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二日目

散々悩んだ結果こういう形に。なんかすいませんでした

 風呂を出た俺は力無く部屋に戻ると、軽く跳躍してベッドに飛び込んだ。

 蒸気する顔を力無く枕に押し付ける。


 さて、あの後特に何もなく──なんてそんな都合のいいことがある訳もなく、背中を流し合うやら石鹸で滑って云々あったり、後で冷静になって顔を合わせると間違いなく気まずくなるような羞恥プレイの連続に、もうなるようになれと付き合った結果、死にそうになっていた。寧ろなんで今生きてるんだろう。そうか、此れが吸血鬼パワーか……!いや、絶対に違うな。

 恥ずかしさって人を殺せるという事を思い知る日が来るとは思わなんだ。

 死因は──なんて書かれるんだろう。恥ずか死?


「死ぬ……死ぬ……」


 いや、俺本当は男だから中身だけみたらセーフかもしれないけどさぁ! 見られたら恥ずかしいし相手が恥ずかしそうにしてると余計死にかけるんだよ! ただでさえ元引きこもりで人との関わりに疎かったのに、リハビリでダッシュさせられてるようなもんだぞこれ、どうすんだ!

 あとなんか、この外見になってから中身がちと引っ張られている気がしないでもないんだよ。まぁ、そこは正確にはわからないけど。


 足をバタバタさせて無駄に埃を巻き上げ、ゴロゴロと転がってシーツに皺を作る。

 そうしていると、次第にうとうとと微睡んできて、俺は気づかない内に意識を手放していた。

 長かった、長くて楽しかった一日目の終わりは、回想をするわけでも想いを馳せてみるわけでもなく。とても呆気ない形で告げられたのだった。



 ◇◆◇◆◇◆



 目が覚めた。

 朝日が眩しくて……というよりは、吸血鬼の体に容赦なくガンガン降り注いで来る日光の気怠さに思わず目が冴えた。

 宿は木の中にあるが、外周に接する形で部屋が作られているので普通に窓もあるし、街も見える。昨日の夜に街を見下ろしたときは真っ暗で面白くもなかったが、朝になってこうして見てみると、高さもそれなりにある立地条件も相まってなかなか景色がいい。街を一望出来る。白亜の建物達、行き交う人々を俯瞰してみるのも、また違った趣がある。


 因みに着替えはまだ買えてないので相変わらず、あの老人に貰った服を続けて着ている。一日中着ていた服だし洗いたい気持ちはないでもないんだが、洗い方がわからないのと洗っちゃうと代用品が無いのとで断念だ。


 不意に、ドアがコンコン、と叩かれて軽くなる。


「フィリアさん、起きていますか……?」

「ん、起きてるよ。待ってな、今開けるから」


 鍵を回してドアを開けると、まぁ案の定、俺よりも背の低い少年──ナーミアが、そこに立っていた。未だにどこか恥ずかしそうだが。


「おはよう。今日も宜しく頼むよ」


 なんだか話が進む気がしなかったので俺から笑いかけ、優しく言葉をかけてやると、ナーミアは少し慌てたように手を彷徨わせ、


「あ……はい! 任せて、くださいっ!」


 元気よく、俺にそう言った。

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