13、短剣
しばらくベッドの中で丸くなっていたティルは外にでる。
そこには予想外の光景が広がっていた。
―阿鼻叫喚の地獄画図―
「頭いてぇ〜」
「気持わるい〜」
「ぅえ…」
「こんなとこで吐くな!っつ…」
「大声はやめろ…頭に響く…」
「Zzz…」
「あなた、仕事は?」
「済まん無理だ」
「ガンガンする…」
「誰か、水を…」
「俺もだ。」
「おおい起きろ〜」
「動けない、寝かしといてくれ。」
「………」
なんというか…
過去のゴブリンはほとんどティルの魔法で防いでいたのだが…
今までのゴブリン被害を越える被害が出ているような…
「あ、運ぶの手伝うよ。」
「ゴメン、ティルちゃんは村の警備に行ってくれない?男どものほとんどが倒れちゃったからね。」
「それもそうか…分かった、ボクはそっちに行くよ。」
元々ティルはこの村の住人ではないのだが、何回もゴブリンを追い払っている内に随分と信頼されるようになっていた。
ゴブリンが襲ってくることはしばらく無いだろうと思うと気分が良くなる。
「ん〜んん〜」
つい、鼻唄で故郷の歌を刻む。
「見張り、手伝うよ。」
「ありがとね。」
もはやここの自衛団とも親身になったものだ。
「あれ?ティルちゃん剣持つようにしたの?」
「え?」
自分の腰を見るとあのとき借りた短剣が。
「あ、これユウトのだよ。どうしよう、ねえキセムからの援軍はどこにいるか知ってる?」
「今朝、ここを出発したはずだぞ。」
「あーあ、ホントどうしよう。」
人の大剣の心配をする悠斗が、自分の忘れ物に気付いたのは帰宅後のことになる。
「ティル、あそこに見えるのってもしかして騎士様かな。」
「え!?それどこ!?」
「あっちだけど、どうして来たんだ?ゴブリンのことで来るなんて連絡は来てないし。」
考える自警団員とは対照的にティルは慌てて
「ゴメン、ボクはちょっと行ってくるから!」
と言い、ダッシュでどこかへ行ってしまった。
※※※
「どういったご用件なのでしょうか。」
一人残された自警団員は村の入り口で騎士に応対している。
村の中でもてなすのをしないのは、ただ村の中があまりにも悲惨だからである。
「我々はティル様のお迎えに参った者です。情報によるとティル様はこちらにおられるとか。」
「ティルでしたら先程どこかへ行ってしまいましたけど。」
自警団員は首を傾げ答える。
―ティル"様"?
「それは本当ですか?」
「はい、さっきそう言って出発してしまいましたが。」
「分かりました。ではこれにて失礼します。」
騎士たちは来たとき同様、ふらりと行ってしまった。
「ふぅ、ビックリした。」
「あれ?ティル、どこかへ行ったんじゃ?」
「まぁ、細かい事は気にしない。」
「そう言えばさっき騎士様がティルのことを様付けで呼んでいたけど…」
「それも細かい事ということで。」
―この村もそろそろ限界か。
自警団員は笑顔の裏の意思に気付かない。




