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緑の街

 タイニー・ロベリア。

 街の名前は御者に教えて貰ったが、それ以外のことはとんとわからなかった俺は、物珍しさからきょろきょろと辺りを見回しながら歩く。

 緑の街という二つ名に誤りはなく、全体的に植物が多い。まぁ、緑の街という名前に反して、冬の近さから木々は紅葉しており、赤の街という様相だが。

 家は木製が多いどころか、ツリーハウスよろしく木をそのまま家にしている事すらある程だ。

 舗装は石畳だが、街道の脇には大きな木が何本も植えられている。

 特段大きな建物なんかはないが、しかし街の中心にある巨大な木……神話にきくユグドラシルをかくやと言う規模で天高く聳え立つ樹木が街の特徴みたいだ。街の上空を天井のように、唯一緑色な葉っぱが覆っている。

 俺が街に入った門から、中心にある木までは真っ直ぐに通りが伸びており、沢山の人が行き交っている。

 さっきまで俺を乗せてくれていた御者も、この通りの何処かの店に商品を卸すのだろう、広い道の傍らに馬車を停めて麻袋を持ち、建物の中に入って行くのを見た。

 道行く人は人だけでなく、蜥蜴の様な鱗を生やした異形や、ファンタジーのど定番と言える耳の尖った俗に言うエルフだっている。人は寧ろ少なく、エルフが大半を占めているくらいだ。


 通りには沢山の店があって賑わっているが、俺としては取り敢えずご飯を食べたい。

 吸血鬼という名の通り俺の主食は血液である。あまり長く飲まないでいると、死んでしまうらしい。

 しかし今俺が言っている食事というのはそれとは別で、お腹が空いたら固形物を口に入れたいのは吸血鬼も共通の心理。栄養にはならないが、お腹は空くのである。栄養とは関係ないので餓死こそはしないものの、お腹が空いた時の苦しさは言うまでもなく、老人の家を出てから暫く何も食べていないのでいい加減お腹の空きも誤魔化せない。


 食事処を探して、じぃっと通りに出ている店の看板を見て回るが……


「……読めねえしなぁ」


 がっくりと肩を落とす。

 やはり片っ端から店の扉を開けて行くべきかな、何て思っていると。

 丁度俺の通った道の横……暗く光も差さない路地裏から、がしゃん! と何かを壊す様な音が聞こえた。

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