眼下の悩み
そんな訳で、俺はナーミアに、前もって決めていた行きたい場所を伝えることにした。
「服を売っている店に行きたいんだけど……」
「服……ですか? ええと……流石に銀貨7枚だと厳しいんじゃないかと……服はそこそこ、高級なものですし」
申し訳なさそうに目を背けるナーミア。だが、俺もただで引き下がる訳にはいかない。
「安いのでいいんだ、中古とかでも」
「ない事はない、と思いますけど……どうしてまた?」
「えー……っと……ずっと此処に居座る訳じゃないし、旅に着替えは必要だろ? 路銀はどうせ必要だから何処かで働く気もあるし、どうしても金が無いならその後でも良いけどさ」
本音を言うと、この胸元とお腹がガッツリあいている、中身が男の俺としては見る分には眼福なのだが着るとなると恥ずかしくて仕方がないこの服とオサラバしたいのだ。一秒でも早く。
言ったことに嘘はないし、最悪また旅に出る直前に揃えるのでもいいんだが、早くできるなら早いほうが断然、いい。シンプルに寒いし。
「……うーん。それならお金を稼いでからでいいと思いますよ。質が悪い麻服とかだと、肌がチクチクしますし」
「そうか……まぁ、しょうがないな」
ぶっちゃけると全力で溜息を吐きたい気分だったが、ナーミアに気を遣わせてしまうかもしれないのでやめておく。
「他に行きたいところとかはありますか? 案内人として、出来るだけ希望には添いたいと思いますが」
「んー……いや、任せるよ。折角案内してくれるってのに、行きたいところを言うだけじゃ地図書いてもらうのと変わらないだろ? 案内ってからにはやっぱ、知らないようなところを行かせて貰わないとな」
「あ、はい! 助かります!」
ナーミアが街の地図を広げて、頭を悩ませるのを、何となく微笑ましい気持ちで俺は見つめていた。
不意に、思い出したようにナーミアが顔を上げた。
「ところで、フィリアさんは今どんな服を着て──」
「さ、さぁ早く行こうか! 地図なんて歩きながらでも見れるし、な!」
やっぱりさっさと着替えないとダメだこれ!!
短いので後でもう一話更新します