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27、魔力って……(涙


ん。


目を開けると外は明るくなっている。


気付かない内に寝てしまっていたようだ。


「おはよう。」


その声に横を向くとユウトがいた。


「おはよう。」


ユウトに挨拶を返す。


するとユウトは何かに気付いたように、あ…と声を漏らした。


どうかしたの?と訊くティルに近付き、その手を頭の方に伸ばし、


「髪、少し跳ねてるよ。」


そう言って撫で始める。


少し赤くなりつつも自分で直そうとすると、ユウトは動かないでと制止する。


手櫛で髪を梳かれる感触を満喫しつつ、ユウトの手って大きいな…などと考えていると、


「ティルの髪って綺麗だな。」


完全な不意打ち。


「ぅえっ!?!!?」


奇妙な声をあげてしまったことを気にせずユウトは髪を撫でつける。


一層真っ赤になり、昨日の夜に匹敵するくらいカチンコチンに緊張するティル。


悠斗はそんなティルの変化に気付かず、ティルの頭を挟んで反対側まで身を乗り出して短めの髪を梳く。


自然、悠斗はティルを抱いているような格好になり、ティルの心臓は跳ねあがる。


(はぅぅ…………早く終わって………いや、終わらないで…………ぅぅ…………ユウトが………こんなにも………近くに……………ふみゅぅ…………キレイって………髪………)



「うん、これくらいかな。」


髪を整え終わったのか、満足気な声。


ただ、そのままの体勢で言ったため悠斗の口はティルの耳元にあり、吐息がかかったりしてティルの心臓は更なる暴走を起こす。


ようやくティルから離れた悠斗は「先にロビー行って待ってるから、着替えたら朝食にしよう。」と言い残し、部屋から出て行った。


そんなこんなで不整脈気味なティルの一日は始まる。




※※※




「おはようございます。」


ミルトが元気な声で挨拶する。


「おはよう。昨日の夜は大丈夫だった?」


何気無いティルの発言だったのだが、一瞬にしてミルトから笑顔が消える。


「あ……………………………う…ぅぅ………………ヒック…………ふぇ……ふえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!」


突如泣き出したミルトはタックルの如き勢いで悠斗に飛び付く。


突然の号泣に戸惑い慌てるティル。


一方の悠斗はそこに弟の面影を感じ、どうしたの?と優しく背中を叩きながら訊く。


人間とは心音に近い音に安心感を得るもので、悠斗の背を叩く速度は約一秒に二回。その後、落ち着くに従ってゆっくりとテンポを落としていく。


ポンポンという優しい震動にミルトは次第に泣き止む。


「………実は……ヒック…お姉ちゃんに……二時間くらい問い詰められたの………………ずぅっと…魔力を当てられながら……スン……」


その怖さを知る悠斗は言葉に詰まる。


「ねえ、魔力を当てるってどういうこと?」


一人知らないティルが不可解そうな顔をする。


「そ、そのまんま、魔法になってない魔力を放出すること。」


「……それって単なる浪費というか…無意味じゃないの?」


あの恐怖は滅多に味わえるものではなく、かといって味わいたいものではない。


ティルに想像がつくように説明したいが、あの絡み付くように拒絶される感覚は口では上手く言えない。



「何をしてるの?」


と、そこでやってきたのはそもそもの原因。


「魔力を当てるってどういうことなのか分からないから聞いてたんだけど。」


この話題とシルリアの登場の二重効果でミルトは完全に固まっている。


「そう。なら実際に体験してみる?」


知らないとは恐ろしいものだ。


悠斗は生存本能に従いミルトを抱えて身を翻し、一目散に逃げ出す。


その背後で、一瞬だけ強烈な違和感が吹き荒れた。





※※※





一行はミルトを先頭に、汗をかいてフラフラと歩いているティル、それを手助けしている悠斗、最後にシルリアの形でかれこれ10分歩いている。


ティルは汗(冷や汗)を拭い、上手く動かない足(残留する恐怖のせい)でゆっくりと歩く。


「ユウト……魔力って怖いんだね…」


あの魔力の開放はティルのココロに多大なダメージを与えたようだ。


「ティルお姉ちゃん、頑張って。もうすぐ着くから。」


ミルトはそう言って小さな手をギュと握る。


因みに悠斗はユウトお兄ちゃんと呼ばれている。


悠斗の名誉のため弁明しておくが、それは断じて悠斗の趣味ではない。


確かにミルトは可愛らしさ溢れる小さな子供で、その系統の人なら感激のあまり涙を流し喜びそうな外見を持つが、当初『む〜…じゃあ、お兄ちゃんって呼ぶね。』なんて言っていたミルトを説得し何とか今の呼び名にしたように、悠斗は幼女趣味ではない。


「ねえミルトちゃん、具体的にはあとどれくらい?」


「もう見えるよ。ほら。」

丘を登りきった四人の前に現れたのは、ウイグルのキセム郊外シルリア邸を越える豪奢な洋館。


「ね、早く早く〜!」


ミルトはてててててと駆けていく。


大きな家を見て、ふて感じた疑問。


「なあシルリア、お前の家ってどうしてこんなにもデカいんだ?」


「実家?それとも自宅?」


「両方。」


「避難民を受け入れるためよ。キセムにある方は北の山岳地帯の村の人が冬の間に来たりするから。」


「こっちは?」


「スビックも大きいとはいえ木の柵しかないもの、害獣や外獣が出てきたら逃げ込む人はいるわ。それに、この辺りにはもう一つ村があるから。」


「何重もの木の柵よりもシルリアの魔法の方が頑丈ってことか。」


「そうよ。それに大は小を兼ねると言うように大きくても特に不都合はないわよ。」


「掃除とかは?」


「自宅は私が魔法で済ましているわ。実家の方はミルトが多くの手伝い(てんし)を喚んでやっているはずよ。」


「…そういう時は召喚してもいいんだ。」


「力そのものはどうでもいいの。問題なのはその力にあの子の意思が正しく通らない事だけ。力の使用を強要されたり、激情に駆られ暴走したりしなければ使うのは別にいいのよ。」


案外、妹想いな姉は音もなく歩きつづけた。




どうも、読んでいただきありがとうございます。


今回はちょっとした募集を行おうと思います。


20話以降、何回も書いている悠斗+ティルの小話の内容について、こういうのが読んでみたいという要望があったら感想またはメッセージにてお寄せください。


ぜひお願いします。…そろそろネタが尽きそうなんです。


では、これにて。

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