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Bad End

今回はちょいホラーという事で一つ警告を。

それと訂正してる内に携帯では少し見にくくなったかもしれません。

申し訳ないです。

暇な時にでも読んでみて下さい。

それでは、たった一夜の短い物語にお付き合いください。

どうぞ…

 夜のトイレからの帰りにパパの部屋を覗いてみる。

部屋の中に人の気配は無く、静謐な空気を醸し出していた。

この頃パパの帰りが遅く一緒にいる時間が少ない。

ママが家を出て行ってから、ずっとそう。


その事を素直に寂しいと思う。

(もし、帰って来ていれば一緒に寝ようと思ったのに)

 友達には、今でもパパと一緒に寝る事なんておかしい。

って言うけど、パパもママみたいに出て行ってしまいそうで、

それが怖くて『ぬくもり』が欲しかった。


(それが『おかしい』事なら私は『おかしく』ても良い)

 私は帰って来ないパパの事を想った。

その時、玄関の方から『ガチャ』と音が鳴り私は駆け出す。

(パパが帰って来たんだ!)


 私が玄関の近くまで行くとドアの閉まる音と、カギが閉められる音がした。

でも、何処かおかしい……


(何で静かに閉めるの?)


 時刻は9時を指した所。

いつも私は起きている時刻。

パパが静かに入って来る理由が見付からない。


 私は、いつの間にか足音を殺すように近付いた。

玄関に人の影を見つけて息が詰まった。

パパはいつも帰って来るとカバンを自分の部屋に置く。

(その後に私に逢いに来るのに)

 しかし、その人影はパパの部屋に入るどころか、カバンのような物すら持っていなかった。


(……誰? なんで家に?)


 その人は階段を上ると私の部屋に入って行った。

私は震える手足を無理に動かし、ドアの隙間から部屋の中を覗き込む。

部屋の中では人影が今まさに、私のベットシーツを捲ろうとしていた。

(なん…………で……)

 訳が分からなかった。思わず声に成らない声が洩れる。

「……ッッッ!」

 頭の辺りを掻いていたその人は、私の声が聞こえたのだろうか。



 その人の顔がゆっくり右に向く。



体が固まってしまって動けない。

その間も時は過ぎていく。

心臓が高鳴り音を立てる。




首はさらに右に……





 握り締めた手が痛い。

今や人影の耳の形まで見えている。





さらに右へ向こうとする首





(止まって!!)





全ての音が消えた。






そして、ついに私の方に振り返――











 バクバクと鳴り響く音が、周囲に聞こえてしまいそうだった。

あの後、私は階段を駆け降り台所に逃げ込んだ。

手足の震えは止まらず、口を閉じていても『カチカチ』と音が鳴る。

その音があの人影を招き寄せてしまいそうで、私は必死に震える手で口を押さえた。

隠れる場所は無く、ただ部屋の隅にうずくまるだけで精一杯。


 その時『ギシギシ』と音を立てながら一直線にこちらに向かって来る人影があった。


(怖いのに、イヤなのに、どうして、どうして、どうして! どうして! どうして私なの!!!)


 私の気持ちなど、まるで関係なく近付いて来る人影。

震える私の2、3歩手前で立ち止まった。


 かなり大きな男だった。

影になっていて顔は見えなかった。が、彼が唇を持ち上げたように私には見えた。


(わらって……る?)


 男が後ろ手に持っていた『ナニ』かを出そうとした時、私は恐怖に駆られ近くにあった物を手当たり次第に投げつけた。

ボール、ピューラー、びん、ホーク、まな板、とにかく投げた。


 運良くナイフが彼の目に突き刺さる。

彼が絶叫する。

「あ゛があああぁぁぁ!」

 彼は自分の目からナイフを引き抜き床の上を転げ回る。


ナイフには白い球状の物に、

赤い糸の様な物と紅い粘液質な液体が混ざり合ってくっついていた。


あまりの悍ましさと恐怖に腰が抜けへたり込み、暖かい物が足から辺りに広がる。

片目を押さえた彼がこちらを見る。


 残った目は血走っており、空いた口からは唾液が伝い落ちていて、そこからは感情は読み取れなかった。

私は何とか後ろに下がろうとするが体中が震えて上手く行かない。

彼が立ち上がりこっちに来る。

(やだやだやだやだ)


(来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで!)

 恐怖に強張った口はカチカチと音を立てるだけで声が出ない。

私は小さい子がするようにイヤイヤと首を振った。

その時、目に飛び込んで来たのは一本の包丁。

手を伸ばせば届く距離。


 彼が空いた方の手を伸ばして来た時、私の硬直が解けた。

私は包丁に飛び付き振り向きざまに横に薙ぐ。

包丁は彼の服を浅く切っただけで、横の壁に刺さってしまう。

刃物を向けられた事で彼は怒ったのか私に飛び掛かって来る。


(抜けない……抜けない、抜けない抜けない抜けないよぉ!!)

 しっかりと食い込んだ包丁は私の力だけでは、どうしても抜けなかった。


 そうこうしている内に彼に押し倒されてしまう。

しかし、その拍子に私がしっかり握っていた包丁も抜け……




『ザクリ』と彼の首に突き刺さった。

彼は『ゴボッ』という音と共に血を吐き出し、ビクリと一度した後で動かなくなった。

私は彼が動かなくなっても、また動き出すんじゃないかと怖かった。

彼の下から抜け出しゆっくりと後ろに這う。

と、何が手に当たり身を震わせる。


見るとそこにはクマのぬいぐるみがあった。


(…………家にこんなのあった?)


