16、魔導書と襲撃者
「合計8ドル75セントになります。」
パン等々を買い支払いを済ませる。
通貨の単位も例の地球の一国のものと一緒だったのに気付いた時はかなり驚いたものだ。
無言で支払いを済ませ店を後にするシルリアに着いていくため慌てて荷物を手にとる。
しばらく歩いていると(無論、空魔の解書を読みながら)
「はぁ…」
シルリアが溜め息をついた。
「どうかしたのか?」
「後ろから尾行が15人ほど、殺気も隠しているつもりみたいだけど少し漏れてるわね」
億劫そうに応えるシルリア。するとさっきの溜め息の主成分は呆れかな?
普段なら溜め息なんて出さないだろうけど、やはりまだ知識欲スイッチはONのままみたいだ。
さすが、名前はもう忘れたけどどっかの凄い魔法使いが書いた魔導書だけあって効果が長時間続くなぁ。
というか魔導書の中身ってどんな事が書かれているんだろう?
横から覗いてみる。
(うっわ、やっぱり文字も英語だ。つか最初に街に出るまえここの公用語を強制的に覚えさせたみたいだけど、ちゃんと文字の方も読めるんだ。
えーっと、展雷場という名の魔法か、自分を中心に半径500メートルの範囲で継続的に強力な電流を流す…攻撃範囲広っ!!ってかこれこの前の護衛の時に使ってた魔法じゃん!!あの時の攻撃範囲は30メートル位だったから、やっぱりあれはかなり手加減されてたのかよ!?)
ちなみにカッコで囲った部分は悠斗が小声でブツブツと呟いていた部分なのだが側にいたシルリアは指摘などしない。
尾行の方はどうせシルリアが何らかの手を打つだろうから気にしないでおこうと思っていた悠斗は、いつの間にか尾行の事を完全に忘れてしまうのだった。
※※※
「あの女で間違いないな」
「身体的特徴などはパックアップの報告と合致しておりますし、何より堂々と空魔の解書を広げていますので間違いは無いと思われます」
「結界の類はあるか?」
「計測したところ防御結界があの女の周りに展開されています」
「種類は?」
「系統は風、硬くはありません、しかし弾性が強く簡単に破れるものではないでしょう」
「ならば詠唱魔法で消すか……いや、先の戦いでは10人がかりで挑み結果は未だに続く悲痛な叫びのみだ。あれを使うぞ。」
「…!?あれはまだテストが終わったばかりでは!?」
「なら今日が初の実戦投入の日になるだけだ」
「…わかりました。どれを起動させますか?」
「Dタイプを二体、Kタイプを五体で十分だろう。無詠唱魔法を打ち目くらましをしてその隙にあれを出す。開けた場所に出たら開始だ」
「は!」
「このまま行けば北広場か」
※※※
大通りを北へ。目の前に広がるキセム北広場では子供たちがワイワイ走り回っている。
キセムには中央広場を中心に東西南北それぞれの門との間に東広場、西広場、南広場、北広場がある。
シルリア邸はキセムからみて北西にあり、西門からでも距離は変わらないのだが、シルリア曰く「北門の方が落ち着いているのよ」だそうで、いつも北門を通って帰っている。
北門が静かなのは東西にはキセムから続く街道があり、南は大草原や小さな森などの安全な場所であるのに対し、北には山がそびえ害獣が群れていると言われていて利用者が少ないのが原因である。
両手の荷物を持ち直し、また一歩踏み出し
バン…という音と共にシルリアのいた方向から衝撃が襲いかかった。




