20、揺り篭にいた子
目を覚ますといつも通り、見慣れない天井が見える。
いや、いつもとも違う。
見慣れないどころか、完全に見覚えの無い天井だ。
眠りに就いた時にすら見た事のない天井に疑問が湧く。
「ここはどこなんだろ。」
上体を起こして見回して昨日までいた宿とは違う事を確認する。
「ええっと…」
昨日はキセムで外獣たちに襲われた。
そして外獣はみんなシルリアが倒して。
シルリアはそのままどっかに行っちゃって。
ボクは足をくじいたからユウトにおぶってもらって。
おぶってもらって…
「あれ?」
そこから先の記憶が無い。
「ええっと…」
ユウトにおぶってもらって……
「あ、寝ちゃったのか」
そうだ、眠ってたから記憶が無いんだ。
「ん?寝ちゃった?」
寝ちゃったってことは、その後何があったのか分からないという事で…
「っっっっっ!!!」
急ぎペタペタと体を触り着衣の乱れがないか調べる。
こうして何事もなかったティルの一日が始まる。
※※※
「おはよう。」
「おはよう。」
あの後見つけた書き置きに従いリビングにいたティルに、ちょうど起きてきた悠斗が挨拶をする。
「何か食べたいものとかあるか?」
「いや、何でもいいよ。」
「了解。」
しばらくするとユウトがトーストにスクブランブルエッグ、マッシュポテト、茹でた野菜を並べて持ってくる。
「随分と慣れた感じだね。」
「ああ、ティルはどうだ?ぐっすりと寝れ……たみたいだけど。」
「ぁぁ、うう……そ、そうだけど。」
ティルは頭を抱えたくなるような羞恥心に頬を赤く染める。
(ああ、どうしてボクは寝ちゃったんだよ。…ユウトにおぶってもらったままで!………でも、なんだか気持ちよかったし……ユウトの背中、温かかったし……震動は心地好い感じだし……心音とか聞いてるうちに体から力が抜けちゃって………落ちないようにキュッてしっかり抱きついたけど…………っておもいっきり抱きついちゃったよ、ボク!…………ハズカシイ…………それにしても悠斗の体…なんか良かったな……筋肉の感じとか……芯が強そうだし……ゴツくもないし……背中は広いし……温かいし……安心できるし……ユウトの臭いがするし…………ぁぁああボクは何を考えてるんだ!)
限界値まで至った羞恥心を隠すため食事に集中し食べまくるティル。
「そんなに急いで食べなくてもいいぞ。」
失笑しつつ悠斗もトーストを口に運ぶ。
「ティルの荷物は後で運ぶとして、他に何かやる事とかやりたい事とかあるか?」
「ううん、特にない。」
「そうか。」
ふと、確かめたくてティルは口を開く。
「昨日、ボクが寝ちゃってからユウトは何をしたの?」
「帰ってきて、ティルを適当な部屋に寝かせて、夕食食べて、シャワーを浴びて、寝たくらいしかしてないな。」
「そう。」
思い出した事を淀みなく言ってるみたいだし、本当にそれくらいしかしてないんだろうな。
ティルが安心したところへ、
「そう言えば、ティルがやけにしっかりしがみついていて離れさせるのが大変だったぞ。」
再燃―動揺
「服とか握ったまま手を開こうとしないし。」
羞恥―混乱
「掌に指を乗っけるとその指握ったりもしたな。」
発熱―緊張
「あと寝顔も結構可愛かったな。」
恐慌―崩壊
「…ぅ……う…」
「どうかしたか?ティ…」
―大爆発―
「ぅぅううああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!?!?!?!??!?!!?!……っ…!?!!?!?!?!???!!?!!!」
恥ずかしさのあまり完全にパニック状態に陥り、リビングから脱兎の如く逃げ出し、自分が寝ていた部屋に戻りドアを閉め、ドアに背を預けて腰を落とす。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」
(ユウトが……力が抜けて……寝顔で……背中に……眠くて……キュって……温かくて……心音とか……広くて……震動が……可愛くて……安心して……短剣で……)
言語中枢すらも収拾がつかなくなり、ただあたふたとしつづけるティル。
(落ち着け、ボク。1+1=1。1+2=1。1+3=1。 ってああ!もう、落ち着かなきゃ。)
すぅ、はぁ〜
(深呼吸して、一旦ユウトの事は忘れて。)
コンコン
「おーいティル、どうしたんだ?大丈夫か?」
「!?っ!!?!?!」
やっと落ち着こうとしたティルの心は背後からのその一声で全壊。
「だ、だ、だ、だゃいじょうびゅ」
「そうなのか?それにしては慌てすぎていた気がするんだが。」
「も、問題にゃ、なぃ」
「じゃあ荷物運んでくる準備ができたらリビングに来いよ。」
コツコツコツ…
足音が遠ざかっていく。
ティルはフラフラと歩き、ベッドに倒れた。
(ダメだ…恥ずかしい……顔が熱い………心臓が暴れてる…………もう駄目……)
結局、ティルは顔が真っ赤のまま30分後に荷物を運びに行くことになる。
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今後も異世界と外世界をよろしくお願いします。




