〜Tatoo〜
「さて、新しいスーツを作るためのデータは揃ったけど…。」
杏が手術台横のパソコンをいじりながら言う。
「禊か」
バレンタインが答える。
「それじゃあここに横になって」
杏の言葉に従い柚貴は手術台にうつ伏せで横になる。検査衣の後ろを開く。
「これから君の背中にナノマシンを埋め込んでいくよ。なに、別に怖くないよ、それに痛くない…」
柚貴は目を瞑りながら、杏の安心させるような言葉に耳を傾ける。
麻酔が効き始め、意識が朦朧としてくる…。
「……。」
「あ、起きたね」
杏果の声が聞こえる。
うつ伏せで寝ていたのがいつのまにか仰向けに寝ていた。
背中に何かが埋め込まれているような違和感を感じる。
側にある姿見の鏡で背をみると、背中には月下美人の花と十字架、鎖、三日月、眼、そして天使の片翼が絡み合ったような模様が彫られていた。
「美しい…。この紋様はね、人によって浮かび上がってくるものが違うの。まるでその人を象徴するかのよにね。さて、手術はこれでお終い。」
杏はそういうと、黒いボンテージのライダースーツのようなものを持ってきた。
「これが君のバトルスーツだよ。被服者の戦闘能力と筋力を大幅に増幅させる、対刃耐圧・耐熱耐寒仕様のバトルスーツだ。試しに着てみて?」
柚貴はバトルスーツに手を入れる。
サイズはピッタリのようだ。
体のラインが強調されるフォルムで、表面はツヤがあり妙に艶めかしく映る。
「うん!よく似合ってる!」
杏が手を合わせて柚貴の体を眺める。
「それじゃあ、行こうか。アタシ達の隠れ家に。とりあえず、アンタの落ち着き場所はそこになるよ。」
バレンタインはそう言って、柚貴をラボの外へと連れ出した。