第二十四話 変異種?
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カロウセの西に位置する森は、濃い緑の木々で覆われていた。木々の切れ間から太陽の光が降り注ぎ、辺りを照らす。
その太陽の光に反射し、銀色の一閃が煌めいた。
「——フッ!」
「キャイイィィィンッ!」
グレイハウンドへ放ったリスティの一撃は腹部を切り裂き、大きな血しぶきを上げた。グレイハンドはリスティの剣の勢いに吹き飛び、地面に転がる。何度か痙攣し、次第に動かなくなった。息絶えたようだ。
リスティは大きく息を吐き、リラクをムッとした顔で睨みつけた。
「リラクっ! もっと働いてよっ!」
リスティの視線の先では、リラクは背丈の短い草むらの上に寝転がり、気持ちよさそうに日向ぼっこしていた。
「今日みたいな良い天気で働くとかもったいない。今日はこのまま昼寝する……。それに、リスティ一人で十分だろう?」
「そうだけど……、何か釈然としないなぁ……」
リスティは嘆息し、不満そうな表情を浮かべた。
リスティは一ヶ月に一五〇体以上の魔獣を一人で倒すハンターだ。グレイハウンドも何度も倒している。一人でも楽に倒せるレベルだ。
リスティはグレイハウンドの屍の前に腰を下ろす。体内から魔石を取り出すために、ナイフを取り出した。
「む?」
その時、リラクが目をパッと開けた。上体を起こし、リスティに声をかける。
「リスティ」
「はい?」
リスティはリラクの方へ振り向いた。真剣な顔をしているリラクを見て、首をかしげた。
「どうしたの?」
「動くなよ」
「えっ?」
「ガアアアアァァッ!」
リスティの後方から何か得体のわからない黒い影が飛び出した。黒い影は今にもリスティに襲い掛かろうとしている。
リラクは手元にある石礫を飛ばした。高速で移動する石礫はリスティの真横を通り抜け、魔獣の眉間に命中する。
魔獣の頭が弾け、脳漿を飛ばした。血生臭さが辺りに充満する。
リスティは一瞬のことに、眼をパチクリさせた。
「交代だ」
と、言ってリラクは立ち上がり、リスティの横を駆け抜けた。
「「「ガアアアアアッ!」」」
三頭の狼型魔獣が森の茂みから飛び出す。別々の方向からリラクに襲い掛かった。その速度はグレイハウンドの比ではない。
リラクは正面の魔獣に視線を向けた。黒い皮手袋をはめた拳を強く握りしめ、魔獣の顔面を打ち抜いた。魔獣の目玉が飛び出し、頭蓋を破壊する。
そのままリラクは魔獣を殴った拳の勢いを殺さずに前転し、二頭の魔獣の攻撃を回避する。
残った魔獣二頭は、倒された一頭のことなど意に介さず、再びリラクに鋭い牙を見せ、駆けてくる。
一頭の攻撃を難なく躱し、もう一頭を蹴り上げる。背骨を折った感触が脚を通して伝わった。魔獣は二つ折りになり上空へ舞い上がり、地面に落ちる。
「残りはお前だけだな?」
と、リラクは余裕の笑みを浮かべる。
「グルルルルゥゥ」
魔獣は牙を剥き出しにし、リラクと対峙する。が、いきなり方向転換した。逃げるのではなく、リスティに向かって走り出したのだ。
「——チッ」
リラクは悪態をつき、魔獣を追いかける。が、間に合いそうもない。
魔獣が牙をむき出しにし、笑っているように見えた。
「……えっ!?」
驚愕するリスティは魔獣の速さに反応できなかった
魔獣は咢を開く。鋭い牙を見せ、リスティに飛び掛かった。
リスティは咄嗟に両腕を前にだし、目を瞑る。
——大きな血しぶきがあがった。
強く目を瞑っていたリスティだったが、恐る恐る目を開ける。リスティの目の前にいたのは息絶えた魔獣だった。その頭には短剣が突き刺さっている。
「ふぅ~……、危なかったな……」
リラクは短剣を投擲した姿勢のまま、深く息を吐いていた。投擲の姿勢を解き、ゆっくりとリスティに近づく。
「怪我はないか?」
「うん、大丈夫。ありがとう……」
リスティは頬を赤く染める。
リラクはリスティの返事を聞き、「良かった」と、安心した顔を見せ、
「さて……、こいつらは一体何なんだ?」
倒した魔獣を注意深く眺める。
魔獣はリラクも見たことがないものだった。形からは狼型であることはわかる。が、毛は全て抜けており、牙は大きく発達している。爪も長く、子供など容易く切り裂きそうだ。
リスティがリラクに訊く。
「変異種かな?」
「ああ、そうだとは思うが、あまりに変質しすぎだ」
変異種といっても、通常、元の個体の特徴を残しているものだ。仮にグレイハウンドが変異したものであっても、牙が大きくなるだけとか、体毛が変色するだけとか、その程度である。この魔獣はもはや新種の個体だ。
「まぁ、ちょっと物騒な森になったな……。早めに帰ろうか」
「うん、そうだね……」
リラクの提案に、リスティは緊張した面持ちで同意する。
二人は魔獣から魔石を回収し、足早に街へ戻っていった。
森の中で何かが起きている。だがその答えを知るものはここにはいなかった。
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