 良く見るとクマは何かカードを持っていた。

そこには……


[HAPPY BIRTHDAY10歳の誕生日おめでとう]


そう、書かれていた。




(…………え?)



 急に辺りが寒くなって来た。

(何でこんな物がここにあるの?)



(だって……じゃあ、さっきの……)



 私は力無く彼が倒れている方へ顔を向けた。

月明かりに照らされ横になっていたのは、


私の良く知っている……

(ちがう! だって!)



 でも、良く見れば見るほど……

(ちがう! だって……そう! だって、今ここには居ないはず!)


(そうだから、だからコレは■■じゃない!)


 それでも口は勝手に開いて言葉を発する。




「……パ…パ…」


 そう、パパ。今までずっと見て来た顔だ。見間違えるはずは………………ない。


「……ぃやああぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァ…………」




 私は頭を掻きむしりながら叫んだ。しかし自分の声なのに酷く遠かった。



(ちがう、ちがう、ちがう、今頃は会社で頑張ってるはず!)

 でも違った此処で倒れている。


(私のせいじゃない!!)

 でも包丁で刺した感触は忘れられない。


(声が違った!)

 でも会話をした訳じゃない。叫んだ声を聞いただけ。


(パパはウサギのぬいぐるみを今度買って来るって言ってた!)

 でもこのカードは何?


(ちがう、ちがう、ちがうちがうちがうちがう!! 私はパパを■してない!)

 そう? 本当に? でも今日学校で血を失うと■ぬって……



 その時、私は気付いた。

涙で霞んだ視界にパパの手が映る。

微かに動いているその手を。


(まだ、まだパパは生きてる! ■んでない!)

 でも血を失うと■んじゃうよ。


(血、血が要る。何処かに血、血、血!)


 パパの首に刺さった包丁が目に入る。そこから血が出ている。


(とにかく血を止めないと!)


 私はパパに駆け寄り包丁を引き抜いた。

しかし、血は止まるどころかますます勢いを増す。


(なんで! どうして!)


 握り締めた手が痛い。

包丁を強く握ってしまった。

手から血が出て来る。


(血? ……! 血だ! これをパパに!)


 しかしどうすれば良いのか分からない。

そうしている内にもパパの血は流れ続けている。


(血の出ている所から入れれば良い!)


 私はパパの首の穴に指を突っ込んだ。

しかし指の隙間から血は流れてしまい、指を退けると先ほどより血が出て来る。

(どうして! ……どうすればいいの!)


(そうだ飲ませれば良い! 先生が言ってた。血は食べることや飲むで出来てるって!)


 今度はパパの口に指を入れた。が、血が出て行く方が明らかに多い。


(どうしよう……このままじゃ、このままじゃパパが、パパが!)


(血を増やさないと……)


 私は握り締めていた包丁を左腕に当てる。

そして一気に……




「あ゛あぁぁぁぁぁっっっっっっ!!」

 引き裂いた。


 痛みに涙が止まらず体中が震えた。

しかしそのお陰で血がたくさん出て来た。


それを急いでパパの口に入れた。

出て来る血の量が多くパパの口が血まみれになった。




 どれくらいの時間が経ったのだろう?

私の体は重く目も霞んで来た。

血も出て来る量が減っていた。


(血が血が欲しい。誰かパパに血を……このままじゃパパが……)


 その時、部屋に人影が二つ入って来た。


(良かった……あの人達にも血を少し別けて貰おう)


 私は安堵した。彼らが何か言っている。

「………………!!!」

「…………!!」

 しかし私には何を言っているのか聞き取れなかった。

聞き返すのすら億劫で、とにかく私は自分の用件を伝える事にした。


「お願い。あなたたちの血を私にちょうだい……」

 本当は大きな声を出したかったが何故か出ず、代わりに掠れた声が出た。


私は言葉と同時に包丁も二人に渡そうとした。


「……!!! …………」


 また、何か言っているが今度も良く聞き取れなかった。


しかしこっちの言葉は通じたのか包丁を乱暴に取られた。


(これでパパは助かるかな?)


 私は眠かったがパパがもう少しで助かるのなら、後少しだけ起きていようと思った。




そこで私の予想外の事が起こった。

なんと包丁は投げ捨てられたのだ。


(な、なんで……!)


 私が呆然としているともう一人が私をパパから引き離した。


(なんでなんでなんで!!)

(これじゃパパが!)


 私には信じられなかった。そう多分この人達は


(ワルイ人達だったんだ)


 私は後悔した。どうしてこの人達に包丁を渡してしまったんだろう。


「放して!! パパが! パパが!!」


 私はめちゃくちゃに暴れ狂った。しかし拘束は緩まない。


「放してよ! ……放して、放して放して放してー!!!」


 私の頭が顎に入り少し拘束が緩んだ。

その隙に私は抜け出しパパの元へと走った。


「パパ! パパ!!」


 しかし数歩も行かない内に足が縺れ転んでしまう。

私は上に感じる衝撃。


きっと、どちらかに圧し掛かられているんだろう。

首元で何かを叫んでいるその人の声はこんなに近くなのに

私の耳に入って来てるのに、何を言ってるのか分からない。

「……っ!!!」

「っ……!!」


 ただのノイズにしか聞こえない。

無茶苦茶に暴れようとして体に力が入らずに弱々しくパパに手を伸ばす。

これが本当に私の手なんだろうか。


何故か霞む視界で考えるていると、とても眠い。

体から力が抜けていき、私は深い深い眠りについた。



Bad End……


お読みいただき有難う御座います。


貴方、もしくは貴女は彼女の幸せを望んでくれますか?

もし願ってくれるなら、そのまま次の話しへ読み進んで下さい。まだ、この物語は終わっていませんから。

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