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第十八話 一人の真面目な少女作った綻び

なんと1,000PVを突破しました。

物書き初心者の海月としては嬉しい限りです。

皆さま、ありがとうございます。


 リラクとミーニアの二人はホワイトファングを解散させるため、そのユニオンハウスへ向かった。

 前回、リラクが一人で行ったときは入口の警備員によって門前払いを受けた。が、今回はハンターギルドのミーニアがいる。ギルドを通しての訪問だから問題ないだろうと、リラクは思った。

 ——しかし。


「リラクさん、あなたはこのユニオンハウスへの立ち入りを禁止されております」


 そう通告したのは、入口で警備員をする男だった。彼は持っている似顔絵が書いてある紙を見比べ、無慈悲に告げた。


「はあ、何で?」


 リラクは意味がわからず、訊き返す。


「あなたは『このユニオンハウスの敷居を跨がせてはいけない』という指示が、ヴェレーノ氏から出ております。お引き取り下さい」

「…………あっ」


 リラクは思い出す。ヴェレーノにリスティの開放を求めた日の夜を。リラクはヴェレーノから怒りを買ったらしい。


「クッソ、あの婆め……」

「どうするんですか? リラクさん」


 悪態をつくリラクを心配そうに見るミーニア。


「ん? そりゃあ、使うしかないだろう」


 と、リラクは腰に差した短剣を鞘ごと取り出す。

 一瞬、警戒する警備員。が、リラクの様子から違うと判断し、構えを解く。

 リラクが短剣を抜き、警備員に見せると、警備員の眼の色が変わった。警備員は目を見張り、「しょっ、少々お待ちを!」と、ユニオンハウスの中へ慌てて入っていく。


「リラクさん……」


 ミーニアがジト目でリラクを眺める。『少し強引すぎませんか?』と、言外に言っている。


「いいんだよ。使えるものは何でも使う。常識だ。まったく、権力とは偉大だな!」


 胸を張り、笑い声をあげるリラクに、ミーニアはため息をついた。

 少しして警備員が戻ってくると、リラクにユニオンハウスへ入る許可が出た。

 中に入ったリラクは、ミーニアの案内で最上階にあるリーダーの執務室へ向かう。ミーニアは何度がここに来たことがあるらしい。


「こちらです」


 ミーニアが案内したのは最上階にある大きな扉だった。リラクは一歩前に出て、勢いよく扉を開ける。

 そこは全面ガラス張りの部屋だった。窓越しに町を一望でき、太陽の光が室内に降り注ぐ。部屋は広く、軽く組手ができるほどだ。正面には大きな執務机が二台並び、ひとつは空席、もうひとつにはヴェレーノが座っていた。


「よう、ちゃんと正面から来たよ」

「まさか貴方が貴族とはね……。信じられないわ……」


 リラクの気楽な挨拶に、ヴェレーノは苦虫を噛み、立ち上がった。


「おやっ、侮辱罪とか、不敬罪とかは気にしないんだな?」

「当然でしょ。貴方が貴族と名乗ってたないのに適用されるわけないわ」

「よくご存じで」


 ヴェレーノは挑発するように、


「やるならやってみなさい? わたしには貴族の知り合いも多くいるわ。後悔するのは貴方よ?」


 リラクは肩を竦めた。


「別に訴えるつもりもないよ。こんなことで訴えたら、貴族としては恥だからな」

「そう……。ところで貴方達の用事は何? まさか遊びに来たわけではないでしょ?」

「ああ、ホワイトファングの解散命令書を持ってきたぜ」


 ドンッとヴェレーノの机に書類を叩きつけた。


「…………」


 ヴェレーノが無言でその書類に目を通す。

——そして、


「フッ」


 と一笑した。

 リラクが訊く。


「何がおかしいんだ?」

「このノルマの内容、間違っているわよ?」

「間違っている? 一ヶ月で五等級魔石一〇〇個のノルマがあって、達成できないと給料が半分以下になると聞いているが?」

「確かに我がユニオンに所属しているハンターには、一ヶ月で五等級魔石一〇〇個がノルマと言っているわ。でも努力目標よ」

「努力目標?」

「そう。給料を減らすノルマは一ヶ月で五等級魔石三〇個も満たないわ」

「はあ? だったら、お前の所のハンターは必死で努力目標を達成しようとしているということか?」

「当然でしょ? トップユニオンのホワイトファングよ。努力目標でも達成するために必死になるのは当り前よ」

「————ッ」


 リラクは押し黙るしかなかった。ヴェレーノの言葉が正しいのなら、この解散命令書は無効となる。ならば、文句のつけようがなかった。実際には違うのかもしれない。が、証拠がないのだ。

