第二話 ユニオン
本日三回目の投稿となります。
どうぞよろしくお願いします。
※追記9/21
一話、二話が繋がったため、この話が二話になります。
※追記9/28
書き直してみました。ストーリーに変更はありません。ただ、短くなりました……。
リスティの案内で来た酒場はギルド近くの街角にあった。名前は黒猫の安息亭。看板が黒猫の形をしている。
内装は落ち着いており、魔石を利用した照明が店内に仄かな明るさをもたらしている。
テーブルには高級感のある料理が並んでいる。店内の雰囲気もあって、リラクは戦々恐々としていた。
「ここ……、高くないか?」
全てはこの言葉に集約する。普段から生活最低レベルの稼ぎしかしないリラクにとって、縁のない場所である。
「いいのよ。普段からお金は使わないし……。たまにはね」
リラクの前に座るリスティがワイングラスを呷る。頬が酒精で赤くなった。
「ここはわたしの奢りだから気にしないで食べて」
「なら遠慮なく……うまっ!」
リラクは目を輝かせて、目の前の皿に手を出す。普段食べない料理に感動した。手が止まらない。
「う゛っ」
たまに喉を詰まらせては水を飲む。が、また食べ始める。その繰り返し。まるで学習しない鶏のようである。
「落ち着いて食べても大丈夫だよ。料理は逃げないよ?」
クスクス笑いながら、リラクの食事を楽しそうに眺める。
そのことに気づいたリラクは首を傾げる。
「何か面白いか?」
「だって、変わってないんだもん。子供の時のまんまだよ」
「そうかな?」
「そうだよ。自分ではわからないのかもしれないけど」
「なるほど」
リラクは腕を組み、子供の頃の自分を思い出す。出てくるのは親代わりのルーティアに悪戯を試みて、失敗して痛い目を見る苦い記憶しかなかった。
思い出したくもない記憶だったので、空の彼方に消し去り、話を変える。
「リスティは変わったよな。どこか落ち着いたというか、大人になったというか」
「そうかな? そうでもないと思うよ。わたしなんて……」
と、暗い表情を浮かべる。が、すぐに顔を明るくして、
「と、ところで今まで何をしていたの? ルーティア様と一緒に旅に出ていたのは聞いたんだけど……」
「ああ……、もう思い出したくもないことだよ」
地獄の光景が頭にポンポンと浮かび、消えて行った。
もう……、二度とごめんだ……。
心の中の叫びだった。
「そ、そうなんだ……」
リラクの苦悶の表情を見たリスティが少し引いている。
「と言っても半年前には村に戻ってきたけどね。すぐに追い出されたけど……」
「えっ、何で?」
「あの糞婆……。俺がせっかく畑耕しながらスローライフを満喫してたらよ。『若い奴が田舎でのほほんとしてるんだ。スローライフだあ? 何を馬鹿なことを言ってるんだ。お前さんには百年早いよ。若いんだから外で働きな!』って追い出された。酷くないか?」
「あ……、うん……」
リスティは苦笑いした。顔には『十八歳で畑を耕す生活がしたいと言うのはどうかと思う』と、書いてあった。が、リラクは気づかない。
「そう思うだろう? のんびり土いじりをして、育てている野菜の成長を見て喜び、育ったら収穫して食す。最高の生活じゃないか。競争社会で身を削って働くなんて、絶対にしたくないね」
「う、うん……。そっかあ……」
「どうした? 暗い顔して?」
「いや、わたしとは違うなあって思ってね」
「何が?」
「わたしね、今はユニオンに入ってるのよ」
「あれ? 近所のおばちゃんからは、他の奴らと一緒に『ハンターになる』とか言って、村を出たって聞いたけど? てっきり、みんなでパーティーを組んでると思ったよ」
リラクのいた村には、リスティと同年代の子供が何人かいる。
「うん、パーティーを組んでいたよ。でも今いるユニオンから勧誘を受けてね。この町で一番のユニオンから誘いだったから、みんな二つ返事で飛びついたの」
「なるほど」
ユニオンは七人以上のハンターで結成する組織だ。形態は様々だが、一般的には商会に似ている。社長、副社長で言うところの、リーダー、副リーダーが存在し、その他に所属するハンターがいる。ユニオンはハンターギルドから受け取る報酬を、ハンター達に給料という形で分配する。所属するハンター達は、組織で魔獣討伐などの依頼をこなす。
ユニオンの利点は魔石の換金率のアップだ。死亡率の高いハンターはソロ活動を防ぐために、ハンターギルドはユニオンへの所属を勧め、優遇している。
「でもね、この選択が間違いだったよ……」
「間違い?」
「うん……。わたしが所属するホワイトファングにはノルマがあったの」
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