俺の物語
これは、俺の物語だ。
主役は途中で変わるかもしれない。
それでも此れは俺という個人の、ただ楽しかった物語。
だから始まる前に……不快かもしれないが、俺の話をしよう。
棺桶のようで腐臭の絶えない部屋に、俺はいた。
まぁ、ニートの部屋なんてみんなそんなものだ。一応高校に籍は置いてたけど、行かないのではニートと言って差し支えない。
理由はまぁ、確か虐められてたとか……そんな理由だ。特に取り立てて騒ぐような事でもない。騒いでいるのは俺だけで、その騒音にも意味はなく、俺は一人で閉じこもった。
進学校に一人っ子の俺を入れた母は、俺に人並みの期待を込めていたらしいが、こうなってしまってからは何の干渉もなかった。夜、気づけばドアの前に食事が置いてある、くらいか。
その間俺は何をしていたのかというと……ただひたすらにゲームをやっていた。
いつまでもこうしていられるわけはないと分かっていつつ、しかし打開案を考えて実行するような根気もなく。俺はひたすら、ペンではなくゲームのコントローラーを持ち続けた。
ハマっていたのは、オープンワールドゲームというジャンルだ。
果てしなく広がる世界。見たこともない景色、人、街……全てが目新しい。狭い部屋の中にあって、其処だけはどんな現実より広大だった。
俺はこんな世界なら、旅をしたいと思った。
面倒なしがらみも、後ろめたさもなく、ただ自由に足を進めて、見たいものも見たくないものも、全てを享受出来ればどれだけいいだろうと、思った。
やがて、俺は死んだ。
世界で一番無駄な死だったと確信があるほど、あっさり。
理由は、わからない。寝て起きようとしたら、起きられなかった。それだけだった。
そして、俺は起きた。
起きたら、目の前には緑色の葉が、天井のように広がっていた。
それは、俺がどれだけ願っても手に入ることのなかった、リアルだった。
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