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第二十一話 助けるなら最後まで

ストックゼロでお送りしております。

 ホワイトファングのユニオンハウスで起きた一幕から数日が経過した。


「やあ、ミーニア。換金に来たよ」

「こんにちは、リラクさん。では査定しますね。……って、また五等級魔石一個と薬草ですか? もっと稼いでくださいよー」


 受付台にリラクが置いた魔石と薬草に、ミーニアは不満を漏らす。


「嫌だよ。最近、働きすぎだったんだ。当分は働きたくないよ」


 リラクは嫌そうな顔をした。

 ハンターギルドでのいつもの光景。ギルド長のワーグナーが逮捕される事件が起きたのが嘘のようである。


「トップユニオンのホワイトファングがなくなって、カロウセにいるハンターの数が激減したんです。『ここは他のハンターが盛り上げないと……』とか、思わないんですか?」

「……いや、全然」


 リラクは手を振り、否定する


「まったくもう……、困った人ですね」


 悩む姿勢も見せないリラクに、ミーニアはため息をつく。

 ホワイトファングは解散した。

 あの日、リラクとヴェレーノが戦闘した後、騒ぎを聞きつけた衛兵達がユニオンハウスに突入。衛兵達がリラク達を見つけると「またですか?」と呆れていた。

 リラクから事のあらましを聞き、納得した衛兵達は、ヴェレーノ殺人事件から魔石横流し事件に調査内容を変更した。

 衛兵達の調べにより、魔石の裏帳簿が見つかった。そこからは芋づる式に証拠が挙がり、ヴェレーノとその関係者は御用となった。ただヴェレーノは死亡しているため、名声だけが地に落ちる形だったが。

 ホワイトファングが解散することになったことを知った所属のハンター達は、解放されたような清々しい顔をして、次々とハンターを休業していった。今までの休みを取り戻すかのように羽を伸ばしているようだ。

 リラクは思い出し笑いをして、


「それにしてもホワイトファングは真っ黒だったな。まさかリーダーのホリックが快楽草の売人の元締めだって言うんだから。ブラックユニオンどころの騒ぎじゃないよな」


 ミーニアが見つけた手紙には、快楽草の取引内容が書いてあった。『快楽草』という言葉は書いてなかったが、手紙に染みついた臭いが何よりの証拠だ。


「でも、まだ捕まってないんですよね」

「そうだよなぁ」


 ホワイトファングのリーダーであるホリックは行方不明だった。どうやらホワイトファングの事件をどこかで知り、身を隠したらしい。衛兵達が町中をくまなく探したが、見つかることはなかった。


「まぁ、そのうち捕まるだろうよ。ところでミーニアは大丈夫だったのか?」

「何がですか?」

「ホワイトファングの解散命令を勝手に作ったことだよ。ここまで騒ぎになったんだ。さすがにバレたんじゃないのか?」

「あー……、そのことですね。バレましたけど、大丈夫でしたよ」

「えっ? バレたのに大丈夫だったのか?」


 リラクは意味がわからず首を傾げた。ユニオンを解散させる書類の偽造だ。普通なら懲戒免職ものだろう。

 ミーニアも疑問に思っていたらしく、眉間に皺を寄せる。


「あの一件からしばらした後に、王都にあるハンターギルド本部の偉い人がやってきて色々聞かれたんですよ。その時には、わたしが解散命令の書類を書いていたことがバレていまして、さすがにまずいなぁって思ったんですけど。でもなぜかお咎めなしで終わりました」

「そうなのかぁ……」


 不思議なこともあるものだと、感心する。


「あっ、そういえば。リラクさんのことをたくさん聞かれましたね」

「俺のこと?」


 リラクは自分のことを指さす。


「はい。リラクさんが『なぜここにいるのか?』とか、『何をしたのか?』とか。色々です。リラクさんはハンターギルドの偉い人に知り合いの方でもいるんですか?」

「いや……。いないはずだけど……」


 リラクは記憶を思い起こしながら、かぶりを振った。

 リラクがハンターになったのは半年程前だ。ハンターギルドにあまり知り合いはいない。まして偉い人など皆無である。


「あのぅ……」

「ん? どうした?」


 リラクが考える仕草をしていると、おずおずとミーニアが訊く。顔がほんのり赤い。


「あの日……、わたしが『リラクさんのことが好きだ』と言った話なんですけど……」

「ああ、そのことか……。別に気にしてないぞ。勘違いしただけなんだろう?」

「えっ?」


 ミーニアが目を見開き、固まった。

 リラクは気にせず続ける。


「快楽草には媚薬効果以外にも惚れ薬に似た効果があるからさ。そのせいなんだろう? 俺もあの時はびっくりしたよ。いきなり告白されるとは思わなかったな」


 リラクはケラケラと笑う。

 ミーニアは何度も瞬きをする。そしてハッとした顔をした後に慌てたように、


「そそそ、そうなんですよ。あの時はどうかしていたんです。貴方のような働きもしない、ごく潰しみたいな人を好きになるわけないじゃないですか」

「ごく潰しって……、そこまで言うことないだろう……」


 リラクはミーニアの言葉に軽く凹む。ミーニアの眼が物凄く泳いでいることには全く気づかない。


「と、ところで、リスティさんはどうしているんですか?」

「……リスティ? リスティなら俺が泊ってる宿の『小鳩亭』で寝ているよ。今まで頑張っていたからな。ハンター業は、しばらく休むと思うよ」

「そうですか……。早く元気になってほしいですね」


 ミーニアは優しく微笑む。


「そうだな……」

「リラクさんは、まだこの町にいるんですか?」


 リラクは各地を転々とする根無し草だ。このカロウセの町も、たまたま滞在していたにすぎない。


「そうだな。もうしばらくはここにいるよ。少なくともリスティが元気になるまではな。前に婆から言われたことがあってね」

「お婆さん?」

「『誰かを助けるなら最後まで責任を取れ』ってな。だからリスティが元気になって、一人でハンターができるようになるまでは、この町にいるさ」

「なるほど」


 リラクの言葉を聞いたミーニアは、後ろを振り向き、リラクに見えないように「やった」と小さくガッツポーズする。

 突然のミーニアの行動を不思議に思ったリラクは、首を捻った。


「ん? どうしたんだ急に?」

「な、なんでもないよー」


 ミーニアはニコッと笑った。上機嫌である。


「ではリラクさん。もうしばらく、よろしくお願いしますね」

「ああ、よろしくな」


この話にて、ブラックユニオン編は完結となります。

ここまで海月にお付き合い頂きまして、ありがとうございます。

もう少しだけ、お話は続きます。

ただストックが完全にゼロですので、書き溜めに入りたいと思います。

毎日お読み頂いている方には、申し訳ございません。

再会日は未定ですが、近日中にできたらいいなと思っております。

できましたら、ブックマークしてお待ちいただけますと幸いです。

では、その時まで少々お待ちくださいませ。


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