第一話 再会
初連載となります。
完結目指して頑張ります。
目標はブックマーク一〇件です。
稚拙な文章ですが、どうぞよろしくお願いします<(_ _)>
※9/21追記
説明が多く、くどいと感じたので修正しました。短すぎたため、二話目と繋げました。スト―リーに影響はないので、既読済みの方は読み飛ばしても話はわかります。
空は青く、雲もない。太陽は明々と鬱蒼とした森を照らしていた。
その太陽の下で、リラクは一頭の狼型の魔獣——グレイハウンドと対峙していた。
リラクは少年の色を残す顔で、好戦的な笑みを浮かべ、その蒼い双眸で魔獣を睨みつけた。
魔獣も唸り声をあげ、鋭い牙を剥き出しにし威嚇する。
最初に動いたのは青年だった。拳を握りしめ、地を駆け——、魔獣と衝突する。
森の中で大きな咆哮と怒号が鳴り響いた。
「ふっふふ~ん」
リラクは鼻歌を歌い、鞄を軽く叩く。中には戦利品——グレイハウンドの魔石。
空は赤く染まり、リラクが歩くカロウセの町の街道は、仕事帰りの人で混雑していた。
街道を歩き、一件の建物の前で足を止める。看板には『ハンターギルド』の文字。ハンターを生業にする人間が魔石、素材、薬草などを換金する場所だ。リラクもその一人。
扉を開け、中に入る。目の前では、リラクと同じハンター達が受付で換金の手続きをしていた。ハンターに対応する受付嬢達は愛想のいい笑顔を振りまいている。
リラクも同様に受付窓口の前に立ち、
「やあ、ミーニア。換金に来たよ」
「いらっしゃいませ、リラクさん。では換金するモノを見せてください」
リラクがミーニアと呼ぶ少女は、愛嬌のある顔でニッコリと笑った。綺麗な茶髪に隠れる犬耳をピクピク動かす。
「あいよ」
リラクは今日の成果を受付台に置いた。
ミーニアはリラクが持ってきた素材をひとつずつ調べていく。
「ふむふむ……、最低ランクの五等級魔石がひとつに、熱さまし用の薬草ですか。そうしますと、払う金額はこれくらいですね」
引き出しから数枚の硬貨を取り出し、受付台に置いた。
「ありがとう」
リラクは硬貨を手に取り、鞄にしまった。
ふとその様子を不満顔で、ミーニアはじっとリラクの顔を見つめている。
そのことにリラクは気づき、
「……どうした?」
「…………もっと稼がないんですか?」
「は?」
「何でもっと稼がないんですか? リラクさんがこの町に来てから一ヶ月、いっつも換金するモノって一緒ですよね? 他のハンターさん達はもっと持ってきてますよ」
「いや、十分じゃない?」
リラクが今日受け取った額で、宿屋一泊に朝食がついてくる。安い所なら二泊は固い。十分生活できるレベルだ。
「全然ですよ! 将来はどうするんですか?」
「将来? 田舎の村で畑を耕して、スローライフを送る予定だけど」
「なんて夢のない……。リラクさんは回復魔術師でしたよね? だったら治療院を開いたらどうですか? ハンターでの今の稼ぎより、圧倒的に稼げますよ」
「えー、嫌だ。そんなことしたら毎日治療の依頼が来るじゃん。休日がないのは嫌だよ」
「えっ……、もったいなくないですか? お金に困らないくらい稼げますよ」
「全然。俺は死ぬほど働こうとは思わないの。安定した食事に宿、あとはゆったりした時間があったらそれでいいんだ。人生、働きすぎは良くないんだよ……」
苦い記憶が蘇り、悟った表情で笑った。
だが、ミーニアは納得がいかない。
「働いてください」
「働きたくない」
「働いてください」
「働きたくない」
押し問答のように繰り返し、二人は言い合っている。周囲のハンターや受付嬢は「また始まった」と、生温かい目線を送っていた。
そのときリラクの背後で少女の声がした。その声には驚きの色が混じっている。
「えっ……、リラク?」
「ん?」
リラクは自分の名前に反応し、振り向く。そこには金髪の少女が書類の束を持って立っていた。青い瞳を大きく見開き、驚きを隠せない様子。
リラクも目を見張った。その顔に見覚えがあったからだ。
