検問を抜けると
そんなこんなで暫くの間お世話になった俺は老人の家を出て、俺は今馬車に乗り、検問を待っていた。
馬車は、街に繋がる道をトボトボと歩いている途中で拾えたもので、老人から貰っていた路銀の銀貨数枚(価値はイマイチわからない)を見せると、御者のおっさんは一枚を摘み上げて、「乗りな」と言った。
どうやら、どういう理屈なのか話す言葉は何の問題もなく通じるらしかったが、文字は読めなかった。まぁ、理屈なんて考えても仕様がないんだけど。
時折馬車が思い出したように進み、とうとう門の目の前までたどり着いた。
羊皮紙と羽ペンを持ち、インクを制服の一部に備えた男性が駆け寄って、御者に話しかける。
「失礼、長旅ご苦労だった。早速だが荷物の内容を拝見させて貰う。先立って載せている物を聞いておこう」
「馬車の後ろに繋げてある荷台に、保存食の肉の塩漬けと、冬も近いですからな、動物の毛皮で作った服と靴を。後は見ての通り、道中で拾いましたお客を一人」
話を聞くと並行して羊皮紙に何事か書き込んでいく男性に、同じ服を着た何人かの屈強な男が荷台に駆け寄って、麻袋に包まれた中身を確認し始めた。
暇だったので作業をじっと見て、大変そうだなぁなんて思っていると、不意に
「申し訳ありませんが、危険物等を所持していないかボディチェックを行いたいのですが」
そんな事を言われた。
今の俺の服装はと言えば、日光避けのローブは相変わらずとして、中に老人に貰った女物の服を一式着ている。全裸と言うわけではない、
……のだが、此れが結構な物で、胸元は空いてスースーするし、お腹も出ている。短パンにはソックスと連結するガーターベルト。冬も近いと言っていたのは御者の間違いでは無いらしくだいぶ寒い気候には辛い、露出の多い一品だ。
で、此れで何が困るかと言うと、普通に他人に見せるのが恥ずかしい、と言う所だ。
ましてまだこの身体に慣れない俺は、こんな露出の多い服だけは勘弁して欲しいと頼み込んだのだけど、これしかないと言われて肩を落とすことになった。
仕方なく立ち上がってローブをはだけると、大きい胸が冷たい空気に触れる。
日光に当たった事による脱力感と、何だか恥ずかしい所を見られているような気がする羞恥心とが入り混じり、何というか訳が分からない。
短パンにはポケットも無かったし、特に隠せる場所も無いだろうという事で、ボディチェックは潜り抜けられた。
「問題ありません。良き旅を」
制服を着た人達が軽くお辞儀をし、御者が馬を走らせ門に入る。
「あ、此処迄でいいよ」
声を掛けて馬車を止めてもらい、地面に降り立つ。
重い石畳が、ブーツとぶつかってカコンと音を立てた。
此処が俺の旅の始まり。
確か街の名前は──緑の街、タイニー・ロベリア!