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日本語にうるさいおじさん  作者: 立川好哉
13/14

11.イカナスギィ!...イカナサスギィ?

 おじさんは動画サイトである動画を見ていた。男性が大きな枕に頭を預けていて、どうしてか裸で、仰向けになっている。汚らしくもどこか儚げな声を漏らし、最後には絶頂を迎えたような開放的な声を出して終了している。どうやらこれは絶版になった激レアな映像作品のようで、動画サイトにアップロードした人は違法だとわかってやったのだろう。再生数は一億回を超え、コメントも十万件以上寄せられている。このような映像作品が人気を博すとはなんとも奇妙ではあるが、作品の本来の主旨ではない面白さが多くの人の興味を引くようで、子供から大人まであらゆる年代の人がその作品を語っている。おじさんはまとめサイトなどで頻繁に取り上げられているその作品が気になって初めて見たのだが、終始真顔だった。

 

 さて、行く回数が多いことを『行きすぎ』と言うが、それの否定は『行かなすぎ』なのか『行かなさすぎ』なのか、ということを今回は考えたい。

 多くの人は『行かなさすぎ』を使っているのではないだろうか。しかし『行かなすぎ』と言われた時に明確な理由をもって『間違いだ』と言えるだろうか。どちらも正解ということにしていないだろうか。確かにどちらでも話が通じるだろうので目くじらを立てて咎めるようなことではないのだが、日本語を正しく使うおじさんとしては放っておけないことである。

 

 正解を発表すると、『行かなすぎ』である。理由は、『行く』が動詞だからである。『行かなすぎ』の『ない』は動詞の未然形につくので『な』になり、『なさ』とはならない。動詞ではなく形容詞として『ない』を使う場合、たとえば『金がない』に『すぎる』をつけるときは『なさ』になるため『金がなさすぎる』となる。『行かない』の他にも動詞『使わない』『食べない』もそれぞれ『使わなすぎる』『食べなすぎる』となる。


 おじさんは言うのも書くのも『行かなさすぎ』で慣れているため、『行かなすぎ』とすることに違和感があるのだが、正しい日本語だと知れば修正を厭わない。もし肯定が否定になる世界におじさんがいれば、『イカナサスギィ!』と言う男優に『イカナスギィ!だろ!』とツッコミを入れてしまうだろう。

 

 後日おじさんがもう一度あの映像を見ようと動画サイトを訪れてみると、運営によって削除されていた。そこで競売サイトで値段を調べてみると、目玉が飛び出るような価格になっていた。

 タカスギィ!


次回最終回です。

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