 ヴェレーノはリラクの悔しそうな顔を見て、勝ち誇るように笑う。


「話は終わりのようね? だったら帰ってもらえるかしら。わたしも貴方のくだらない児戯に付き合ってられないのよ」


 リラクは拳を強く握りしめた。何か方法はないのかと思考するも、答えは出てこない。リスティの悲しむ姿が目に浮かんだ。

 ——そして、


「待ってくださいっ!」


 ストップをかけたのはミーニアだった。彼女は強い意思を持って、ヴェレーノを睨みつける。

 ヴェレーノは不機嫌そうに、


「何か?」

「まだ話は終わっていません!」

「終わったでしょ? ノルマは努力目標で、この命令書は間違っている。理解してなかったの? 子犬ちゃん?」


 ヴェレーノは馬鹿にしたような口調で嘲笑い、ミーニアを鋭い視線で射抜く。

 が、ミーニアは怯まなかった。ポーチから書類を取り出し、ヴェレーノ机に叩きつける。

 ヴェレーノはその書類を見て、眉をつり上げた。訝しげそうにして、首を捻る。


「……うちの報告書がどうかしたかしら?」


 その書類は毎月ホワイトファングがハンターギルドに提出している魔石の採取量を書いたものだった。

 ユニオンは所属人員が多いため、リラクのように個人で魔石の換金は行っていない。一ヶ月分をまとめて換金するのだ。その際、魔石とは別に作る書類がある。その書類にはユニオン所属のハンターの個人名とその人が採取した魔石の数がリストで載っている。


「実はここにある書類には全て不備があります。不備があるのは毎回同じ人です。そこまで困ることもありませんでしたので、ハンターギルドで修正していました。必要ないと判断し、ワイトファングへの報告もしていません」

「不備?」

「はい。その不備は毎回そのハンターがこの書類を持ってきた時に発生しました。その箇所がここです」


 ミーニアは、書類の内容から不備のある場所を指し示した。

 ヴェレーノはミーニアが指さした場所を見る。

 そこには魔石の数に二棒線を引き、新たに数字が書いてあった。そのハンターの名は『リスティ』。

 ヴェレーノは顔を歪ませ、怒り狂った。


「あの小娘がああああっ!」

「リスティさんが書類を提出する時に、内容を確認したのでしょう。そこで自分の採った魔石の数が違うことに気づいて、直したのだと思います。ですが、実際の魔石の数は直す前のものでした。ヴェレーノさん、もしかして貴女は魔石を不正に着服して、売っていませんか?」


 魔石は全てハンターギルドで換金し、その魔石を国が買い取る。商人は国から魔石を仕入れ、国民に売っている。

 このような流通になっているのには理由がある。というのも、魔石には全て国が税をかけているからだ。だからこのルートを通さずに魔石を売った場合、税がかからない分、大きな利益になるのだ。

 もちろん、この方法は犯罪だ。


「こんなの出鱈目よ! あの小娘が勝手に書いたに決まっているわっ!」

「では、調べても問題ないですよね。ユニオンファングの倉庫の中、魔石の管理簿を渡してください。トップユニオン何ですから、当然ありますよね? それに所属のハンターからの聞き取りもしてよろしいですか?」

「ダメに決まってるでしょっ! 勝手なことをして。たかだかそんな紙っぺらだけを証拠に疑いに掛かるなんて失礼だわ!」

「いいんですか? そんなことを言ってしまって。こちらには騎士爵のリラクさんがいます。彼がいるのです。疑いがあるなら調査は可能だと思いますよ」

「…………」


 ヴェレーノが奥歯を噛み締め、ミーニアを睨みつける。

 ミーニアは勝ち誇った笑みを浮かべ、


「ヴェレーノさん、貴女は終わりです。ユニオン解散だけでは済みません。犯罪者として貴女は逮捕されるのです」

「この雌犬がああああああああッ!」


 ヴェレーノが腰から杖を取り出して、ミーニアに向けて叫ぶ。


氷の槍(フリーズランス)!」


 ヴェレーノの前に複数の氷の槍が出現し、ミーニアに襲い掛かった。


「えっ?」


 呆然とするミーニア。


「——ッ!」

「きゃっ!」


 リラクが咄嗟にミーニアを突き飛ばした。ミーニアは小さく悲鳴を上げる。

 そこへ氷の槍の弾丸が身代わりとなったリラクに襲い掛かる。氷の槍はリラクの全身に複数の風穴を作り、壁に突き刺さった。突き刺さった氷の槍から真っ赤な血が滴る。

 地面に俯せで倒れる形となったミーニアは、地面に手をつきながら、身体を起こす。


「いったああ……、リラク……さん?」


 ミーニアが顔を上げて見たのは、顔を青ざめさせ、棒立ちで立っていたリラクの姿だった。

 リラクはふらふらと身体を揺らし、そのまま背中を地面に打ち付けた。


「リラクさんっ!?」


 ミーニアは急いで駆け寄り、リラクの身体を揺する。


「リラクさん大丈夫ですか? ねえっ! 起きてくださいっ!」


 だが、リラクに反応はない。その眼は固く閉ざされたままだ。

 そこでふとミーニアは手の平に感じる生温かさを感じた。


「えっ……、なに? ……血?」


 ミーニアの両手がべったり赤い血で染まっていた。地面にはリラクを中心に赤い花が咲き始めている。

 ヴェレーノがニヤリと笑った。

 嘘だ……。

 ミーニアは心の中で思った。が、現実はそのことを否定していた。


「嘘だよね?」


 と、声に出してリラクに訊いても、返事はもちろんなかった。


「い、いや……。いやあああああああああああッ!」


 ミーニアの悲鳴が部屋中に木霊こだました。

お読み頂きありがとうございます。

引き続きお読み頂けましたら幸いです。

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