「も、もしかして……」
「リスティさん! 久しぶりですね!」
リラクが彼女の名前を呼ぶ前に答えたのはミーニアだった。彼女はリスティに会えたのが嬉しいのか、受付から身を乗り出している。
「えっ、えぇ……。久しぶりね……」
リスティは、ミーニアに言葉を返す。視線はリラクのままだ。
「んっ?」
ミーニアはリスティの様子に訝しんだ。リラクとリスティの二人を交互に見て、顎に指を置いて考える仕草をした。
「もしかして……、お二人は知り合いですか?」
「ああ……、幼馴染なんだよ……。こんな所で会えるとは思わなかった」
「わたしもよ……」
驚きすぎて二人の反応が鈍い。口端がまだ引き攣っている。
逆に反応が良いのはミーニアだった。
「凄い偶然ですね! お話の中の主人公みたいです! 良かったらこのまま二人でお食事に行ったらどうですか? そして夜更けに宿に二人で泊まって……、きゃっ」
一人で勝手に盛り上がっている。
ただミーニアの提案はリラクにとっても渡りに船だった。半年前に村に戻ったときには、リラクと同世代の幼馴染が誰一人いなかった。近所に住む人の話で旅に出たと聞いて、ショックを受けたのだ。
「夜更けに二人で宿屋の下りは意味がわからないけど、リスティのことは気になってたし……、いいかな?」
「えっ……」
リスティの頬が赤くなった。ぼーっと、リラクを見つめる。
「わたしも行きたいな……」
そう呟いたがすぐに、
「あっ、でもユニオンの仕事があるから無理かも……」
と、視線を下に向け、肩を落とした。
「ユニオン?」
そのリラクの疑問に返答したのはミーニアだった。彼女は自分のことのように嬉しそうに話す。
「リスティさんは凄いんですよ。五十人以上が所属するカロウセで一番の大型ユニオン——ホワイトファングのハンターなんです。魔獣討伐成績もトップクラスで、ハンターギルド内でも期待の星なんです」
「へぇー、凄いんだな」
「そうでもないよ」
リスティはあまり嬉しくなさそうだ。
「だからリラクごめんね。一緒にご飯に行けないよ」
「そっか。じゃあ、仕方な——」
「——リラクさんに手伝ってもらえばいいんじゃないでしょうか?」
「はあ?」
突然のミーニアの提案に驚き、リラクは裏返った声を出した。
ミーニアはリラクの反応を無視し、困った表情でリスティに愚痴る。
「リスティさん聞いてくださいよー。この人、全然ハンターの仕事しないんですよー。いっつも魔石一個と薬草の束ばっかりです。リスティさんの爪の垢を飲ませてあげたいくらいです。だから、ちょっとこき使ってください。リラクさんは回復魔術師ですので、戦闘は微妙かもしれませんが、サポートは得意なはずです」
「えっ、あ、うん……」
ミーニアの勢いに仰け反りながら、リスティは頷いた
ミーニアは、リラクの方を向きニッコリ笑い、
「ということですので、しっかり働いてくださいね!」
「え~」
「嫌そうな顔をしないでください。リラクさんのためです。いいじゃないですか。可愛い子とご飯が食べられるんですよ? 安いもんです!」
「えっ? 俺タダ働きかよ」
「文句言わないでください。お金払っても一緒に行きたいという人も世の中にはいるんですよ? 少しくらい労働の喜びを味わっていただきたいですね!」
リラクはため息をつき、リスティに視線を向けた。
「いいのか?」
「まあ、確かに魔獣討伐の手伝いをしてもらえるなら助かるかな。……でも良いの? ご飯だけで手伝ってもらっても?」
横目でミーニアを見て、
「ああ、いいよ。手伝ってやるさ。任せてくれ、大船に乗ったつもりでいろ」
「でも、リラクさんの船は何か沈みそう……」
「うっせっ」
ミーニアのツッコミに悪態をつくリラクを見て、リスティはくすっと笑った。
お読み頂きありがとうございます。
本日中に三話までアップロードする予定です。
引き続きお読み頂けましたら幸いです。
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