伸、リラク様から頂いたお守りの指輪は、肌身離さず身に着けております。
シルファニド王国第一王女ミリスティア=シルファニドより。
手紙を読み終えたリラクは酷く頭痛がした。
マリアナの『恋文』という言葉はあながち間違いではなかったようだ。が、相手は王女である。正直、分不相応すぎて胃まで痛くなりそうである。
ミリスティア王女と初めて会ったのは三年前のことだ。彼女は子供の頃から心臓が弱く、あと数年の命だと勧告を受けていた。
回復魔術師は病気を治すことはできない。というのも、毒治療に使用する『毒解除』は、どの毒かを判別し取り除くというものである。毒が何かわからない場合は、治療ができないのだ。病気になる原因は様々である。その原因を分析するは難しく、魔術で治すことはできないのだ。
王女の場合は、先天性の心臓疾患だった。先天性の疾患は回復魔術での治療はできない。元から正常と身体が認識しているため、身体を正常に戻す回復魔術では効果がないのだ。
だがリラクは治せた。そのことで、ミリスティア王女はリラクを聡明な回復魔術師だと認識しているようだ。
さらに王都では、師であるルーティアと一緒に荒事も結構解決していた。王女の中のリラク像がどうなっているか不安で仕方ない。
「はあ~、王女様の頼みだ。断るわけにはいかないなあ……」
リラクはミリスティア王女の期待を込めた満面な笑顔を思い出した。あの純粋な笑顔を裏切るのは難しい。そもそも、この国の王女のお願いを無視できない。
「明日から忙しくなるなあ……。そうすると、リスティとミーニアにはどう説明しようかな……」
一度やらないと言った手前、昨日の今日で手のひらを反すのは、何とも言いづらい。
「……まあ、黙ってたらバレないだろう」
と、リラクは開き直り、明日の予定を考えるのだった。
◇
暗いカロウセの街。月明かりすら出ていない。道を照らす街灯はチカチカと点滅を繰り返す。
男は一人彷徨い続ける。そのギョロギョロした瞳は金髪碧眼の少女を探す。
「どこにいるんだ……? 我が麗しの……」
ブツブツと呟き、ふらふらと歩き続ける。
甘ったるい臭いを漂わせながら……。
お読み頂きありがとうございます。
小説内で初めて手紙を書いてみました。
書き方に迷いますね。




