15、世界のエネルギー
「じゃあ、私は修復用の儀式魔法をするからユウトは魔力制御の練習してて。」
もうすぐ修復し読むことができるようになるからか、シルリアは感情を含む声を残して家の奥へ行った。
残された俺はと言うと、数日前から行っている魔法の練習をしようと思っている。
やるのは魔力の制御。
初日、シルリアが悠斗に魔力を流し込んで感触を教えて以来、自分の中で魔力を転がすことはできるようになった。
しかし、まだできないのは魔力の放出だ。
魔力とは世界のエネルギーの様なものらしい。
例えるなら無機物や有機物に似ているだろう
無機物を有機物に変える植物。
有機物を使い動作を起こす動物。
使われた有機物を分解する微生物。
これらを魔力に置き換えると、
空気中の魔力を取り込み使えるようにする人間。
取り込んだ魔力を使い事象を起こす魔法。
使われた魔力をもとの気中魔力に戻す時間。
こんなところだろうか。
そういう訳で魔法の行使に必要な事の一つ目がこの魔力の放出らしい。
成功の経験は無いが、今回は成功するだろうと思う悠斗。
それは自己暗示や自惚れではなく、
「あんな強烈な魔力に当てられたらなぁ。」
キレたシルリアの暴力的な魔力。
それは当てられていた悠斗に流れ込み、保有量限界を越えて勝手に放出されていった。
そうして魔力放出を長時間、嫌応なく感じていたために今回はできるとほぼ確信する悠斗。
溢れ出すというより押し出すように、右手に魔力を次から次へと押し込み吐き出させる。
「やっと放出できるようになったのね。」
ふと目を向けるとシルリアが胸の前で両手を使い大事そうに魔導書を抱えて、とても幸せそうにニコニコと笑みを浮かべている。
知識欲スイッチONを通り越してオーバーヒートしているような感じだ。
…魔導書の凄さは十分に伝わるのだが、それ以上に今まで持っていた完璧人間というイメージが崩れかねない程、その姿はかわい…
「どうかしたの?」
小首を傾げて問うシルリア。その動作に合わせて長く綺麗な銀色の髪がサラリと動く様子は清浄な雰囲気をアピールしており、白い肌や整った顔立ちの魅力が引き上げられていて思わず視線は釘付けになり………って落ち着け俺!彼女の根元は変わってないんだ!!見とれてるな!!!今までのイメージを保持しろ!!!
!
「…ナンデモナイ。」
「そう。魔法の練習だけど今日は放出量の増減と放出までのタイムラグを消す練習をすること。」
「分かった。」
ちゃんと指示も出してくれているし今までの完璧人間のイメージは保持で正解だよね!?
※※※
「シルリア。パンが無くなってるぞ。」
翌朝初の会話。
「買って来れば?」
魔導書を向いたまま言うシルリア。
「場所が分からん。」
やっと組合の場所を覚えた少年が言う。
「なら荷物持ち。」
平然と居候を道具のように扱う姫。
「何時行くんだ?」
抗がう術の無い子羊はただ従うのみ。
「朝食を食べたらすぐにしましょう。」
こうしてパンの無い朝が始まる。
※※※
「ところで魔導書の中身ってどんなのなんだ?」
ここはキセムのとある通り。隣でひたすらに『空魔の解書』を読み耽っているシルリアに声をかける。
「無詠唱魔法が10、詠唱魔法が30、蛮性魔術が10、それぞれの威力、規模、聖句、消費魔力ってところ。。」
悠斗は以前受けた講義を思い出しながらその言葉を聞く。
『無詠唱魔法は詠唱の必要の無い魔法。詠唱を使えば消費魔力を抑える事も可能だけど、時間の都合上詠唱する事は滅多に無いわ。
対する詠唱魔法もその名の通り詠唱が必要な魔法。詠唱を短くする詠唱略化や、詠唱をしなくても発動させれる詠唱切除という技術もあるけどユウトの最大魔力量から見るにどちらも使えないと思うわ。』
そう、確かそんな感じだった筈だ。
それで蛮性魔術は…
―脳内検索開始
キーワード“蛮性魔術”
…
…
検索結果、該当情報なし―
「蛮性魔術って何だ?」
「通常の詠唱魔法と違い詠唱言語が公用語の派生系である魔術。消費魔力量が多いから完成できず暴走してしまったり、果ては術者が植物状態になってしまったりしたこともあるわ。また、その高すぎる威力もあってほとんどが禁止されてる。これに載っていたものは全て禁止対象だったわ。」
「じゃあその10個分は無駄になったのか。」
「何言ってるの?たかが蛮性魔術の10個程度一日に全部使うくらいできるわ。」
ははは。さすがシルリア嬢、禁止された魔法を“たかが”と言いますか。




