6、炎旋
シルリアを探すのは案外簡単だった。
なぜなら戦場は荒野と化していたからだ。
クレーターや土の山、薙ぎ倒された木などが散乱するその場所で、シルリアとスライムは対峙している。
シルリアの息は少し荒くなっており、スライムはあのときより少し小さくなっている。
「案内ご苦労さん。」
ナッシュはそう言って俺を馬から降ろす…というか落とした。
「っ!何す…
言いかけた文句は相手に届かないことを知り、途中で止る。
ナッシュはもう、馬を駆けさせていた。
※※※
敵の攻撃を防ぎ、出来るだけ遠くへ弾き飛ばし遠距離の炎系の魔法で反撃。
繰り返し
繰り返し
繰り返し
どれくらい経っただろうか、少し疲れてきた時に蹄の音が近寄ってきた。
ふ、と笑みが浮かぶ。
「せいやっ」
馬は通り過ぎ、後に残ったのは一人の大剣を構えた男。
「お仕事ご苦労様。しばらく足止めしてもらえるかしら。」
「出来るだけ早くな。」
淡々とわずかな会話をする仲間。
※※※
シルリアは集中し強力な魔方陣を作り始める。
ナッシュは大剣の腹でスライムを飛ばす。
鈍色の大剣はとても重そうで、何かの魔方陣を使いながらそれを軽々振り回すナッシュは力強く見えた。
「準備が出来たわ。」
シルリアの足元には半径一メートルほどの円形をした精緻な魔方陣が光っていた。
その声を聞いたナッシュは一直線にシルリアのほうへ走り、横を通り過ぎて走り続けた。
スライムもナッシュを織っていたが、シルリアの近くで一瞬止まる。
「薙ぎ払うは焔にて、円に習いて拡がり、尽きるを元に隣を焼き尽くせ―炎旋―」
シルリアを取り巻くように風が起きる。その風は突如赤くなり広がっていく。
赤い風は地を焦がし、触れた草木を灰へと変えていく。
「おー、またえらいもんぶっ放しとんなー。」
いつの間にか隣に来ていたナッシュが言う。
赤き風はまだ拡大し、スライムを飲み込んで悠斗たちの近くまで迫り、熱風となって通り過ぎた。
赤い風が消えた後、シルリアの周囲二メートルほどでは隆起していたはずの地面すら蒸発していた。
※※※
「相変わらず強いなあ。」
「さすがに今回は疲れたわ。」
「そんなんで大丈夫なん?夕飯まだやろ。」
「大丈夫よ、何のための連れだと思ってるの?」
荷物運びの次は炊事。つくづく俺は雑用係として扱われるのか。
「それよりそっちこそ大丈夫なの?馬、どこかに行ってしまったわよ。」
ああー!と声を上げたナッシュがどこかへ行ってしまった。
そういえば、あの日と何の装備も無く着の身着のままで戦っていたんだな。普通の服だけで何も持ってない。
「すごい魔法だったな、あれなら援護なしでも勝てたんじゃないか?」
「無理よ、あの規模の魔法を使うとなると時間がかかる。つまり、準備中にやられちゃうわ。」
「なあ、俺も手伝えないか?」
「?…どういう意味?」
「その…俺に戦い方教えてくれないか。」
「やりたいのなら夕食の後にやらせてあげるわ。」
覚悟を試されたり、試験を受けるのではないかと思っていた悠斗はあっけなくOKされたのだった。




